偏愛的プレミアリーグ見聞録

ペジェグリーニ監督、お見事！というしかありません。昨季喰らったFFPペナルティで、補強費の制限、人件費総額を前年以上に増やせないなど、さまざまな不自由を強いられているマンチェスター・シティ。通常25人まで登録が可能なチャンピオンズリーグのメンバーリストにおいても、4人少ない21人までというペナルティを受けているプレミアリーグ王者が、9月4日にそのメンバーを発表しました。実は、いちばん厳しい罰はこれなのではないかと思い、泣く泣く外した選手は誰かとリストを見てみると…。

結論、まったく問題なし。

ペジェグリーニ監督が夏に補強したのは、年明けに獲得を目論み、冬の移籍市場の締切に間に合わずに諦めたフェルナンドとマンガラのポルト勢と、フリートランスファーで獲得できたアーセナルの右SBサニャ、空席となっていた2人めのGKカバジェロの4人のみ。一方で、チリ人監督は「ひとつのポジションに2人いれば充分。うちは選手が多過ぎる」と語り、ルーマニア代表GKパンティリモンをはじめ、レスコット、ロドウェル、マイカ・リチャーズ、ハビ・ガルシアと、使い勝手のよさそうな顔ぶれを続々と放出。移籍市場最終日には残留濃厚と思われていたネグレドまでバレンシアに出してしまいました。

冬休みがなく、カップ戦が他国よりひとつ多いタイトなプレミアリーグで、少数精鋭主義をとって大丈夫なのかと心配されたなかでのチャンピオンズリーグ登録メンバー発表だったわけですが、結局、マンチェスター・シティの欧州戦線は、こんな21人となりました。

【マンチェスター・シティ　チャンピオンズリーグ登録メンバー（Aリスト）】
GK：ジョー・ハート、カバジェロ
DF：サニャ、コンパニ、サバレタ、コラロフ、マンガラ、クリシー、デミチェリス、ボヤタ
MF：フェルナンド、ミルナー、ナスリ、ヘスス・ナバス、ランパード、ダビド・シルバ、フェルナンジーニョ、ヤヤ・トゥレ
FW：ジェコ、アグエロ、ヨヴェティッチ

ペナルティの影響はまったくありません。監督が22人でいいと宣言し、21歳以下の選手を登録できるBリストのほうにCBナスタシッチを入れたので、当たり前といえば当たり前ですが、1軍のメンバーで諦めたのはシンクレアぐらいでしょう。マンチェスター・シティは、ペナルティなどどこ吹く風とばかりに、今季のフォーメーションとして考えていた顔ぶれをそのまま使って、バイエルン・ミュンヘン、CSKAモスクワ、ASローマが待ち構える「死のグループ」に突入していくことになります。5月まで、ぎりぎりの人数で走り切れるのかという疑問はあるものの、ペジェグリーニ監督の姿勢と覚悟は素晴らしいと思います。これで2冠～3冠を持っていかれたら、めざせプレミアリーグ優勝、がんばれ欧州リーグとばかりに大所帯に膨らませたクラブは悔しいですね。

リストのなかには、チェルシーと契約満了となり、ニューヨーク・シティFCからのレンタルとしてチームに加わったフランク・ランパードの名前もあります。ランパードは、ワールドカップブラジル大会を最後に代表を離れると発表したばかりですが、先日のインタビューで、代表引退を決めた理由を「ルーク・ショーが闘将アダムスを知らないと聞いて愕然としたから」と語っています。

「ルーク・ショーと話をしていたとき、私はトニー・アダムスの名前を出したんだ。彼は、誰の話なのかわからないようだった。『俺をわざと怒らせようとしてるのか？』と聞くと、『その人はどこでプレイしていたの？』と返してきた。そのとき、代表を引退すべきときが来たんだなと悟ったんだ」

もちろんこれはランパード流のジョークで、ルーク・ショーには罪はないのですが、いや、わかります！一緒にプレイする選手のなかに、80年代終わりのアーセナル黄金時代を支えた「フェイマス4」の中心で、代表66試合を数えるレジェンドを知らない選手がいると聞けば、そりゃあ、びっくりするでしょう。しかし、冷静になって考えてみれば、トニー・アダムスがピッチに別れを告げたとき、ルーク・ショーは6歳です。本ブログを読んでいる方のなかにも、「アダムスを知らないグーナー」もいらっしゃると思います。とはいえ、こういうのって、頭ではわかっていても、実際に出くわすとショックなんですよね。「わかります！」と書いたのはそういうことで、おそらく代表引退を9割方決めていたランパードは、ルーク・ショーの純粋な「？？？」をみて、一気に肩の力が抜けたのでしょう。

話がそれましたが、ここで言いたかったのは、イングランド代表とチェルシーのレジェンド、フランク・ランパードにとって、おそらくこれが最後のチャンピオンズリーグになるのではないかということです。プレミアリーグももちろんですが、今回のリストで「Last Stand of Lampard」を目撃したいという気分が俄然盛り上がってまいりました。36歳のベテランMFが、ミュンヘンやローマで貴重なゴールを決める姿が観られることを期待したいと思います。