偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドが3シーズン連続でタイトルを獲得できなかったのは、31年ぶりだそうです。2017-18シーズンはジョゼ・モウリーニョの下でプレミアリーグ2位。今季は3位に食い込んだものの、それぞれマンチェスター・シティとリヴァプールが独走したシーズンで、優勝争いに絡んだとはいえませんでした。4年続けて無冠となった1988-89シーズン以来の長い不振の責任を、フルシーズンを戦うのが初めての若い指揮官にすべて押し付けるのは妥当ではないでしょう。

しかし、ヨーロッパリーグ、FAカップ、リーグカップですべて準決勝敗退という結果を評価せよといわれれば、話は変わります。複数の戦術を操れる監督なら、勝てたのではないか…。スールシャール監督が再開後のプレミアリーグやトーナメントで披露した戦い方は、いつもの11人で先手を取って逃げ切るだけでした。

最初のつまずきは、35節のサウサンプトン戦でした。プレミアリーグのTOP4争いをガチガチのレギュラー固定で戦い続けたチームは、3試合連続3点差勝利というプレミアリーグレコードを打ち立てた後、明らかに疲労とストレスを溜めていました。12位のチームに押し込まれるシーンが目立ち、追加タイムが終わる直前にオバフェミの同点ゴールを喰らう最悪の展開。36節のクリスタル・パレス戦は、チェルシーと戦うFAカップ準決勝の3日前のゲームでしたが、残り12分で2点をリードしていたにもかかわらず、スールシャール監督は交代カードを2枚しか切りませんでした。

なるほど、プレミアリーグに集中するのか…と思いきや、ウェンブリーでもラシュフォードとブルーノ・フェルナンデスはスタメン起用。ブルーズに完敗した一戦は、ハーフタイム前後のデ・ヘアのミス連発が痛かったのは確かですが、7対13とシュート数で圧倒された攻撃陣も敗因のひとつでした。1月に加入したプレーメイカーは、3点のビハインドを背負っても代えてもらえず、試合を重ねるごとに動きが重くなるばかり。37節もハマーズにホームで引き分け、最終節で何とかレスターに勝ったチームは、オプションなきままELのノックアウトステージに突入しました。

セヴィージャ戦は、指揮官の采配の差で敗れたゲームでした。後半開始から10分の猛攻が実らず、相手の2枚代えでシュートが打てなくなったチームは、明確な変化を必要としていました。ところが、スールシャール監督の判断は「ステイ」。78分に決勝ゴールを決めたのは、ロペテギ監督が後半から投入したデ・ヨングでした。スールシャール監督が動いたのは、ラスト3分。マタ、ダニエル・ジェームズ、フォス＝メンサーという3枚代えに、明確な意図はなかったように見えました。

マルシアルをセンターにコンバートし、左右に配したラシュフォードとグリーンウッドにカットインを促す形を創ったのは指揮官のお手柄です。プレミアリーグ44ゴールの3トップは、リヴァプールのフロント3に2ゴール差に迫っており、来季も楽しみです。噂のジェイドン・サンチョが加わり、グリーンウッドがジョーカーにまわれば、最強の前線が完成するでしょう。ドルトムントの若きウインガーが獲れなければ、ユーヴェのドゥグラス・コスタと伝えられていますが、それでも前線はさほど心配はありません。しかし…。

ブルーノ・フェルナンデスとポグバが好調なら圧勝、どちらかの不調や欠場で別のチームになってしまう中盤は改善できるのでしょうか。リンデロフとブランドン・ウィリアムズが心もとない最終ラインにテコ入れはあるのでしょうか。イガロやマタ、マクトミネイなどのタレントを活かすオプションを確立できるのでしょうか。ヨーロッパリーグの負け方を見ると、新戦力をかき集めるだけで強くなれるとは思えません。バルセロナが、ロナルド・クーマンを選んだのは幸運でした。今こそ、彼に声をかけるべきではないでしょうか。この夏考えられる最高の補強、マウリシオ・ポチェッティーノに。