偏愛的プレミアリーグ見聞録

2022-23シーズンのプレミアリーグ30発はキャリアハイ。公式戦500試合出場を果たし、300ゴールまであと4つに迫っています。プレミアリーグでは320試合213ゴール46アシスト。歴代最多のアラン・シアラーは260ゴールで、47のギャップは2年あれば埋まるでしょう。

トッテナムのエースとして9シーズンを過ごしたハリー・ケインは、7月に30歳のバースデーを迎えます。華やかな個人記録と裏腹に、チームとして獲得したトロフィーは未だゼロ。プレミアリーグ、カラバオカップ、チャンピオンズリーグはすべて2位が最高で、イングランド代表のキャプテンとして臨んだユーロ2020のファイナルは、PK戦にもつれ込む惜敗でした。

稀代のストライカーは、トロフィーと無縁のままでキャリアを終えるのでしょうか。現地メディアの多くが、彼の選択肢は2つと報じています。スパーズに残るか、獲得を熱望と報じられているあのクラブに移籍するか。スパーズで悲願のタイトル獲得という美しいストーリーが実現すればいいのですが、現状から明るい未来を見出すのは難しいでしょう。

2022-23シーズンは、8位フィニッシュ。アントニオ・コンテが去ってからは3勝2分5敗と苦しみ、ヨーロッパへのルートは閉ざされました。一時は復帰が噂されていたマウリシオ・ポチェッティーノはチェルシーへ。フェイエノールトのアルネ・スロットには断られてしまい、次期監督は未だ決まっていません。

現在の最有力候補は、スコットランドで三冠を獲得しようとしているアンジェ・ポステコグルー。「セルティックは既に後任を探し始めている」という報道もあり、インバネスと戦う週末のスコティッシュカップ決勝を終えたら、すんなり決まる可能性があります。

2019年のJ1リーグで横浜F・マリノスを15年ぶりの頂点に導き、古橋享悟、前田大然、旗手玲央、小林友希を擁して戦った指揮官ゆえ、その攻撃的なスタイルを見たことがあるという人が多いのではないでしょうか。スパーズに来るとなれば、大いに楽しみではありますが、タイトルを獲れるかどうかは別問題です。

スコットランドでトレブルという実績を主張すると、ヴィラで振るわなかったスティーブン・ジェラードを持ち出されて苦しくなります。少なくとも、モウリーニョやコンテの下でタイトルに届かなかったストライカーは楽観的にはなれないでしょう。残留は厳しいとなれば、次の選択肢は移籍ですが、彼の希望を叶えられそうなクラブはひとつしかありません。

プレミアリーグの歴代最多ゴール記録を更新したいなら、バイエルンはアウト。トロフィーをめざすとなると、ビッグ6とニューカッスル以外はスパーズより確率が下がります。ロンドンのライバルを避けるなら、北にある4クラブですが、ダルウィン・ヌニェスを獲得したリヴァプールとハーランドがいるマン・シティは、あちらがノーサンキューでしょう。

残るはマンチェスター・ユナイテッドとニューカッスルのみ。ダニエル・レヴィ会長が求める高額の移籍金を検討できるのは、前者だけです。トッテナムは移籍拒否と伝えられていますが、「1年後、プレミアリーグのライバルにフリーで持っていかれる」という悪夢のような結末のほうを回避しようとするのではないでしょうか。

以上の状況から、「本人が懇願すれば、今度こそ移籍は成立」「クラブ間は、高額の移籍金の一部をオプションとして妥結」と見ております。いかがでしょうか。FAカップ決勝の後、早期に動くと思われるマンチェスター・ユナイテッドの最初のオファーに注目しましょう。