偏愛的プレミアリーグ見聞録

誰もがパオロ・マルディーニやハビエル・サネッティ、ジェイミー・キャラガー、ライアン・ギグスのように、長年活躍したクラブで有終の美を飾るという幸せなキャリアの終え方をできるわけではありません。「クラブに貢献した選手を追い出すように切るのは納得がいかない」という熱いサポーターもいらっしゃるでしょうが、クラブもプロですので、ピッチで起用する当てのない選手に年俸を払うわけにもいきません。

今季もまた、長きに渡ってプレミアリーグのトップクラブでチームに貢献しながら、新しい契約を結ぶに至らず、新天地を求めたベテランがいます。ここ数年では、いちばん大物が多かったのではないでしょうか。今回は、プレミアリーグ優勝をはじめ、数々のタイトル獲得に多大な貢献をした歴戦の勇者たちの新天地と、活躍の可能性について紹介したいと思います。

マンチェスター・ユナイテッドは、サー・アレックス・ファーガソン監督の最後の黄金時代を支えたふたりのCBを送り出すことになりました。35歳のリオ・ファーディナンドと32歳のネマニャ・ヴィディッチ。鉄壁だったCBコンビが、一緒に手にしたプレミアリーグ優勝は5回。ヴィディッチは15個、リオは16個のタイトル獲得をなしえています。もうひと花咲かせたいヴィディッチが選んだ新しいクラブはインテル。全盛期よりはスピードは落ちているものの、ゴール前での献身的なマークとセットプレイからの得点力は健在です。サネッティが去り、キヴやサムエルなどベテランが踏ん張れなくなったインテルなら、最終ラインのコンダクターとして、彼の経験が活かせるのではないかと思います。

そして、リオが選んだクラブは、今季プレミアリーグに昇格したQPRのようです。ケガを抱えながら無理してプレイした数年のしわ寄せでスピードの衰えがひどく、プレミアリーグの中位クラブではレギュラーは難しいとみていましたが、昇格チームとなれば話は別。ザモラなど、前線にはそれなりのタレントがいながら、中盤と最終ラインの中央に安定を欠くこのチームなら、リオの経験とヨミ、そして統率力はまだまだ充分機能するのではないかと思います。

今季限りでチェルシーを去るのは、アシュリー・コールとフランク・ランパード。アスピリクエタにポジションを追われた33歳のアシュリー・コールはともかく、ランパードはもう1～2年はいけると思っていたので、退団は意外でした。チェルシーにとってランパードに支払うギャランティが見合わなくなったのと、モウリーニョ監督が36歳のランパードはフルシーズン働けないと判断したのが主な理由でしょう。アシュリー・コールにとって、つい先ごろ移籍が決まったASローマが終の棲家となるはずです。ランパードの行き先は、アメリカやオーストラリアという噂が伝わってきていますが、決めるにはもう少し時間が必要なようです。これからはデル・ピエロのように、第一戦のサッカー選手としての活躍より、新しい土地での人生のチャレンジを優先してサッカー人生の晩年を楽しむに違いありません。

最後にもうひとり、マンチェスター・シティでプレミアリーグ優勝を経験した31歳のジョレオン・レスコットは、WBAで常時出場を狙います。2009年の入団当時は、ハードマークとDFながらの得点力を期待された選手でしたが、ここ数年はナスタシッチ、ハビ・ガルシア、さらには年上のデミチェリスに追い越され、衰えも顕著になっていました。心機一転、最後のチャンスとなるであろうプレミアリーグの中位クラブで、彼の復活を見ることはできるのでしょうか。レスコットとアシュリー・コールは、シーズン中盤以降はベンチを温めたまま、スパイクを脱ぐことになりそうですが…。私は、サンダーランドの元マンチェスター・ユナイテッドコンビ、34歳のウェズ・ブラウンと33歳のジョン・オシェイを秘かに応援していたりするのですが、自分が歳を取ったからか、ベテランの活躍がことのほかうれしい今日この頃です。いちばん好きなベテラン選手ですか？誰を選ぼうか迷いますが、今週末までは決まってます。プレミアリーグの選手ではありませんが、ファイナルの舞台でゴールしてほしいワールドカップ最多得点記録保持者、ミロスラフ・クローゼ。（リオ・ファーディナンド　写真著作者/Илья Хохлов）