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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

少年との約束を果たしたグリーリッシュ。感動秘話で終わらせたくない現地記者がつけたオチは…!?

もうすぐ90分、スコアは5-1。ハリーファ国際スタジアムに登場したイングランド代表は、イランと戦ったワールドカップカタール大会の初戦を圧勝で終えようとしていました。

11歳の少年が歓喜したそのシーンは、ベリンガムが縦に通した素晴らしいスルーパスによって実現しました。ボックス右でGKと1対1になったカラム・ウィルソンは、自ら打つと見せかけて中央にラストパスをフィード。自陣からスプリントしたグリーリッシュが、イージーなフィニッシュをネットに突き刺しました。

フォーデンとハグをかわし、集まってきたチームメイトと6点めを祝福した7番は、「BBC」のカメラを見つけると、プレミアリーグでは見せたことがない奇妙なダンスを披露しました。両手を横に伸ばしてくねらせる姿を目撃したファンのなかには、「そんなキャラだっけ!?」と突っ込んだ人もいるでしょう。

試合後、このパフォーマンスについて記者に問われたグリーリッシュは、こう答えています。「僕はセレブレーションをしただけ。しかし彼にとっては、大きな意味があるんだろうね。そう、フィンレイ、これは君のためのものだ」。マンチェスター・シティのプレーメイカーは、最高の舞台の初戦で彼との約束を果たすことができたのです。

その手紙が彼の元に届いたのは、今年の初めのことでした。差出人は、11歳のフィンレイ・フィッシャーくん。脳性麻痺を患っている彼が、手紙を書こうと思い立ったのは、グリーリッシュが同じ病気で苦しんでいる妹への愛を語っているのを見かけたからでした。

「あなたに会うのが夢です」。若いシティズンの熱いメッセージに心を動かされたグリーリッシュは、カタールに飛び立つ直前、マンチェスターで開催された「シティ・イン・ザ・コミュニティ・イベント」に足を運びました。

「信じられない。憧れのスターだったから。スーパーマンやバットマンに会ったみたいだ」。大好きなクラブの10番に会えた少年は、ワールドカップでゴールを決めたら、こんなパフォーマンスをしてほしいと依頼しました。苦笑しながら「プロミス!」と応え、握手をかわしたイングランド代表は、いきなり到来したチャンスを活かしました。

Like a dream come true!言葉にならない。まだ乗り越えられない」。その日の朝、マンチェスターの自宅で転倒して病院に運ばれたフィンレイくんは、リビングのTVでアイドルのパフォーマンスを目撃したそうです。「忘れていると思った。自分のために、こんなことをしてくれるなんて」。ワールドカップ初ゴールを決めたウインガーは、「For you Finlay」というメッセージと動画を添えたツイートを、タイムラインのトップに固定しています。

…いい話ですよね。ニッポンのメディアなら、「かけがえのない思い出となった」と添えて、話を終わらせるでしょう。しかし、この話の発信源はイギリスです。何かとオチをつけたがるあちらの記者が、おいしいネタを使わずに記事を締めるわけがありません。

「ガーディアン」のジュシュ・ハリデイ記者は、よくばりな少年の追加オーダーを紹介しています。

「グリーリッシュがこのダンスから解放されると考えているのなら、思い直す必要があるかもしれない。フィンレイくんは、彼がゴールを決めるたびにダンスをするように促している。”これからは、彼のお決まりのセレブレーションになるに違いない!”」

少年への取材殺到に、苦い表情を浮かべている人物を取り上げたのは「スカイニュース」。イングランドでは「あるある」ですが、彼の父親は熱狂的なマンチェスター・ユナイテッドサポーターなのです。記事の最後に描かれているのは、ライバルクラブの選手の感動ストーリーでスポットライトを浴びてしまい、「クレイジー」「信じられない」とぼやいている父親の姿です。

「ジャック・グリーリッシュ宛てのただの手紙だったのに、あらゆるニュースサイトに載るような狂気の沙汰が始まってしまった!」


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