偏愛的プレミアリーグ見聞録

「確かに、そうだ。マーケットにチャレンジするつもりだ。攻撃力を強化したい。われわれは2人のビッグプレーヤーを失ってしまった。ブカヨは3ヵ月、ガブリエル・ジェズスは長期離脱となる」。ミケル・アルテタ監督が、アタッカーの獲得をめざすと明言しました。カイ・ハヴェルツ、トロサール、マルティネッリ、スターリングだけでは、トロフィー獲得は難しそうです。

カラバオカップのニューカッスル戦は23本、FAカップのマンチェスター・ユナイテッド戦は26本、ノースロンドンダービーは14本。3試合トータルで63本のシュートを記録しながら、オープンプレーからのファインゴールはスパーズ戦のトロサールのスーパーショットだけです。ガブリエウの2発は、いずれも幸運なディフレクションで、ビッグチャンスミスが14回もあります。

現在のエースストライカーはカイ・ハヴェルツですが、プレミアリーグ18試合7ゴール2アシストは、もの足りない数字です。TOP10のクラブの最前線で、ガナーズのレフティよりゴールが少ないのは、5ゴールに留まっているボーンマスのエヴァニウソンのみ。マルティネッリ、トロサール、スターリングのゴールを足しても、ウルヴスのマテウス・クーニャに届きません。

17歳のイーサン・ヌワネリもブカヨ・サカの穴を埋める候補ですが、成長途上のティーンエイジャーはあくまでもチャレンジャーで、右ウイングとして計算に入れるべきではないでしょう。結果を出せていない前線に対して、セットピースから10ゴールはリーグ1位で、CBコンビの5ゴールもTOP。負傷者がゼロだったとしても、フロントスリーの得点力は改善ポイントです。

さて、アーセナルは誰を獲ろうとしているのか。最前線で体を張るゴールゲッターか、左右どちらでもこなすウインガーか、センターもサイドもOKのオールラウンダーか。シーズンの途中に獲得するなら即戦力が大前提。ムドリクをハイジャックされてトロサールに切り替えた経験から、プレミアリーグでプレイしたことがあるほうがローリスクと考えているのではないでしょうか。

これまで噂になっていた選手で最初に消えるのは、ニューカッスルがシャッターを下ろしているイサク。ローン移籍を検討中といわれているラシュフォードは、マンチェスター・ユナイテッドが国内のオファーに難色を示しているようです。スポルティングCPのヴィクトル・ギョケレスは、8400万ポンドの契約解除金を支払えばOKですが、アーセナルにとっては大きな決断です。

夏になれば獲得できそうな選手がいるのに、この状況のなかでストライカー問題のファイナルジャッジを下すのか。ギョケレスにも「シーズンが終われば、5000万～6000万ポンドに値下がりする可能性あり」という話があり、拙速に動くのは得策ではなさそうです。よりリアルなのは、複数のメディアが報じているブレントフォードのコンビでしょう。

25歳のブライアン・エンベウモは、今季プレミアリーグで21試合13ゴール3アシスト。28歳のヨアネ・ウィサは18試合11ゴール2アシスト。右サイドに張るシーンが多いエンベウモのほうがサカに近く、今季はセンターが多いウィサは、昨シーズンは左ウイングでも起用されています。短期間で決めるなら、ノッティンガム・フォレストとの一騎打ちといわれているウィサでしょう。

リヴァプールやニューカッスルなどライバルが多いエンベウモについて、ブレントフォードのトーマス・フランク監督は「移籍金がいくらになるか、想像できない」といっています。ユーティリティーと守備の貢献度が高評価のウィサは、4000万ポンド以内でいける可能性があり、ポジションがかぶるトロサールが契約延長を渋る以外にさほど懸念はありません。

デッドラインデーまで、残り2週間。アーセナルは、優勝をめざせる布陣で2月を迎えることができるでしょうか。エドゥなきチームが、「お手頃価格で得点力を高めてくれるローリスクの即戦力」という難しいターゲットにどこまで迫れるかに注目しましょう。「いきなりギョケレス」という選択肢がなくなったわけではありませんが、さすがに…。