偏愛的プレミアリーグ見聞録

今季プレミアリーグで急成長したイングランド人若手ストライカーといえば、21歳のハリー・ケイン、サイド・ベラヒーノと、2つ年上のダニー・イングス。34試合で21ゴールのハリー・ケインや38試合フル出場で14ゴールを挙げたベラヒーノより、35試合で11ゴールのダニー・イングスのほうが移籍市場で話題になるのは、所属するバーンリーがプレミアリーグ降格となり、さらに彼自身の契約が来月で切れるからでしょう。これまでは、ダニー・イングス獲得にいちばん近いのはリヴァプールといわれておりましたが、掟破りの作戦で横取りをもくろむクラブが現われたと報じられています。

プレミアリーグ同様、最後の最後でリヴァプールを捲ろうとしているのはトッテナム・ホットスパー。「スカイスポーツ」「デイリー・スター」と複数紙が報じているので、事実と断定するのは早計だとしても、それなりに煙は立っているのでしょう。トッテナムは、7月になれば移籍金ゼロとなり所属クラブへの補償金のみで獲得できるダニー・イングスに1200万ポンド（約22億8000万円）を提示し、バーンリーがこれに合意したと伝えられています。リヴァプールが7月になるのを待っていたとすれば、はらわたが煮えくり返る思いでしょう。グレン・ジョンソンやジェラードの抜けた穴に新戦力を入れることも検討しているであろうレッズにとって、安く獲得できるのがダニー・イングスの魅力のひとつだったはずです。若いイングランド人選手であることを考えれば、一見、22億はリーズナブルに見えますが、契約満了直前の選手にかける額ではありません。

報道では、トッテナムとバーンリーがクラブ間合意には至ったものの、個人条件についてはこれからという話です。イギリスメディア「itv」は、ダニー・イングス自身が移籍先を決めていないと語ったと報じています。「大会（＝U-21欧州選手権）が終わったらオフのことを考えたい。短い休息期間を楽しみにしてるけど、その後は忙しくなりそうだね。今年の夏はあっという間だろう。僕はサッカーがとても好きだから、できれば毎日プレイしたい。オフが終わったら代理人と将来について話そうと思う。今のところは何も決めていないし、何が起こるか自分でもわからない」。ここまでの情報では、トッテナムが圧倒的に優勢に見えますが、リヴァプールの再逆転はあるのでしょうか。キーポイントとなりそうなのは、報酬もさることながら「毎日プレイできるかどうか」、すなわちレギュラーポジションを奪える可能性です。

昨シーズン、バーンリーがチャンピオンシップにいた頃は、サム・ヴォークスとのコンビで40試合21ゴールの荒稼ぎをしていたダニー・イングスですが、サイドもこなし、セカンドストライカーとしても機能する器用な選手です。トッテナムとリヴァプールには、ハリー・ケインとダニエル・スタリッジというプレミアリーグの得点王を狙えるエースストライカーがおり、いずれにしても最前線で活躍できる機会は限定されるでしょう。リヴァプールには、バロテッリの代理人が残留を明言したという話もあり、大物ストライカーを物色中というニュースが連日イギリス紙を賑わせている状況。ソルダードやアデバヨルがクラブを離れる可能性が高く、後ろの選手を獲得する必要があるためトップに大金をかける余裕はなさそうなトッテナムのほうが、よりチャンスはありそうです。

スターリングがいなくなれば、サイドでの出場機会は増えると思われるものの、そうなると「ベストなポジションで出られなくても絶対レッズ」という強い動機があるかどうかですね。ヨーロッパリーグでいえば、プレミアリーグ5位のトッテナムは本大会出場決定。うーん、リヴァプール、ピンチです。バーンリーがトッテナムを選んだとすれば、そちらですんなり決まるのではないかと読みますが、いかがでしょうか。

外野から眺めているプレミアリーグファンとしては、ハリー・ケインとダニー・イングスの「U-21の2トップ」が観たいです。一方、今季のストライカーの停滞ぶりを思い出せば、リヴァプールが獲るべきは「チーム戦術にフィットする可能性が高い即戦力ストライカー」ではないでしょうか。ベルギー代表FWディボック・オリギが合流し、噂になっているベンテケかメネズあたりを獲れるなら、ここは笑ってスルーしてもいいと思います。ダニー・イングス、いずこへ？プレミアリーグさながらの綱引きの結果が出るまでに、1ヵ月は待たされそうです。