アルテタはフェアで、ロジカルでブレなかった…メスト・エジルの誤算と不運。
「とてもフェアだったので、穏やかな心でいられる。私のほうからいえるのは、単純にフットボールの決断だということだ。彼とのコミュニケーションのレベルは非常に高く、お互いに何を期待できるかをわかっている。明らかに次元が違うプレーヤーで、彼のキャリアによって、周囲で起こるすべてがインパクトをもたらす。過去8年間、ずっとそうだった。今起こっているのは新しいことではない」
「私の仕事は、すべてのプレーヤーを最大限に活用し、チームのパフォーマンスに貢献することだ。今、私は失敗したと思っている。チームのために、できうる限り最高のメスト(・エジル)がほしかった。ある時期はそこに近づくことができたが、今はできない。彼をチームから外す決断をしなければならなかったからだ」
ヨーロッパリーグに続いて、プレミアリーグの25人の登録メンバーからもメスト・エジルを外したアルテタ監督は、いち早く自らの言葉で決断について説明しました。素晴らしいボス、適切な対応だったと思います。あれだけの選手が、レギュラーどころかベンチからも外れるという大事件が起これば、メディアもサポーターも黙っているわけがありません。指揮官からの発信は、「エジルの政治的な発言を問題視したアーセナルが、中国に配慮した結果」というようなネガティブな憶測の火種を消し去るまではできなくても、急速な拡散を食い止める効果はあったのではないでしょうか。
あらためて、アーセナルの25人とU-21のリストを見ると、「フットボールの決断」という指揮官の言葉が理解できます。それを語る前に、「なぜエジルが25人から外れたのか」というテーマについて、私見をまとめたいと思います。「メスト・エジルは、数々の誤算と不運によってプレミアリーグでプレイする機会を失った」というのがその骨子です。最初の不運は、ミケル・アルテタの就任です。4-3-3と3-4-3には、エジルが最もフィットするポジションがありません。起用するとすれば、右のウイングかインサイドMFですが、昨季プレミアリーグで18試合1ゴール2アシストでは、指揮官は優先順位を下げざるを得なかったのだと思われます。
エジルは決して走らない選手ではありませんが、守備能力と上下動の徹底度は、ダニ・セバージョス、サカ、ジャカ、エルネニーに劣ります。「ゴールやアシストは減ったかもしれないが、キーパスは出している。アシストのひとつ前のプレイを見てほしい」という向きには、「今のチームでウイングに求められるのは、スピードを活かしたサイドの突破やカットインなど、ゴールに直接絡む役割だから」という説明でいかがでしょうか。オーバメヤン、ニコラ・ペペ、サカ、マルティネッリと、貪欲にゴールを狙う選手が揃った今は、下がりすぎるシーンが目立つようになったエジルはもの足りなく映ります。
ウイングでも中盤でも微妙だったところにウィリアンが加わり、ダニ・セバージョスは再度ローン移籍が決まりました。トーマス・パーティーが絶対的なアンカーとなれば、攻守のバランスを取れるダニ・セバージョスがインサイドに上がります。優先順位がさらに下がってしまったエジルに、次なる誤算が生じます。退団が噂されていたパパスタソプーロスとムスタフィが残留。これによって、ホームグロウン以外の選手が2人溢れることが確定しました。
最も痛かった誤算は、ウィリアム・サリバが今季はフィットしないと見做されたことでしょう。アーセナルのU-21のメンバーを見ると、戦力として期待されている選手が前線に偏っているのがわかります。サカ、マルティネッリ、ウィロック、ネルソン、エンケティア。彼らは25人に入れなくても起用できるので、登録すべきは中盤から後ろということになります。U-21に登録されているウィリアム・サリバが使えるなら、25人から外れたのはエジルではなくムスタフィだったかもしれません。
ダヴィド・ルイス、ガブリエウ、パブロ・マリ、ホールディングの4人だけでは、誰かがケガをすれば3バックを選びにくくなります。パブロ・マリ、チャンバース、ホールディングの負傷も、エジルには逆風でした。負傷しているムスタフィの名前をみたとき、「リスクヘッジ。やむなし」と唇をかむしかありませんでした。フォーメーション、トランスファーマーケットの着地、スカッドのコンディション、若手の成長…エジルに味方してくれる要素は、ひとつもなかったのだと思います。最後の最後で、ベテランとして若い選手に慕われていれば、外すべきではないという判断もあったかもしれませんが、その枠には既にオーバメヤンとダヴィド・ルイスが居座っていました。
それにしても、事件です。ワールドカップを制した稀代のプレーメイカーが、ベンチにも入れないなんて…。メンバーから外れた後、10番が発したメッセージにあった「 I will continue to train as best as I can and wherever possible use my voice against inhumanity and for justice.(トレーニングを続けて最善を尽くし、正義のため、非人道的なことに立ち向かうために声を挙げる)」という言葉が憶測の着火剤になっているようですが、エジルの中国に対する批判はアルテタ監督が来る前です。就任以来のプレミアリーグで、10試合連続スタメン起用した監督の翻意の理由にはなりえないでしょう。
出場機会どころか出場資格を奪われてしまった名手が、多少微妙なメッセージを残したとしても、心が揺れるショッキングな通告だったのだと理解し、動向を静かに見届けたいと思います。プレミアリーグの登録メンバーからの除外は、あまりにも重い出来事です。現状についていえることはあっても、未来に向けて発せる言葉はありません。
「私の仕事は、すべてのプレーヤーを最大限に活用し、チームのパフォーマンスに貢献することだ。今、私は失敗したと思っている。チームのために、できうる限り最高のメスト(・エジル)がほしかった。ある時期はそこに近づくことができたが、今はできない。彼をチームから外す決断をしなければならなかったからだ」
ヨーロッパリーグに続いて、プレミアリーグの25人の登録メンバーからもメスト・エジルを外したアルテタ監督は、いち早く自らの言葉で決断について説明しました。素晴らしいボス、適切な対応だったと思います。あれだけの選手が、レギュラーどころかベンチからも外れるという大事件が起これば、メディアもサポーターも黙っているわけがありません。指揮官からの発信は、「エジルの政治的な発言を問題視したアーセナルが、中国に配慮した結果」というようなネガティブな憶測の火種を消し去るまではできなくても、急速な拡散を食い止める効果はあったのではないでしょうか。
あらためて、アーセナルの25人とU-21のリストを見ると、「フットボールの決断」という指揮官の言葉が理解できます。それを語る前に、「なぜエジルが25人から外れたのか」というテーマについて、私見をまとめたいと思います。「メスト・エジルは、数々の誤算と不運によってプレミアリーグでプレイする機会を失った」というのがその骨子です。最初の不運は、ミケル・アルテタの就任です。4-3-3と3-4-3には、エジルが最もフィットするポジションがありません。起用するとすれば、右のウイングかインサイドMFですが、昨季プレミアリーグで18試合1ゴール2アシストでは、指揮官は優先順位を下げざるを得なかったのだと思われます。
エジルは決して走らない選手ではありませんが、守備能力と上下動の徹底度は、ダニ・セバージョス、サカ、ジャカ、エルネニーに劣ります。「ゴールやアシストは減ったかもしれないが、キーパスは出している。アシストのひとつ前のプレイを見てほしい」という向きには、「今のチームでウイングに求められるのは、スピードを活かしたサイドの突破やカットインなど、ゴールに直接絡む役割だから」という説明でいかがでしょうか。オーバメヤン、ニコラ・ペペ、サカ、マルティネッリと、貪欲にゴールを狙う選手が揃った今は、下がりすぎるシーンが目立つようになったエジルはもの足りなく映ります。
ウイングでも中盤でも微妙だったところにウィリアンが加わり、ダニ・セバージョスは再度ローン移籍が決まりました。トーマス・パーティーが絶対的なアンカーとなれば、攻守のバランスを取れるダニ・セバージョスがインサイドに上がります。優先順位がさらに下がってしまったエジルに、次なる誤算が生じます。退団が噂されていたパパスタソプーロスとムスタフィが残留。これによって、ホームグロウン以外の選手が2人溢れることが確定しました。
最も痛かった誤算は、ウィリアム・サリバが今季はフィットしないと見做されたことでしょう。アーセナルのU-21のメンバーを見ると、戦力として期待されている選手が前線に偏っているのがわかります。サカ、マルティネッリ、ウィロック、ネルソン、エンケティア。彼らは25人に入れなくても起用できるので、登録すべきは中盤から後ろということになります。U-21に登録されているウィリアム・サリバが使えるなら、25人から外れたのはエジルではなくムスタフィだったかもしれません。
ダヴィド・ルイス、ガブリエウ、パブロ・マリ、ホールディングの4人だけでは、誰かがケガをすれば3バックを選びにくくなります。パブロ・マリ、チャンバース、ホールディングの負傷も、エジルには逆風でした。負傷しているムスタフィの名前をみたとき、「リスクヘッジ。やむなし」と唇をかむしかありませんでした。フォーメーション、トランスファーマーケットの着地、スカッドのコンディション、若手の成長…エジルに味方してくれる要素は、ひとつもなかったのだと思います。最後の最後で、ベテランとして若い選手に慕われていれば、外すべきではないという判断もあったかもしれませんが、その枠には既にオーバメヤンとダヴィド・ルイスが居座っていました。
それにしても、事件です。ワールドカップを制した稀代のプレーメイカーが、ベンチにも入れないなんて…。メンバーから外れた後、10番が発したメッセージにあった「 I will continue to train as best as I can and wherever possible use my voice against inhumanity and for justice.(トレーニングを続けて最善を尽くし、正義のため、非人道的なことに立ち向かうために声を挙げる)」という言葉が憶測の着火剤になっているようですが、エジルの中国に対する批判はアルテタ監督が来る前です。就任以来のプレミアリーグで、10試合連続スタメン起用した監督の翻意の理由にはなりえないでしょう。
出場機会どころか出場資格を奪われてしまった名手が、多少微妙なメッセージを残したとしても、心が揺れるショッキングな通告だったのだと理解し、動向を静かに見届けたいと思います。プレミアリーグの登録メンバーからの除外は、あまりにも重い出来事です。現状についていえることはあっても、未来に向けて発せる言葉はありません。
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ぺぺやマルティネッリはそんなにサイド突破できてないし、90分を通して機能してるとは言い難い。だからウィリアン獲得したし、まだ足りないからアワールも獲得狙ったのでしょう。サカは左WBですし。
スタメンはともかく、怪我人出ても使えないメンバー外にまでにする必要性まではないでしょう。
完全な主力でなくなった今、大事な商売相手である中国に喧嘩売ってまで起用する必要はない。
パーティに金出すかエジル使うか選択したのはアルテタだから、アルテタは自分が決定した、と言ってる、とかではないかと思いますね。