偏愛的プレミアリーグ見聞録

「プレミアリーグ2016-17シーズン・全20クラブ移籍確定情報（7/19）～【中編】上を窺う中位クラブ」より続きます。後編は、残留をめざす昨季プレミアリーグ下位チームと、昇格組の補強情報です。近年、テレビ放映権料が高騰して、下位クラブも資金を潤沢に持つようになったプレミアリーグですが、昇格クラブにおいては「大量補強でレベルUP」「補強は抑えて組織力で勝負」のどちらが効果的なのでしょうか。前者のリスクは、新戦力には外れがつきものであることと、チームづくりに時間がかかること。後者は、プレミアリーグでは厳しいレベルのスカッドで戦わなければならないことです。

昨季のワトフォードは14人という大量補強を仕掛け、キャスカートとアンヤ以外の守備陣を刷新。ラスト5試合は大崩れしたものの、33試合で37失点の堅守のチームを構築し、新戦力の司令塔カプェがイガロとディーニーを操って悠々と残留を果たしました。同じく10人以上の大量補強を選んだボーンマスは、鳴り物入りのタイロン・ミングスとマックス・グラデルが開幕早々に負傷リタイア。移籍組ではジョシュア・キングがまずまずだっただけで、チームを残留に導いたのは、クック、フランシス、サーマン、マット・リッチーといったチャンピオンシップ時代からの主力でした。

夏に派手な補強はせず、組織力を熟成させて勝とうとしていたノリッジは低迷。冬に慌ててテコ入れをしたものの間に合わず、1年でプレミアリーグから降格となりました。結果は三者三様、セオリーめいたものは導き出せそうにありませんが、ひとついえそうなのは、「チャンピオンシップで3位以下と苦しみながら上がってきたクラブは、しっかり補強したほうがよい」。ノリッジの前年にプレーオフから上がってきたQPRは、効果的な補強ができないまま、翌シーズンのプレミアリーグで最下位に終わっています。

一方、2010-11シーズンに3位だったスウォンジーは、チームのトップスコアラーとなったダニー・グレアム、ルートリッジ、スティーブン・コーカーを補強したうえに、冬に連れてきたシグルズソンが7ゴール4アシストと大活躍して残留。2012-13シーズンのウェストハムもまた、1月にアンディ・キャロルという強烈な飛び道具を引き入れています。2013-14シーズンのクリスタル・パレスは無策スタートで2勝10敗と最悪の状況に追い込まれましたが、11月のピューリス監督招聘、1月のレドリー獲得、後半戦のパンチュンの爆発で何とか助かりました。テコ入れの効果で残留するクラブが多いなか、チャンピオンシップ4位からプレーオフを勝ってきたハル・シティが、この夏の補強が進んでいないのは心配です。

バーンリーにはサム・ヴォークス、アンドレ・グレイという強力なストライカーがいますが、チャンピオンシップではゴールを量産するのにプレミアリーグとなるとからきしなサム・ヴォークスには不安があります。こちらも、前線と中盤にクオリティの高い選手を連れてこないと、2シーズン前と同様に1年でサヨナラとなってしまうのではないでしょうか。片や、ヴィクトル・バルデス、ヴィクトル・フィッシャー、デローンと的確な新戦力獲得を進めているミドルスブラは期待できそうです。ガストン・ラミレスとスボティッチとも交渉中のボロは、点取り屋不在という弱点を解決できれば、残留の可能性は相当高くなるでしょう。

ここからは、やっとの思いでトップリーグに残った3チームに目を移しましょう。タウンゼント、トムキンス、マンダンダと即戦力を獲得し、ベンテケまで狙っているクリスタル・パレスは怖い存在。マックス・グラデルやカラム・ウィルソン、タイロン・ミングスが昨季の長期離脱から戦線復帰し、ジョーダン・アイブが加わるボーンマスも楽しみです。ここまで獲得ゼロ人のサンダーランドは大丈夫でしょうか。サム・アラダイス監督がイングランド代表騒動で動けていないのであれば、次の夏にはこのチームが、ニューカッスルと入れ替わりで落ちている可能性が高まります。現状から降格クラブを予想すれば、バーンリー、ハル・シティ、サンダーランドですが、果たして…。移籍市場締め切りまでの1ヵ月半で、出遅れ気味のクラブがどこまで巻き返すか。上位だけに目を奪われず、こちらもチェックしてまいりたいと思います。

クリスタルパレス
■加入
GK/スティ－ヴ・マンダンダ（←マルセイユ）フリー
DF/ジェームズ・トムキンス（←ウェストハム）1000万ポンド
MF/アンドロス・タウンゼント（←ニューカッスル）1300万ポンド
■退団
GK/デヴィッド・グレゴリー（→ケンブリッジ）フリー
DF/エイドリアン・マリアッパ（未定）
DF/ブレデ・ハンゲラン（未定）
FW/マルアン・シャマフ（未定）
FW/ドワイト・ゲイル（→ニューカッスル）1000万ポンド
FW/エマヌエル・アデバヨル（未定）

ボーンマス
■加入
DF/ベイリー・カーギル（←コベントリー/復帰）
DF/ナタン・アケ（←チェルシー/ローン）
MF/ジョーダン・アイブ（←リヴァプール）1500万ポンド
MF/ルイス・クック（←リーズ）100万ポンド
MF/エマーソン・ヒンドマン（←フラム）75万ポンド
FW/リス・モセ（←ルアーブル）540万ポンド
■退団
DF/シルヴァン・ディスタン（未定）
DF/トミー・エルフィック（→アストン・ヴィラ）360万ポンド
MF/マット・リッチー（→ニューカッスル）1200万ポンド
FW/リー・トムリン（→ブリストル）300万ポンド
FW/グレン・マレー（→ブリントン/ローン）
FW/ジェイデン・ストックリー（→アバディーン）

サンダーランド
■加入
■退団
GK/スティーヴ・ハーパー（未定）
DF/ウェズ・ブラウン（未定）
DF/サンティアゴ・ヴェルジーニ（→ボカ・ジュニアーズ）77万ポンド
MF/リアム・アニュー（未定）
FW/スティ－ヴン・フレッチャー（→シェフィールド・ウエンズデー）フリー
FW/ダニー・グレアム（ブラックバーン）フリー
FW/マーティン・スミス（→キルマーノック）フリー
FW/ミカエル・マンドソン（→イーストリー）フリー

バーンリー
■加入
ジェイミー・トーマス（←ボルトン）フリー
ロビー・リッチ（←マザーウェル）フリー
■退団
GK/マット・ジルクス（→グラスゴー・レンジャース）フリー
DF/マイケル・ダフ（引退）
DF/ルーク・コンラン（→モアカンベ）フリー
MF/ジョーイ・バートン（→グラスゴー・レンジャース）フリー
MF/スティーブン・ヒューイット（→アクリントン）フリー
MF/ロイド・ダイアー（未定）
MF/マテュー・テイラー（未定）

ミドルスブラ
■加入
GK/ヴィクトル・バルデス（←ミドルスブラ）フリー
DF/ベルナルド・エスピノーサ（←スポルティング・ヒホン）
DF/ジョーダン・マギー（←ハーツ/ローン）
MF/マルテン・デローン（←アタランタ）1200万ポンド
FW/ヴィクトル・フィッシャー（←アヤックス）380万ポンド
■退団
GK/コナー・リプレー（オールダム/ローン）
GK/ルーク・コディントン（→ハダースフィールド）フリー
DF/ジョナサン・ウッドゲート（未定）
DF/ジョナサン・バーン（→キルマーノック）フリー
DF/リズ・ウィリアムス（→パース・グロリー）フリー）
DF/ダミア・アベラ（未定）
DF/アンドレ・ベネット（未定）
MF/ジョーダン・ジョーンズ（→キルマーノック）フリー

ハル・シティ
■加入
GK/ウィル・マニョン（←ウィンブルドン）
FW/ジョナサン・エドワーズ（ピーターバラ）フリー
■退団
DF/ライアン・テイラー（未定）
DF/マックス・クラーク（→ケンブリッジ/ローン）
DF/ベン・クラピソン（→ヨーク）フリー
FW/ソン・アルコ（未定）

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