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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

4クラブの争奪戦なのに…リールのジョナサン・デイヴィッドが実績のわりに話題にならない理由。

マンチェスター・ユナイテッドはザークツィー、チェルシーはイサク。シェシュコを獲れなかったアーセナルはギョケレス、オシムヘン。現地のメディアが、ストライカーの獲得をめざすクラブの動向を追いかけています。そんななかで、記事をチェックしていると、時折見かけるのがジョナサン・デイヴィッドという名前です。

リールに所属する24歳のカナダ代表FWは、チェルシー、マンチェスター・ユナイテッド、トッテナム、ウェストハムが興味を示していると伝えられています。プロデビューから6シーズンの戦績を見ると、とても魅力的なストライカーなのですが、彼に関する話が盛り上がらないのはなぜでしょうか。複数のメディアが伝えている移籍金2000万ポンドが事実なら、超お買い得案件です。

ジョナサン・デイヴィッドが地味な扱いになる理由を、いくつか挙げてみましょう。ひとつは、ユース時代は全く無名の存在だったこと。アメリカのブルックリン生まれで、両親の故郷であるハイチで育ち、6歳からの12年はカナダのオタワのクラブを転々としていました。MSLのアカデミーを断ったのは、欧州でプレイしたいという野望があったからだそうです。

ベルギーのヘントに入団したのは、18歳になったばかりだった2018年1月。プロデビューは2018年8月のズルテ・ワレヘム戦で、追加タイムがラスト6秒となってからの同点ゴールという最高の自己紹介でした。初年度はジュピラー・プロリーグで33試合12ゴール、2年めは27試合18ゴール。下積みなしで、10代で2年連続2ケタゴールは、早熟の天才といわれてもいいでしょう。

実際には、この頃からビッグクラブの目に留まっていたようです。しかし、彼がネクストステップとして選んだクラブは、2019-20シーズンのリーグアンで4位のリールでした。入団初年度は、忘れられないシーズンでしょう。開幕から11試合はノーゴール、年明けからの18試合で11ゴール。4月のパリ戦で決勝ゴールをゲットし、クラブを10年ぶり4回めのリーグ制覇に導きました。

2021-22シーズンはリーグアンで38試合15ゴール、チャンピオンズリーグで8戦3発。2022-23シーズンは37戦24ゴールと数字を伸ばし、昨季も34試合19ゴールと結果を出しています。プロデビューから6年連続でシーズン10発以上を叩き出し、266試合121ゴールという実績がありながら、移籍金2000万ポンドなら激安を通り越してホラーです。

地味な理由の2つめは、カナダ代表だからでしょう。プロデビューから1ヵ月で代表チームで初先発を果たし、いきなり2ゴール。しかしこの世界では、アメリカ領バージン諸島を相手にゴールを決めても、さほど話題になりません。25歳にしてカナダ代表で51試合27ゴールは、サイル・ラインに次ぐ歴代2位。イングランドなら「もうすぐTOP10のレジェンド」なのですが…。

3つめの理由は、「クラブレベルでの個人タイトルが2019-20シーズンのジュピラー・プロリーグ得点王のみ」。ムボカニと同点1位では、どうしても注目度が下がってしまいます。移籍の直前にエールディヴィジ得点王だったスアレス、ボニー、デパイや、リーグアン得点王のジルー、ラカゼット、カバーニは、トランスファーマーケットで目を引く存在でした。

4つめは、ハーランドやギョケレス、ギラシのような派手なゴールマシンではなく、ヴァーディーのスピード、サラーのドリブル、ズラタンのバイシクルのようなわかりやすい看板もないことです。彼の特徴は、素晴らしいプレイのほとんどがボックス内で、両足を同じように蹴れること。6シーズンのうち5シーズンは、ゴール数がxGを上回っています

最後にもうひとつ、話題性が乏しい理由を挙げると、あまりにもふわっとしたコメントです。「プレミアリーグのチームはみんな好き。アーセナル、チェルシー、マンチェスター・シティ、サウサンプトン、クリスタル・パレス。エヴァートンも好き。いいチームが好きなんだ」。唯一の尖った発言が、移籍を拒否したときの「僕はリヴァプールのファンではない」では…!

「子どもの頃から、チェルシーに行きたかったんだ!」といった気の利いたセリフがあれば、認知度は高まるはずです。いや、ホントにみんな好きならしょうがないですけど。なるほど、何となく聞き流してしまいそうになりましたが、好きなチームのなかに、マンチェスター・ユナイテッド、トッテナム、ウェストハムは入っていないんですね。ちょっとショックです。

以上、ジョナサン・デイヴィッドが実績のわりに話題にならない理由を考えてみました。「ペップが獲得を熱望」「アルテタの最優先ターゲット」といった話があれば盛り上がるのですが、狙っているクラブの監督が職人系なのも理由に加えたほうがいいのかもしれません。みなさん、「挫折知らずの点取り屋」がプレミアリーグに来る可能性が高まっています。ぜひご注目を!(ジョナサン・デイヴィッド 写真著作者/Supporterhéninois)


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