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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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戻ったチームに居場所はなかった…スミス・ロウのアーセナルでの苦闘と、フラムがほしがる理由。

エミール・スミス・ロウがアーセナルに別れを告げようとしています。フラムのオファーは、クラブレコードの3500万ポンド。エドゥSDとアルテタ監督にとっては、チームの戦術にはまらなくなった10番を手離す絶好のチャンスです。18歳だった2018-19シーズンにプロデビューを果たした生え抜きが居場所を失ってしまった最大の理由は、鼠径部や膝の負傷ではないでしょう。

2021-22シーズンのプレミアリーグで、33試合10ゴール2アシスト。スミス・ロウが輝いた唯一のシーズンのアーセナルは、4-2-3-1で戦っていました。最後のゴールは2022年4月21日、スタンフォード・ブリッジで開催されたチェルシーとのロンドンダービー。2-4で快勝した一戦で、27分に決めた美しい勝ち越しゴールは、ジャカが起点となったカウンターでした。

縦パスを受けたウーデゴーアが右のサカに展開すると、ドリブルで仕掛けた7番は無理せず、中央のウーデゴーアへ。その左から上がったスミス・ロウにラストパスが通ると、右隅に転がしたダイレクトのコントロールショットにエドゥアール・メンディは手を出せませんでした。2列めの3人が持ち味を活かした1発を、今でも覚えているというグーナーは少なくないでしょう。

2022-23シーズンに負傷で出遅れてしまったスミス・ロウは、9月に鼠径部の手術に踏み切り、年明けまでリタイア。復帰してからもコンディションが戻らず、プレミアリーグの先発ゼロでシーズンを終えています。彼がいない間に、アーセナルは彼を必要としないチームに変わってしまいました。4-2-3-1から4-3-3へ。左のフルバックを任されたのは、偽SBのジンチェンコです。

最後のゴールを決めたチェルシー戦の左SBは、オーバーラップを得意とするヌーノ・タヴァレス。彼とキーラン・ティアニーも、新たな戦術に適応し切れず、チームを追われています。4-2-3-1なら、トップ下でプレイするチャンスも、縦にスプリントするSBと連携するシーンもあったのですが、新たな布陣で求められたのは、カットインからゴールに迫るウインガータイプでした。

左サイドでは、マルティネッリとトロサールに次ぐ3番手。インサイドMFで絶対的な存在だったグラニト・ジャカが退団となると、守備力に長けたカイ・ハヴェルツとデクラン・ライスが重用されています。強みを発揮しづらくなったスミス・ロウは、昨季も膝を負傷し、主な役割は終盤のゲームチェンジャー。2シーズン連続ノーゴールという不本意な数字を残してしまいました。

プレミアリーグで先発した2試合では、いずれもアシストを記録しているのですが…。TOP4を争うチームから、ペップのライバルへと駆け上がるプロセスのなかで、激変した左サイドで機能しなくなったスミス・ロウは、戦術の犠牲者ともいえるでしょう。いや、度重なる負傷がなければ、カイ・ハヴェルツの入団もなかったのかもしれませんが、今となっては「たられば」です。

この夏、フラムがスミス・ロウの獲得を熱望したのは、ウィリアンが去ったからです。マルコ・シウヴァのチームは、2年前のアルテタのような4-2-3-1。最前線のムニョスの後ろでプレイするチャンスもあり、左サイドからアンドレアス・ペレイラと絡んだり、縦にオーバーラップするアンソニー・ロビンソンを動かしたりする役割を求められるはずです。

ウーデゴーアやティアニーと連携したあのシーズンを再現できそうなチームなら、自らの強みを思い出せるのではないでしょうか。本人もそれがわかっているから、移籍に乗り気と伝えられているのでしょう。アーセナルはミケル・メリノの獲得資金を得て、フラムは2列めを強化でき、選手は復活…誰もが幸せになりそうなディールは、もうすぐ決まるといわれています。


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