偏愛的プレミアリーグ見聞録

プレミアリーグのトランスファーマーケットは、「動」と「静」のコントラストが明確になっています。トップランナーは、チェルシーとアストン・ヴィラ。トシン・アダラビオヨとデューズバリー＝ホールを獲得したチェルシーは、次世代の主力候補3人を押さえ、現在はドルトムントのFWカリム・アデイェミを狙っているといわれています。

ドゥグラス・ルイスをユーヴェに売ったアストン・ヴィラは、見返りとして23歳のMFエンソ・バレネチェアと20歳のFWサミュエル・イリング・ジュニオール をゲット。ルートンから引き入れたロス・バークリーと、チェルシーに3750万ポンドを支払ったイアン・マートセンは即戦力で、U-22のルイス・ドビンとキャメロン・アーチャーは将来への布石でしょう。

ヤンクバ・ミンテ、イブラヒム・オスマン、マッツ・ヴィーファーを押さえたブライトン、ルイス・ギリェルメとマックス・キルマンに6500万ポンドを投じたウェストハムも、アグレッシブな補強を続けるはずです。テイラー・ハーウッド＝ベリスやララナなど、5人の入団を決めたサウサンプトンは、AZアルクマールの菅原由勢を600万ポンドで獲ると報じられています。

ビッグ6を見ると、マン・シティは完全に沈黙。リヴァプールは、新監督のアルネ・スロットが「わずかな改善だけで充分」と明言しています。ティモ・ヴェルナーのローン期間を延長したトッテナムは、ルーカス・ベルヴァル、アーチー・グレイとティーンエイジャー3人のみ。積極的に動いているのは、チェルシー、マンチェスター・ユナイテッド、アーセナルのみです。

現在、獲得間近といわれている選手は、すんなり決まるでしょう。アーセナルはボローニャのカラフィオーリ、マンチェスター・ユナイテッドはザークツィーとデ・リフト。いずれも本人とは合意に至っており、移籍金の額と支払方法が決まれば「Done Deal」です。マン・ユナイテッドといえば、レニー・ヨロがリールと合意といわれていますが、こちらは破談となりそうです。

18歳のCBは、レアル・マドリードへの移籍を熱望しており、マンチェスターに行く気はなさそうです。今回の合意は、マドリードからより多くのお金を引き出したいリールと、ブランスウェイトの獲得費用を押さえたいマン・ユナイテッドが、「早く動いてくれないと、こっちで決めちゃうけど」とアピールするための偽造結婚でしょう。

次なる注目株は、アーセナルとマン・ユナイテッドが興味ありといわれているアヤックスのブライアン・ブロビー、プレミアリーグ参入希望のヴィクター・オシムヘン、ユーロ2024で活躍中のミケル・メリノ、パリのウガルテといったところでしょうか。ニコ・ウィリアムズはバルサ移籍濃厚で、アマドゥ・オナナやギョケレスは話題にならなくなっています。

「フットボールロンドン」が煽っている「アーセナルがダニ・オルモ」は、ユーロの決勝の翌日に消える5000万ポンドのバイアウト条項に間に合わず、ウーデゴーアとポジションがかぶる選手に高額の投資はしないでしょう。「スカイスポーツ」は、「チェルシーもダニ・オルモには興味なし」といい切っています。

一方、マンチェスター・ユナイテッドのターゲットといわれる マヌエル・ウガルテと、アーセナルの候補と報じられたミケル・メリノは獲得に至る可能性は充分です。タックルとボール奪取力を強みとするウガルテは、テン・ハフのチームに欠けているパーツで、メイヌーのよさを活かせるのではないでしょうか。本人は移籍に前向きで、CL出場権にはこだわらないようです。

ミケル・メリノは、パスワークに長けたボックス・トゥ・ボックスのMFで、デクラン・ライスと6番と8番を共有できる存在です。バイアウト条項の5100万ポンドは高額ですが、契約は残り1年となっており、バスクつながりのアルテタ監督が本人を口説き落とせば、レアル・ソシエダとの交渉の余地が生まれそうです。

このほか、早期に動きがあるとすれば、マイケル・アントニオの後継者がほしいウェストハムが狙っているヴィラのジョン・デュラン、リヴァプール入団の噂があるアドリアン・ラビオ、エヴァートンからの契約延長オファーを断ったカルバート＝ルーウィンといったところでしょうか。ユーロ2024のファイナルが終われば、トランスファーマーケットはヒートアップするはずです。