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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

ボーンマス、ブライトン、ブレントフォード…ビッグ6に主力を抜かれた「3B」は実は勝ち組?

「BBC」のダン・ローン記者によると、ヴィルツとヴォルテマーデの争奪戦に敗れたバイエルンのウリ・ヘーネス会長は、「completely crazy(完全に狂ってる)」「It can’t end well(いい結末を迎えるはずがない)」と吐き捨てたそうです。4年で67億ポンドという史上最高額のテレビ放映権料に支えられたプレミアリーグのトランスファーマーケットは、欧州を呑み込む勢いで動き続けました。

とりわけブンデスリーガからプレミアリーグのルートは活況で、ヴィルツ、エキティケ、シェシュコ、ヴォルテマーデ、シャビ・シモンズ、バイノー=ギッテンス、インカピエ、フリンポン、ジャカといった錚々たる顔ぶれがイングランドに向かっています。バイエルンのヴァンサン・コンパニ監督は、「プレミアリーグの小規模クラブとの争いで苦戦している」と嘆いていました。

夏の総額は31億ポンドを超え、ビッグ6、中小クラブ、昇格クラブ、チャンピオンシップの格差は広がっています。ビッグ6の獲得リストを見ると、国内の選手の比率は27%で、他の14クラブから11人を引き抜いています。いずれも過去15年の最高の数字で、他国から獲得した選手が空転するリスクをプレミアリーグの経験者でカバーするという考え方は、今後も続きそうです。

メディアの記者たちにマーケット激動の理由を問うと、テレビ放映権料に加えて、「クラブワールドカップやチャンピオンズリーグなどの出場枠の拡大」「コマーシャル収入の増加」といった答えが返ってきます。しかし、同じ質問をプレミアリーグのスカウティング担当者にぶつけると、「中小クラブの選手売買の戦略とマーケットリサーチが高度化している」と主張するそうです。

中小規模のクラブにとって、「安く仕入れた選手を高く売る」のは、以前から重要な経営戦略のひとつでした。近年は彼らの目利き力が高まっており、補強リストには「後で売るために獲ったでしょ!」とツッコミたくなる選手もいます。今季の注目は、ブライトン、ボーンマス、ブレントフォードの「Bトリオ」。彼らは主力を抜かれた被害者ではなく、「勝ち組」ではないでしょうか。

今やブライトンは、チェルシーのオフィシャルサプライヤーと化しています。彼らのズブズブの関係が始まったのは、2022年の夏でした。ザック・スタージをフリーで譲渡し、ククレジャは5600万ポンドでお買い上げ。彼らを手離した1ヵ月後には、グレアム・ポッター監督を送り出しました。翌年は、カイセドとロベルト・サンチェスで1億4000万ポンドを手に入れています。

昨年は静かだったのですが、この夏はお互いが大事な存在であることを思い出したようです。ジョアン・ペドロは6000万ポンド、ブオナノッテはストレートローン。チェルシーのオーナーが所有するストラスブールに1000万ポンドで移籍したエンシーソは、将来はウェストロンドンでプレイする可能性があるといわれています。こうなると、「ブルーコサウスコースト支店」です。

ブルーズ以外の売却は、サンダーランドに向かったアディングラが2050万ポンド、ミランに移籍したエストゥピニャンは1740万ポンド、フィオレンティーナに入団したランプティは600万ポンド。獲得リストのボスカーリとデ・カイペルは、移籍したフルバックの後釜ですが、ギリシャの逸材コストゥラストとユン・ドヨンの18歳コンビは、磨いて売るための仕入れの匂いがします。

ブライトンより、ボーンマスの退団メンバーのほうがエキサイティングです。ディーン・ハイセンはレアル・マドリード、ザバルニーはパリ、ケルケズがリヴァプールで総額1億4500万ポンド。名前を見てもピンとこない方に向けて、「アーセナルでいえばカラフィオーリ、ガブリエウ、サリバ。リヴァプールならロバートソン、ファン・ダイク、コナテ」と添えておきましょう。

最終ラインに安定をもたらした22歳以下の成長株を、3人まとめて抜かれたら、ビッグ6のサポーターは卒倒するでしょう。彼らに加えて、守護神ケパと前線のワッタラも失っています。さすがに今季は残留争いかと思いきや、アンフィールドの開幕節は88分まで2-2。終了間際にフェデリコ・キエーザとサラーにやられたものの、カウンターの切れ味を再確認した一戦でした。

2節のウルヴス戦は1-0、3節のスパーズ戦も0-1で連勝。トッテナム・ホットスパー・スタジアムではトリュフェ、セネシ、ディアキテ、アダム・スミスというフレッシュなバック4がシュートを5本しか許さず、ホームチームに20本を浴びせて勝ち切っています。「主力を売っても勝つ」を実現するためには、アンドニ・イラオラのような素晴らしい指揮官も必要ということでしょう。

最終ラインが崩壊したボーンマスとは逆に、ブレントフォードは前線をごっそりやられました。エンベウモはマンチェスター・ユナイテッド、ウィサはニューカッスル。アーセナルに移籍したノアゴーアと、GKフレッケンも激痛です。トーマス・フランク監督までスパーズに抜かれたクラブは、他の2つと比べると「被害」「損失」といった言葉が合うのかもしれません。

とはいえ、彼らの誤算は「同時に失ったこと」で、あれほど大暴れした前線へのオファーは覚悟していたはずです。ケレハー、ヘンダーソン、ワッタラ、リース・ネルソンで穴は塞いでおり、2年めのイゴール・チアゴとファビオ・カルヴァーリョが覚醒すれば戦えるでしょう。「キース・アンドリュース監督が早期に守備を安定させられれば」という条件付きではありますが。

海外の原石を敏腕の指揮官が磨き上げ、セレブに高く売りつける中間業者たちのスキルアップが、上位をめざすアストン・ヴィラやニューカッスルのハードルを上げているという構図です。このうえブライトンやボーンマスが、欧州の出場権を獲得したら快挙です。テレビ放映権料とマッチデー収入が増えて賞金も手に入り、選手の市場価値が爆上がりし、夏になるとチェルシーが…!


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“ボーンマス、ブライトン、ブレントフォード…ビッグ6に主力を抜かれた「3B」は実は勝ち組?” への1件のコメント

  1. アイク より:

    面白いお話ありがとうございました。
    Bトリオのような中堅が弱体化しないことはリーグの活性化に繋がり、ますます多くの放映権収入に繋がっています。ブライトンがロンドンの太客から稼いだ金額には驚嘆しましたが、この厳しいリーグで主力を売っても勝つという芸当にはそれだけの報酬が相応しいということですね。
    他リーグのビッグクラブからすると面白くない状況でしょう。ただ、リーグ内のライバルからスターを引き抜きながら一強体制を維持してきたバイエルンの会長には、今のプレミアの好循環についてよく考えて欲しいなと。(※クロップ・ドルトムントを追いかけていた者の負け惜しみです)

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