イングランドのプレミアリーグ(ときどきチャンピオンズリーグ)専門ブログ。マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リヴァプールetc.

偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

【Brazil2014】「PKはクルル」を選ばなかった策士ファン・ハール、今度はシレッセンで散る!

アルゼンチンとオランダといえば、思い出すのは1998年フランス大会のデニス・ベルカンプが決めたスーパーゴール。フランク・デ・ブールが自陣から出したロングボールをふわっとした柔らかいトラップで足元に落とし、アジャラのタックルをボールを浮かせて軽くかわして決めた見事な決勝点でした。あれから16年、場所はブラジル。オランダが勝てば、南米開催のワールドカップでの欧州初優勝が確定。アルゼンチンが勝てば、1986年、1990年の決勝で1勝1敗だった因縁の対決に決着をつけるファイナルとなります。スタメンを見れば、オランダが有利。ディ・マリアが不在で、戻ってきたアグエロもベンチスタートのアルゼンチンに対して、オランダはナイジェル・デ・ヨングが復帰。しかし前半、ボールを支配し、右サイド攻略を狙って攻勢で試合を進めているのはアルゼンチンでした。

アルゼンチンは、この日は右に入ったラベッシとサバレタのコンビが積極的。プレミアリーグでは鋭い攻め上がりが売りのサバレタは、おとなしかった大会序盤とは別人のように本領発揮です。マスチェラーノを中心に中盤のプレスも効いており、チームとしてどうボールを奪うかが明確。スター選手のリタイアをチーム戦術の徹底でカバーできている印象で、最初の45分は今大会最高の出来といっていいでしょう。対するオランダは、スペイン戦を思い出させる慎重な試合運び。強いチームを相手に失点をしないことを優先させ、飛び道具・メッシに対しては厳しく当たりにいきます。前半の決定機は、15分のメッシのFKのみ。シレッセンが右に体を伸ばしてこれをキャッチすると、両者ともこれといったチャンスが創れず、ハーフタイムを迎えます。オランダの前半のシュートは、スナイデルのミドル1本です。ファン・ハール監督は、どこで仕掛けてくるのでしょうか。オランダはデパイ、レンス、フンテラール。アルゼンチンは、アグエロの投入が、勝負の合図でしょう。

後半の頭から、ファン・ハール監督が1枚チェンジ。前半、イエローカードを受けていたマルティンス・インディをヤンマートに代え、引き続き守備を固めながら一発を狙うようです。こういう中盤のつぶし合いのような試合は、後半ラインが間延びし始めて攻め合いになったりするものですが、この日は両チームとも見事でした。アルゼンチンは、前線から追いきれなくなりオランダにボールを持たせる時間は増えますが、マスチェラーノとビリア、ペレスが中盤で自由にさせません。オランダも、メッシとラベッシをハードにチェック。前半はチャンスがあったアルゼンチンの右サイドをせき止めます。

決定機はわずかに1本ずつ。75分、ラベッシのクロスにニアで目いっぱい足を伸ばしたイグアインのボレーはサイドネット。オランダは91分、初めて中央からドリブルで抜けたロッベンのシュートは、必死に食らいついてスライディングでブロックしたマスチェラーノの右足が間に合います。素晴らしい、マスチェラーノ。今日のアルゼンチンは彼とその他10人のチームです。サベージャ監督はラスト82分にアグエロを入れ、勝負にいきましたが、背番号20にシュートチャンスはなし。93分、2度めの長い笛。両者とも、今大会2度めの延長戦です。

延長前半96分、ファン・ハール監督は、既にデ・ヨングを代えて残り1枚となっていたカードを使います。ファン・ペルシをフンテラール。これは勝負というより、ファン・ペルシの疲労を考慮した手堅い判断でしょう。今日のPK戦には、GKクルルの登場はありません。最初の15分は、ロッベンのミドル以外に、やはりシュートはなし。残すところ15分、後半も両者譲らないまま、時間がただただ過ぎていきます。残り5分となり、最後のチャンスとばかりにアルゼンチンが攻勢。浮き球に抜け出したパラシオのヘディングは飛び出したGKの頭を越えず。117分には影が薄かったメッシが右から突破。最高のクロスがフリーの味方に届きますが、途中出場の33歳、元プレミアリーグ所属のマキシ・ロドリゲスがボレーを強く当てられずにシレッセンの正面。ロッベンのドリブルは、マスチェラーノがことごとくブロックします。そしてついに、120分が終了。シュートは6対6、全くの互角。勝負はPK戦です。

…コスタリカ戦でGKをクルルに代えたファン・ハール采配は、やはり正しかったようです。キャリアで1回もPKを止めたことのないシレッセンは、やはりPKが苦手なGKにしか見えませんでした。アルゼンチンGKロメロが鋭い反応でフラールとスナイデルをストップしたのに対し、オランダの正GKは、2本逆に飛び、ヨミが当たった2本はうまいGKなら弾けるボールを止められずに終わりました。ファン・ハール監督は、あの奇策を使った以上、2回めのPK戦はやりたくなかったでしょうね。アルゼンチンの選手にしてみれば、目の前にいるのは「終了間際に代えられるほどPKがヘタなGK」です。心理的に、アルゼンチンのほうが優位に立っているようにみえた迷いなき4発。ファン・ハール監督は、4日前の自らの策に復讐されたかのようにエースGKと心中し、ユーロ、ワールドカップでおなじみの「PK戦負け」で大会を去ることになりました。

アルゼンチンが激戦を制し、ドイツとの決勝です。「アルゼンチン優勝」という大会前からの私の予想は、もしかしたら当たってしまうかもしれません。プレミアリーグ勢が多いドイツを応援したいところですが、何しろ予想が予想なもので、アグエロを追いかけながら楽しむとしましょう。この試合、普通に考えたらドイツが勝ちそうですが…。(ハビエル・マスチェラーノ 写真著作者/Javier Segura)

おもしろいと思っていただけた方は、お時間あれば、下のブログランキングバナーをクリックしていただけると大変うれしいです。所要時間は5秒です。何とぞよろしくお願いいたします!


“【Brazil2014】「PKはクルル」を選ばなかった策士ファン・ハール、今度はシレッセンで散る!” への3件のフィードバック

  1. より:

    そして、AZでPK練習を指導したことがあるというロメロから、ファン・ハールは恩返しを受ける。

    —–
    なんというか表情が不安そうでしたよね

  2. アーセナル より:

    londres nordさん 湯さん>
    先日のコスタリカ戦と逆で、PK戦が始まったときからアルゼンチンが自信たっぷり、オランダがナーバスになっているように感じました。

    —–
    うーん・・・
    むしろ準々決勝であの奇策を使ったらこそ余計にGKにプレッシャーが
    かかったんじゃないかなあ・・・
    結果論であの時の策があたりなら今回はあの時のせいで失敗だと思います

  3. makoto より:

    アーセナルさん>
    そう思います。ファン・ハールは自らの策に逆襲されましたね。

コメントを残す