偏愛的プレミアリーグ見聞録

メイソン・マウント以外は、「撤退」「関心」「注視」。マンチェスター・ユナイテッドの補強は、明らかに出遅れています。プレミアリーグの開幕まで2ヵ月あるとはいえ、発展途上のテン・ハフのチームは、早期に戦力を揃えて戦術のブラッシュアップを図るべきでしょう。

スールシャール政権下のマンチェスター・ユナイテッドは、チーム強化という観点では暗黒の時代でした。成功といえるのは、2020年1月に獲得したブルーノ・フェルナンデスと、2021年のヴァランのみ。マグワイアとワン＝ビサカは苦しい時期のほうが長く、カバーニとCR7は実働1年。ファン・デ・ベークとアレックス・テレスは機能せず、サンチョも真価を発揮できていません。

若手の発掘・育成も今ひとつです。ダニエル・ジェームズは既に退団、3年めのペリストリはチームでもローン移籍先でもノーゴール。アマド・ディアロはチャンピオンシップのサンダーランドで13ゴールと、ようやく光が差してきたところです。グリーンウッドは大誤算で、エランガは伸び悩み。テン・ハフの下で頭角を現したガルナチョが、唯一の計算できる戦力です。

強化が進まなかった最大の理由は、2021年3月にジョン・マータフを招聘するまで、ディレクターが不在だったことでしょう。ペップとチキの明快なコンセプト、クロップとマイケル・エドワーズの目利き、アルテタとエドゥの一貫性と情熱、マリナ・グラノフスカイヤの交渉力といった武器を持たなかったクラブは、失敗を繰り返して選手層を薄くしてしまいました。

我慢し続けてきたマンチェスター・ユナイテッドのサポーターにとって、テン・ハフの降臨と直後の補強はひと筋の希望でした。カゼミーロは高くても文句なし。フリーで獲ったエリクセンも納得のパフォーマンスで、アントニーは成長の可能性を信じていいでしょう。最終ラインを仕切ってくれているリサンドロ・マルティネスには、大ヒットの予感が漂っています。

プレミアリーグで3位に食い込み、カラバオカップで久々のトロフィーを得た今、次なるプランに期待が高まります。3連覇を遂げたマンチェスター・シティとの差は14ポイント。われわれの最大の課題は、主力とサブのギャップで、「ブルーノ、カゼミーロ、ヴァラン、リサンドロ、ラシュフォードが揃わないと、強いといえないチーム」から脱却しなければなりません。

強化ポイントは、最前線と中盤センター、CB、GK。オフシーズンに入った当初は、前のめりでメディアをチェックしていたのですが…（泣）。淡い期待を抱いていたキム・ミンジェはバイエルンにさらわれそうで、ハリー・ケインにつながるルートは早々に閉じてしまいました。オシムヘンは契約延長間近。デクラン・ライスはアーセナルで決まりでしょう。

フランクフルトのコロ・ムアニは、2ヵ月前から「注視」のまま。ベンフィカのストライカー、ゴンサロ・ラモスはホルヘ・メンデス案件で、8000万ポンドという高額の移籍金は大きなリスクです。「マンチェスター・イブニングニュース」で、わがクラブのチーフライターを務めるサミュエル・ラックハーストさんは、動きが鈍いリクルートチームをいじり倒しています。

「ハリー・ケインをもう一度獲りにいく可能性がある。スパーズとの間に楔を打ち込むことすらトライしていないのだから」
「アントニー・マルシャルを9番に据えたままトランスファーマーケットを終えれば、2024年にはヨーロッパリーグへの復帰が期待できる」
「エリック・バイリー、アレックス・テレス、マルシアルをサウジアラビアの湾岸に輸送するためにプライベートジェットをチャーターすべき」

地元メディアのマン・ユナイテッドのカテゴリーに並ぶ記事をチェックしてみると、見出しにある名前はメイソン・マウントとニコロ・バレッラだけです。大丈夫か、マンチェスター・ユナイテッド！「ミラー」によると、ハリー・ケインはオールド・トラフォードに来たがっているそうですが…。