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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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走りまくるセスクとマティッチ…モウリーニョ監督のチームは、なぜ負傷者が少ないのか?

1位セスク、2位マティッチ。プレミアリーグの各種データを取得・分析しているゲーム会社「EAスポーツ」が発表した、今季のプレミアリーグで走行距離が長い選手のランキングです。セスクの走行距離は約164キロ、マティッチが163キロ。なるほど、そうでしょうね。彼らがトップ2である大前提は、「全試合に出場していること」。今季のチェルシーにおいて、ここまでの14試合をフルタイム出場しているのはネマニャ・マティッチ、テリー、イヴァノヴィッチの3人。同じく14試合に顔を見せているセスク・ファブレガスがいなかった時間は40分だけです。ケガなし、ムラなし、サボリなし。プレミアリーグ開幕から、4ヵ月にわたって一度も負けていないチェルシーを支えているのは、元気なレギュラー陣の豊富な運動量であることは間違いありません。

それにしても、負傷者が出ませんね、チェルシー。試合中に負傷退場する選手はそれなりにいますが、彼らの多くが1~2週間で復帰してきます。今季のプレミアリーグでケガ人が多いマンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リヴァプールのサポーターは、主力選手に休みがないと「酷使がケガにつながらないか」と心配しますが、トップクラブにおいて主力選手をいちばん「酷使」しているのはモウリーニョ監督です。アザール、テリー、イヴァノヴィッチ、セスク、マティッチ、ケーヒル、クルトワ。ここまで、プレミアリーグのすべてのゲームに出場している選手が7人もいます。そういえば、アーセナル加入後は度重なるケガに悩まされているメスト・エジルは、モウリーニョ監督のレアル・マドリードでは一度も負傷リタイアがありませんでした。「メディカルスタッフのクオリティ」「練習場やスタジアムのピッチの状態」「トレーニングのメニュー」…負傷者の発生には複合的な理由があるのだと思われますが、モウリーニョ監督がケガ人を出さない最大の理由はどこにあるのか。私は、彼のこの言葉に着目してみました(引用元:「SOCCER Coachig.jp」

「もし1週間に1試合だけであれば、私は試合日翌日をオフにしている。身体機能的・生理学的な見地からは最適なオフのタイミングではないことはわかっている、それよりも精神的・気持ち的な問題からこのようにしているのだ。ちなみに私にとっても同様で、基本的に試合日翌日には私はなかなか働く気になれない。というのも試合の日の夜はなかなか寝付けないし、その翌日も起きるのが辛い。そうなると翌日は集中しづらく練習プランも作りにくいし、トレーニングを指揮するのも簡単ではない。もしトレーニングを行っても、トレーニング自体の中に身をおかず、気がついたら練習を眺めながらピッチサイドをただ歩き回っていたりする」

「選手も似たような状態である。体力的回復を促す面からみると試合日翌日はトレーニングをしたほうが良いはずである。でも選手は練習したがらないし、気持ちも入らない。肉体的には効果があるはずでも精神的には効果は低いのだ」

各国リーグの基本的なサイクルである「週に1回のリーグ戦」を念頭に置いた、モウリーニョ監督のトレーニング手法「モルフォ(ウィークリー)サイクル」は、選手の気持ちや自発性を重視して組み立てられているとのこと。これはわれわれの仕事に照らし合わせてみても、納得です。仕事やその準備にやりがいが感じられれば集中力は上がってミスも減り、「やらされ感」が高い状態では作業の効率は下がり、トラブルが起こる可能性も高くなるものです。

昨季まで所属していたフェルナンド・トーレスは、「モウリーニョ監督とアシスタントコーチは、あらゆるセッションで選手たちが楽しめるよう工夫してくれている。モウリーニョのプランに入るために、すべての選手が全力を尽くしていると思う」と語っていました。「練習が楽しい」「サッカーを考えさせられる」と選手が思えるような自発性を促すトレーニングが、チェルシーの負傷者が少ない理由のひとつではないかと思いました。

試合中の負傷退場が多いアーセナルに対して、練習でのケガが多いマンチェスター・ユナイテッドの指揮官は、フランク・リベリーに「彼の練習はつまらなかった」と酷評されたルイス・ファン・ハールです。今季から練習場にカメラが設置されたと聞いたとき、これはあくまでも分析・チェックのためであり、監視や管理のためではないとは思いつつも、選手にとってはおもしろくないだろうな、と懸念しました。

信奉者も多いファン・ハール監督ですが、選手にとっては好き嫌いが大きく分かれるクセのある指揮官。監督のいっていることが理解しきれず、思うように体が動かないという選手もいるかもしれません。モウリーニョが善でファン・ハールは悪である、などといった短絡的な捉え方をするべきではないと思うものの、片やプレミアリーグ首位独走、もう一方はケガ人だらけでやっと4位。毎試合、激しく上下動を繰り返すセスクやマティッチをみて、ため息が漏れてしまう瞬間もあるわけです。イヴァノヴィッチが「スペシャル・ワンではなくもはやパーフェクト・ワン」と絶賛するモウリーニョ監督が、スタメン固定のままシーズンを終えていくつかのタイトルを獲ったときは、惜しみない拍手でその素晴らしさを称えたいと、すでに身構えている今日この頃であります。

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“走りまくるセスクとマティッチ…モウリーニョ監督のチームは、なぜ負傷者が少ないのか?” への1件のコメント

  1. Joe より:

    モウリーニョ監督は、選手が主体的にトレーニングを行う場合の動機付け (内発的動機付け) に長けていますね。真逆のスタイルの監督が昨季プレミアにやってきたマガトさんですね。

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