偏愛的プレミアリーグ見聞録

ケパ・アリサバラガはボーンマス、ジョルジェ・ペトロヴィッチはストラスブール。フィリップ・ヨルゲンセンの加入で居場所を失っていた2人のGKは、いずれもローン移籍が決まりました。8月30日は、プレミアリーグのトランスファーマーケットのデッドラインデー。せわしなく動いているチェルシーは、いくつかの大きな決断を求められそうです。

余剰戦力の売却は粛々と進んでいます。つい先ほど、ロメウ・ルカクのナポリ移籍が正式に発表されました。3年契約で、移籍金は2520万ポンドとアドオン。アントニオ・コンテと相思相愛のストライカーは、モチベーションを高めているようです。22歳のMFティノ・アンジョリンのエンポリ行きも、完全移籍。ここまでは決まったのですが、順調とはいえないでしょう。

ラヒム・スターリング、ベン・チルウェル、トレヴォ・チャロバーの将来は未だ見えません。スターリングは、マンチェスター・ユナイテッドのジェイドン・サンチョとのスワップが噂されていますが、2つのディールは別々に動いています。「スカイスポーツ」によると、サンチョはユヴェントスとの争奪戦となっており、チェルシーが優位に立っています。

完全移籍か買取義務付きのローンを要求しているマン・ユナイテッドに対して、ユーヴェは買取オプション付きのローンでオファー。チェルシーは完全移籍での獲得を目論んでいるのですが、ここにスターリングを絡めると話はややこしくなります。マン・ユナイテッドはスターリングに興味ありといわれていますが、移籍金も高額サラリーも支払う余裕はありません。

詳細な条件の交渉が難航すれば、マン・ユナイテッドはシンプルに決められるユーヴェを選ぶでしょう。テン・ハフのチームは、ガルナチョ、ラシュフォード、アントニー、アマド・ディアロとサイドの枚数は揃っており、スターリング獲得のモチベーションはさほど高くないはずです。赤と青の交渉が決裂すれば、彼の居場所はサウジとロンドンの二択となります。

トレヴォ・チャロバーを手離したければ、3000万ポンドの完全移籍という看板を下ろす必要がありそうです。シュツットガルトやクリスタル・パレスなど、ほしがっているクラブはあるのですが、いずれもローン移籍なら前向きと伝えられています。ファブリツィオ・ロマーノさんは、「残り48時間でどうなるかはわからない」といっています。

さらにもうひとり、行き場を失いつつある選手がいます。イプスウィッチと移籍合意に至りながら、メディカルチェックで負傷が発覚してアウトとなったアルマンド・ブロヤ。破談から一転、交渉は継続していたようですが、「アスレティック」のコリン・ミラー記者が「取りやめになった」と明言しています。現状は残留やむなしで、ケガを治して1月にリトライとなりそうです。

4人の余剰戦力が全員残留となったら、冬のマーケットが開くまでトップチームとは別メニューでトレーニングを続けるのでしょうか。ひとりでも売却が決まれば、最大のテーマとなっているヴィクター・オシムヘン獲得の可能性が高まるのですが…。ファブリツィオ・ロマーノさんと「スカイスポーツ」の速報をまとめると、オシムヘンは「アル・アハリへの移籍濃厚」です。

ナポリのエースは、アル・アハリからサラリー総額1億100万ポンド（約193億円）の4年契約という魅力的なオファーを受けたとのこと。オシムヘンが希望していたバイアウト条項も設定されるようで、もはや断る理由はありません。買取義務付きのローン移籍で手を打ちたいチェルシーは、選手たちのサラリーの抑制を図っており、ライバルに対抗できる条件は出せないでしょう。

サウジプロリーグのデッドラインデーは9月2日。逆転は難しいとジャッジした瞬間に、チェルシーはターゲットを切り替えるといわれています。ウェストハムとの開幕戦をジョン・デュランの決勝ゴールで制したアストン・ヴィラは、今さら彼をくれといわれても徹底抗戦でしょう。最有力は、既に交渉が始まっているブレントフォードのイヴァン・トニーと目されています。

さまざまな思惑が錯綜し、サプライズが勃発しそうなデッドラインデーが目前に迫っています。チェルシーの経営ボードは、ジャッジ、ジャッジ、ジャッジで1日が終わるのでしょう。マンチェスター・ユナイテッドサポーターとしては、「獲得費用ももマネジメントコストもかかりそうなスターリングはよそでがんばってほしい」のひとことです。どうなるか、見てみましょう。