偏愛的プレミアリーグ見聞録

「やりたいプレイをするためには、特定のポジションが足りない。チームのクオリティは着実に上がっているけど、レベルアップさせたい」。プレミアリーグの開幕に向かって、順調にチームを仕上げているアルテタ監督は、補強は終わっていないと明言しています。

マルキーニョス、マット・ターナー、ファビオ・ヴィエイラ、ガブリエウ・ジェズス、ジンチェンコ。前線と左サイドは、完璧な人選といっていいでしょう。この夏のニューフェイスは5人ですが、戦力増強という観点では、ウィリアム・サリバを忘れてはいけません。マルセイユで素晴らしいパフォーマンスを見せたCBの合流によって、3バックやベン・ホワイトのSB起用というオプションがリアルになりました。

現在のアーセナルは、余剰戦力の整理を淡々と進めているようにみえます。ヌーノ・タヴァレスは、マルセイユへのローン移籍決定。フラムで決まりといわれているベルント・レノは、レスターのハイジャックが報じられていますが、ガナーズにとってはどちらに転んでも悪い話ではありません。ルーカス・トレイラ、ベジェリン、ニコラ・ペペまで売却できれば、いよいよ最後のカードを押さえにいくのではないかと思われます。

戦力に不足があるとすれば、トーマス・パーティーの代役かサカの競争相手でしょう。「フットボールロンドン」のアーロン・カターソン＝レイド記者は、「アーセナルがティーレマンスやパケタのような守備的MFにサインすべき3つの理由」と題した記事で、エルネニーはトーマスの代役にふさわしくないと指摘しています。

昨季のエルネニーは、90分あたりのプログレッシブパス（前に送るボール）が2.68しかなく、5.15のトーマスを大きく下回っています。過去2年のプレミアリーグで、大事な時期に負傷離脱となったガーナ代表の穴を埋めたければ、パスセンスに長けたMFが必要というわけです。エルネニーの役割は、絶対的な存在の代役ではなく、堅実に戦いたい時間帯のオプションと捉えたほうがよさそうです。

このテーマなら、ティーレマンスはぴったりはまりますが、ウーデゴーアやトーマスが不在の際のバックアッパーという立ち位置は、いかにも役不足です。ユーティリティーがある選手を好むアルテタ監督とエドゥTDは、「サカ、ウーデゴーア、トーマスのポジションをすべてこなせる」ルーカス・パケタを優先しているのではないでしょうか。

「パケタの代理人には、アーセナルから正式なオファーが届くと伝わっている」という報道があるなかで、ブラジル人ディレクターは「今のところは何の話もない。選手に対する私のリスペクトがあるだけ」といっています。ニコラ・ペペらを売るのが先と決めていたのかもしれませんが、マンチェスター・シティの参戦が噂されており、週が明けたら急激に動く可能性があります。

サカの競争相手については、ウェストハムのジャロッド・ボーウェンを狙っているという話も聞こえてきています。事実だとしても、あくまでもルーカス・パケタが獲れなかった際のセカンドチョイスでしょう。

プレミアリーグのビッグ6の一角崩しをめざすハマーズは、デクラン・ライスへのアプローチを高値の移籍金で潰しており、ボーウェンも同じやり方でプロテクトするはずです。この話は、「アーセナルにとって、右サイドはやはり補強ポイント」と理解するための材料としておけばいいのではないでしょうか。

右からカットインしやすいレフティ、ユーティリティー、ブラジル代表、24歳で伸びしろあり。アルテタとエドゥが好む要素が多いルーカスパケタは、実は一択なのかもしれません。エドゥTDは「彼のポジションは必要ない。うまく機能している」といっていますが、右サイドを担うタレントに関するゴシップが多いなかで、そのまま受け取らないほうがよさそうです。ティーレマンスとレスターをじらしまくって、移籍金を値切って獲得というサプライズを見せつけられたら、恐れ入りましたと頭を下げるしかありませんが…。