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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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残留を願ったニューカッスルに打つ手なし…アレクサンデル・イサクの移籍劇を振り返る。

アレクサンデル・イサクの強引なアタックは、成功したといわざるを得ません。5月に退団したいと伝えられたニューカッスルは、プレシーズンのスケジュールをキャンセルされてもなお、残留の望みを捨てていませんでした。しかし、PFAの表彰式を欠席すると発表したイサクが「信頼が失われれば、関係は継続できない」という強い言葉でクラブを批判してから、風向きは変わりました。

イサクの抗議の3時間後に、「この夏の移籍を約束したことは一切ない」「売却条件は成立していない」「条件が満たされる見込みはない」とステートメントを出したものの、腫れ物に触るような扱いを続けているうちに、指揮官も経営ボードも売却に傾いていったようです。2024年の夏に契約延長を先送りにされ、移籍を決意したイサクは、マージーサイドしか見ていませんでした

8月1日に1億1000万ポンドのオファーを拒否されたリヴァプールは、「ニューカッスルが代役を獲得できなければ、話は進まない」と判断してアプローチをストップ。彼らがその後、前線のターゲットをアップデートしなかったのは、いずれ獲得できると確信していたからでしょう。2つのチームがピッチで激突した8月25日、マグパイズの経営ボードがノーサンバーランドのイサクの自宅を訪れました。

イサクが移籍に至るプロセスを克明にレポートした「アスレティック」のジェームズ・ピアーズ記者とオリヴァー・ケイ記者は、「18歳のエングモアが勝負を決めた一戦もドラマティックだったが、その日の早い時間に別なドラマがあった」と振り返っています。ヤシール・アル=ルマイヤン会長が直々に乗り出した会談は、イサクからの最後の言葉を受け取る場でした。

「再びプレイするつもりはない」。ジョアン・ペドロ、リアム・デラップ、エンベウモ、エキティケ、シェシュコに断られたクラブが、シュトゥットガルトからニック・ヴォルテマーデを引き入れると、そこからは一直線でした。いつものように、真っ当なプロセスでストライカーを獲ろうとしていたリヴァプールは、1億2500万ポンドを提示してクラブ間合意に到達しました。

共同オーナーだったアマンダ・ステイブリーが週給15万ポンドのサラリーの改善をほのめかした後、PSR違反を怖れたポール・ミッチェルSDが契約延長交渉を止めたことが、決断のトリガーとなってしまいました。しかし、ニューカッスルの落ち度といえるのはそれぐらいで、PSRによるペナルティを回避したこの夏は、新たな契約の締結について打診していたのです。

イサクが退団の意向を示してからは、残留への道を模索しつつ、後継者を獲ろうとチャレンジしていました。高額案件のエキティケやシェシュコは、カラム・ウィルソンの穴を埋めるための人材ではなかったはずです。「何とか残留」「新戦力でカバー」…2つの結末の間を揺れ動いたクラブは、目を覚ませと殴られたような強烈なメッセージに抗う術を持っていませんでした。

ニューカッスルとイサクの間には残り3年の契約があり、正しいと主張できるのはクラブのほうです。しかし実際に捨て身のスタンドプレーを喰らうと、ブルーノ・ギマランイス、アンソニー・ゴードン、サンドロ・トナーリ、ティノ・リヴラメントが後に続かないよう守るのが精一杯になります。リヴァプールが手を挙げてからは、彼らはノーチャンスだったのでしょう。

イサクを持っていかれたデッドラインデーは、ブレントフォードに抗議したヨアネ・ウィサを獲得した日でもありました。一連の移籍のプロセスを不愉快というなら、咎められるべきは選手と代理人でしょう。リヴァプールとニューカッスルは、食物連鎖のような世界のなかで、彼らのビジネスを行っているだけです。次のマーケットでも、移籍を認めさせようとメッセージを発する選手が現れるかもしれません。

この夏のニューカッスルは、争奪戦で負け続ける姿ばかりが印象に残りましたが、マーケットを終えてみると前線は強化されています。クラブを去ったイサクとカラム・ウィルソンは、2024-25シーズンのゴールを足すと28発。プレミアリーグで19ゴールのウィサとブンデスリーガで12ゴールのヴォルテマーデは、公式戦トータルで37発。左右のサイドには、ジェイコブ・ラムジーとアンソニー・エランガが加わっています。

ミランから獲得したCBのティアウと、ゴールマウスをニック・ポープと争うラムズデールも楽しみな存在です。難しいコミュニケーションを強いられたエディ・ハウ監督のなかにあるのは、安堵と納得ではないでしょうか。イサクが主張した「密室の合意」などなかったはずで、釈然としない移籍劇ではあったものの、ニューカッスルが戦えるスカッドを築いたのが救いのように感じられます。2週間後、CLの初戦はバルセロナ。モヤモヤを吹き飛ばす快勝を期待しましょう。


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