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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

マンチェスター・ユナイテッドの「7年で10億ポンドの補強」を振り返る【後編】SDは必要か?

サー・アレックス・ファーガソンが去ってからのマンチェスター・ユナイテッドを振り返る「スカイスポーツ」のポッドキャストより、補強の成功&失敗に続く第2弾として「スポーツディレクターは必要か?」というテーマをお届けしたいと思います。マンチェスター・シティはチキ・ベギリスタインとペップがタッグを組んで補強を推進。リヴァプールの強化のあり方を変えたマイケル・エドワーズは、クロップ好みの選手を集めてプレミアリーグを制覇に貢献しました。チェルシーのビッグディールを仕切るのは、マリナ・グラノフスカイア。マーケットにおける立ち回りが下手といわれていたアーセナルは、エドゥ&アルテタ体制となってからは、ポテンシャルが高い若手を的確にゲットしています。

デヴィッド・ギル去りし後、マンチェスター・ユナイテッドの現場の人事まで仕切るようになったエド・ウッドワードCEOは、「ビジネスマンとしては優秀でも、フットボールに関しては素人」「トランスファーマーケットにネットワークを持たない」「一貫性と中長期的視座に欠ける」と批判されてきました。ファン・ハールの戦術にディ・マリアは必要だったのか?ジョゼ・モウリーニョが求めていたCBを獲るべきではなかったのか?今となっては、「あの頃は総合的な強化も弱点補強も的確ではなかった」というしかありません。

プレミアリーグを最後に制してから7年が過ぎ、補強の失敗を揶揄する記事を配信され続けているクラブではありますが、直近は的を射た補強が増えてきているように感じられます。「スカイスポーツ」のポッドキャストは、SD招聘の是非を議論する前に、マンチェスター・ユナイテッドの体制の変化について整理しています。

「エド・ウッドワードが監督の役割を担っている。彼とやりとりしたけど、以前よりも関与していないみたいだ。選手獲得の最終交渉には関与していると思うけど、スカウトや早期の交渉には絡んでいない」
「チーフスカウトはミック・コートとジム・ローラー。奇妙で曖昧ないい方になってしまうけど、必要に応じてクラブの発展させる責任を担っているのはマット・ジャッジだ。彼こそがここのキーパーソン。コートとローラーは世界じゅうにいるスカウトと話し、獲るべき選手を特定している。この夏は、アカデミーに大量に選手を引き入れてたね」(ジェームズ・クーパー/スカイスポーツニュース)

以前はエド・ウッドワードがメインで動いているように見えたマンチェスター・ユナイテッドは、ジェイドン・サンチョ獲得を主導していたマット・ジャッジと情報収集に長けた2人のチーフがリストアップと交渉を進め、CEOが決裁するというフローに移行しているとのこと。そんななかで、あらためて「スポーツディレクターは必要か」というテーマについて議論したジャーナリストたちは、それぞれの観点を添えながら「イエス」と口を揃えています。

「彼らにスポーツディレクターが必要か?大いにそう思う。クラブの方針や一貫性を適切に保つ、いわば接着剤のような存在が組織の真ん中に必要だ。マネージャーと選手は変わるかもしれないけれど、スポーツディレクターの哲学は変わらない」(ジェームズ・クーパー/スカイスポーツニュース)

「アレックス・ファーガソン卿がある選手を欲しがっているとき、彼は早い段階でそれを知ることになる。自分の役割、クラブの方向性、野心…現状はどのように進んでいるかを正しく理解することができる。選手を興奮するよ。多くの場合は、彼らはエージェントのところにいってマンチェスター・ユナイテッドに移籍したいと訴える。選手がそこまでいったら、引き留めるのは非常に困難だ」
「今はそういう裏ワザが失われている。その類のアプローチはできないだろう?エージェントは、すべてのカードをテーブルの上に置いている。オプションまでオープンにしているんじゃない?」(ジェラルド・ブランド/スカイスポーツ・デジタルジャーナリスト)

クラブを強化するためのコンセプトを設計し、補強を進める責任の所在を明確にする効果は、悪名高き移籍委員会からマイケル・エドワーズ体制に移行したリヴァプールがプレミアリーグ&チャンピオンズリーグ制覇という形で証明しています。ジェラルド・ブランドさんが主張しているのは、「現場をよく知る人間が、ターゲットを直接口説き落とせれば補強の成功率が上がる」ということでしょう。ライバルクラブを蹴落としたガブリエウ・マガリャンイス獲得や、アトレティコ・マドリードが気づかないうちに契約を成立させるトーマス・パーティーの脱走劇を企んだのは、アルテタのプランを選手に伝えられるエドゥだったのではないかと思われます。

エドワードの下で展開される三頭体制が定着しているマンチェスター・ユナイテッドが、一気に体制を変えるのは難しいのかもしれませんが、ライバルたちの進化を見れば組織改革が必要なのは明らかです。次の夏こそは、指揮官とスポーツディレクターのタッグによるコンセプチュアルなチームづくりを実現できるようにしていただければと思います。プレミアリーグ優勝から遠ざかった7年のトランスファーマーケットにおける収支は、マイナス7億4000万ポンド(約1020億円)。マイケル・エドワーズとクロップが的確な補強を続ける最強リヴァプールは、マイナス2億3000万ポンド(約317億円)です。


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