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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

高額の争奪戦はすべて撤退、獲得は若手のみ…チェルシーの新たな補強戦略のメリットとリスク。

マンチェスター勢が追撃中と伝えられたマイケル・オリースは、バイエルン移籍でほぼ決まりと報じられています。移籍金は4500万ポンド、アドオンが500万ポンド。「バイアウト条項は発動され、5年契約に合意」と配信したファブリツィオ・ロマーノさんが「Here we go!」と煽ったディールが覆ることはないでしょう。

この件で興味深いのは、6月上旬に個人条件合意と伝えられたチェルシーが、早々に撤退したことです。5000万ポンドを高すぎると判断して降りるとは…。最近は、トレンドワードのように「チェルシー撤退」という見出しが目に付きます。4300万ポンドというお買い得のバイアウト条項があるニコ・ウィリアムズも撤退。オシムヘンも追跡をストップしたようです。

一方、獲得と報じられた選手の顔ぶれもサプライズです。移籍金1900万ポンドといわれるアストン・ヴィラのオマリ・ケリーマンは18歳のMFで、プレミアリーグ出場経験は2試合のみ。パルメイラスから引き入れた17歳のFWエステヴァン・ウィリアンは、移籍金2870万ポンドにアドオンを加えると、最大4810万ポンドです。ティーンエイジャーに、これほどの額を投じるとは…!

2人の原石を手中に収めた後も、青田買いは止まりません。20歳のFWサム・オモロディオンは、アトレティコ・マドリードが拒否されましたが、ボカ・ジュニオルズに所属する19歳のCBアンセルミーノは、移籍金1410万ポンドとアドオン310万ポンドを提示して交渉中です。これまでに獲得した即戦力は、フラムからフリーで獲ったトシン・アダラビオヨのみです。

共同SDのローレンス・スチュワートとポール・ウィンスタンレーのこだわりは年齢だけでなく、移籍金の総額にもラインがあるように見えます。リールのFWジョナサン・デイヴィッドは既に24歳ですが、2500万ポンド程度でいけるといわれており、シュツットガルトのギラシは28歳で、バイアウト条項は1500万ポンドのバーゲン価格。この2人については、撤退の報道はありません。

トッド・ベイリーとクリアレイク・キャピタル・グループがチェルシーを買収したのは2022年5月。最初のトランスファーマーケットでは、ビッグネームと高額の若手を買い漁る豪快な補強を敢行しました。オーバメヤン、スターリング、フォファナ、ククレジャ、チュクエメカなど12人に、総額2億7500万ポンド。大丈夫かと思いきや、冬の補強で既に方向転換を始めています。

バディアシル、ムドリク、マロ・グスト、エンソ・フェルナンデス、ダトロ・フォファナ、アンドレイ・サントス、ノニ・マドゥエケは全員U-23。当時は、若手シフトを成功させたエドゥとミケル・アルテタを模倣しているのかと思いました。2023年の夏には、失敗を認めたかのようにオーバメヤンとクリバリを売却。併せて高額サラリーの主力を大量に放出しました。

カイ・ハヴェルツ、メイソン・マウント、コヴァチッチ、エドゥアール・メンディ、カンテ、ロフタス=チーク、アスピリクエタ、プリシッチ。獲得したのはカイセド、コール・パルマー、ニコラス・ジャクソン、ウゴチュク、ラヴィアら若手が大半で、25歳以上のロベルト・サンチェス、ディサシ、エンクンクは高いお買い物ではありませんでした。

ビッグネームコレクションをすぐに反省し、若手シフトを繰り返した結果、2022-23シーズンの会計で4億400万ポンドに膨れ上がっていた選手のサラリーは、がっつり減っています。さらにルカクとケパを売りさばき、ハッチンソンやマラング・サールなど獲得費用がかかっていない余剰戦力を手離せば、彼らのサスティナビリティ経営はより完成度が高くなります。

先週末、「ESPN」が獲得間近と報じたのは、バルセロナの逸材マルク・ギウ。昨季のラ・リーガで3試合1ゴールの18歳は、510万ポンドで獲得できるといわれています。順調に育って主力になれば大成功。成長が微妙ならローン移籍で資金を回収して、最終的に売れば黒字確定。うまくいかなくても、経済的なダメージは最小限です。

経営の観点では合理的に見える方針に落とし穴があるとすれば、目利きが悪ければチームが弱体化すること、リーダー不在のチームになる可能性、ブランド毀損のリスクでしょう。「安く仕入れて高く売る」という戦略を敷く中小クラブと同様のサイクルになるかもしれず、「強くて華やかなチェルシー」というブランドに憧れて門を叩く選手が減ってしまうリスクがあります。

とはいえ、今はまだ6月。2023-24シーズンの会計が締まり、ユーロ2024やコパ・アメリカに出場しているスターたちが解放されれば、恒例の貪欲な補強を始めるのかもしれません。原石が続々と生まれる南米から、見どころある若手を掘り出し続けて終わるのか、あるいは…?今いえるのは、「この夏の主役も結局チェルシー」となる可能性を捨てるのは時期尚早ということです。


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