偏愛的プレミアリーグ見聞録

プレミアリーグのトランスファーマーケットで、積極的に補強を進めている3トップの頭文字を取ると「ABC」となります。アストン・ヴィラ、ボーンマス、チェルシー。アンドニ・イラオラ監督を招聘し、クラブ史上2度めのTOP10フィニッシュをめざすボーンマスは、リーグNo.1の3人を獲得しています。

リーズからローンで引き入れたルイス・シニステラは、昨季プレミアリーグで15試合2ゴール2アシスト。完全移籍にスイッチしたクラブは、2000万ポンドを支払うことになっています。ヘタフェからレンタルしていたエネス・ウナルの買取価格は、1400万ポンド。前十字靭帯断裂という重傷を負い、ボーンマスに流れてきたトルコ代表は、復活すると見られているのでしょう。

2021-22シーズンのラ・リーガで37試合16ゴール、翌シーズンは35試合14ゴール。トップフォームを取り戻したエネス・ウナルがソランケと並んだらやっかいです。オーストラリアのウェリントン・フェニックスから、200万ポンドで獲得したニュージーランド代表GKアレックス・ポールセンは21歳。こちらは成長を見越した投資です。

PSRを気にする必要ありと報じられているアストン・ヴィラも、久々のチャンピオンズリーグをにらんでアグレッシブに動いています。6月上旬に獲得合意というニュースが流れたルートンのロス・バークリーは、移籍金500万ポンド。7月に入ってから、正式発表があるといわれています。チェルシーから獲得したイアン・マートセンは、3750万ポンドという大きなお買い物です。

マートセンは単独のディールではなく、チェルシーが以前からほしがっているジョン・デュランを4000万ポンドで買うことが条件と伝えられていました。しかしジョン・デュランは未だ個人合意に到達しておらず、ウェストロンドンは先行してイングランドU-20代表のFWオマル・ケリーマンを手に入れると報じられています。

18歳のアタッカーの移籍金は、1900万ポンド。ジョン・デュランに加えて、リールのジョナサン・デイヴィッドまで押さえようとしているという報道に、ため息を漏らしている人も多いのではないでしょうか。カナダ代表のストライカーは契約期間が残り1年で、2500万ポンドでOKといわれていますが、マン・ユナイテッドやスパーズと争ったら高騰する可能性があります。

トッド・ベイリーとクリアレイク・キャピタルがオーナーになって以来、マーケットで10億ポンド超を費やしたクラブは、どこまで投資するのか？どうやって赤字を回避するのか？チェルシーの経済的な構造の話は、別な場に委ねるとして、ここでは最大のサプライズに触れなければなりません。パルメイラスの17歳のウィンガー、エステヴァン・ウィリアンに4810万ポンド！

昨日、クラブから獲得合意とアナウンスされたこの契約は、前金が2870万ポンドで、パフォーマンスによって決まるインセンティブが最大1940万ポンド。アブラモヴィッチの後を継いだオーナーは、10代の選手だけで総額1億5000万ポンド以上を投じています。ルイス・ホールとマートセン売却で得たのは5550万ポンド、ルカクとケパと売れば帳尻は合うという目論見か…？

おお、「アスレティック」のデヴィッド・オーンスタイン記者が、ヴィラとユーヴェのスワップが成立と伝えています。ユーヴェに行くドゥグラス・ルイスは移籍金4250万ポンド。ヴィラに向かうサミュエル・イリング・ジュニオールとエンツォ・バレネチェアは、それぞれ1870万ポンドとなっているそうです。

昨季セリエAで24試合1ゴール2アシストのサミュエル・イリング・ジュニオールは20歳の原石。フロジノーネにレンタルされた23歳のバレネチェアは、アンカーとして公式戦39試合に出場しています。プレミアリーグ35試合9ゴール5アシストのドゥグラス・ルイスを手離す代償として、500万ポンドと若手2人というディールの是非は、数年後にはっきりするでしょう。

以上、ヴィラ、チェルシー、ボーンマスの立ち回りをレポートしました。「交渉は進んでいない」「オファーは拒否された」といった話ばかりを目にするマンチェスター・ユナイテッドサポーターとしては、うらやましい限りですが、マーケットが本格的に動くのはユーロ2024が終わった後とつぶやきながら、眩しいクラブの「DONE DEAL」のニュースを楽しみたいと思います。