偏愛的プレミアリーグ見聞録

「イブニングスタンダード」のドム・スミス記者によると、チェルシーとトッテナムのオファーは木曜日。ウルヴスは、両方とも拒否したそうです。諦めなかったチェルシーは、その日の夜に再度失敗するも、金曜日の3度めで受け入れられました。移籍金は5140万ポンド、アドオンが260万ポンド。総勢10人をゲットしたクラブにとって、ペドロ・ネトはこの夏最大の投資となります。

現地メディアは金曜日の午後までキャッチできておらず、「shock」「sensational」といった言葉が見出しに踊っています。マイケル・オリースやニコ・ウィリアムズを狙っていたことを思い出せば、ポルトガル代表のドリブラーは納得の補強ですが、多くの記者の目はアトレティコ・マドリードとのディールに向いていました。

コナー・ギャラガーが3600万ポンドでスペインに向かい、3450万ポンドでクラブ間合意に至ったサム・オモロディオンは、パリオリンピックが終わってから合流と伝えられています。木曜日には、ボカ・ジュニアーズのDFアーロン・アンセルミーノの入団が発表されており、このタイミングでもうひとり決まるとは、誰も予想できなかったでしょう。

アスレティック・ビルバオがニコ・ウィリアムズと結んでいた5000万ポンドのバイアウト条項を、高すぎると敬遠したチェルシーが、5000万を超えるウインガーを獲りにいくとは思いませんでした。ウルヴスと合意と書かれた記事を読んだときは、大いに疑問だったのですが、「アスレティック」でチェルシーの特派員を務めるリアム・トゥーミー記者のレポートで納得しました。

ニコ・ウィリアムズのバイアウトは、ラ・リーガの規則により「前払い・一括払い」となっていたのに対して、ウルヴスは支払い体系を考慮してくれたようです。ペドロ・ネトはメディカルチェックを受けるためにロンドンに来ていると報じられており、オモロディオンより先に「DONE DEAL」となる見通しです。

デューズバリー＝ホール、マルク・ギウ、ケリーマン、アダラビオヨ、レナト・ヴェイガ、ワイリー、エステヴァン・ウィリアン、ヨルゲンセン、アンセルミーノ、オモロディオン、ペドロ・ネトで、総額1億5000万ポンド以上。アストン・ヴィラを抜いて、投資額ランキングのTOPに立ったチェルシーは、収支を見るとさほどマイナスは大きくありません。

イアン・マートセン、ルイス・ホール、ハッチンソン、コナー・ギャラガーらの売却で、1億2000万ポンド以上を手に入れており、ロメウ・ルカク、アルマンド・ブロヤ、トレヴォ・チャロバー、ダヴィド・ダトロ・フォファナを放出すればプラスに転じます。プレミアリーグでは2年連続でTOP4を逃していますが、余剰戦力の整理のうまさはマン・シティに次ぐ2位でしょう。

さて、ここからはピッチに目を移します。エンツォ・マレスカ監督は、ダブつき気味の前線をうまくマネジメントできるでしょうか。ストライカーはニコラス・ジャクソン、マルク・ギウ、オモロディオン。ペドロ・ネトが加わる右サイドはノニ・マドゥエケのモチベートが重要で、スターリングとエンクンクが元気な左サイドはムドリクが出番を減らしそうです。

トップ下は、コール・パルマーとチュクエメカ。エンクンクやマルク・ギウを、セカンドストライカーとして機能させるオプションもあります。アカデミー出身の若手や、夏に獲得したティーンエイジャーにチャンスはなさそうで、多くはローン移籍で武者修行となるのでしょう。初めてのトップリーグとなる指揮官は、ベストの布陣を探り当てるまで時間がかかるかもしれません。

ペドロ・ネトにフォーカスすると、最大の懸念は負傷の多さです。過去4シーズンは、出場が91試合で欠場が102試合。2021-22シーズンからのプレミアリーグは13試合、18試合、20試合と半分も出場しておらず、3ゴール11アシストはもの足りない数字です。ハムストリングの負傷は慢性化していないと確認するまでは、20戦で9アシストの昨季を過大に評価しないほうがいいでしょう。

天才的なドリブラーであり、右サイドを活性化してくれるのは間違いありませんが、1シーズンで6ゴール以上を決めたことがないのも気になります。ニコラス・ジャクソンの後ろにエンクンクという布陣がはまり、右サイドでコール・パルマーとキャラかぶりとなれば、ムドリクとともに「総額1億4000万ポンドのバックアッパーコンビ」と化してしまう可能性があります。

カイセド、エンソ・フェルナンデス、ラヴィア、デューズバリー＝ホールを中盤でうまく活用しなければならない指揮官は、ハイラインの安定化という難易度が高いタスクも抱えています。ペドロ・ネトはリヴァプールのエースのように輝くのか、チェルシー時代のモー・サラーで終わるのか。まずは、マン・シティ、ウルヴス、クリスタル・パレスと続く序盤戦に注目しましょう。（ペドロ・ネト　写真著作者/Tonispin）