偏愛的プレミアリーグ見聞録

「Jota returns to team training while Van Dijk works outside」。リヴァプールの公式サイトが、ディオゴ・ジョッタのチームトレーニング復帰と、ファン・ダイクのリハビリテーションについて写真を駆使してレポートしています。昨季プレミアリーグ王者が凋落した最大の理由は、攻守のキーマンの離脱でしょう。2019-20シーズンの25節終了時点の戦績は、24勝1分で60得点15失点。6位に転落した今季は11勝7分7敗で、45得点34失点。ゴールは15も減り、失点は倍以上に増えてしまいました。

3月にジョッタが復帰しても、リヴァプールのプレミアリーグTOP4返り咲きは難しいのではないかと思われます。先週末のマージーサイドダービーで、足を痛めて座り込んだジョーダン・ヘンダーソンの状態を問われたクロップ監督は、「鼠径部と内転筋。メディカル部門の誰もがポジティブではない」と返しています。近いうちに戻ってくるといわれているファビーニョに、ファン・ダイクとヘンダーソンの役割を同時に背負わせるのは不可能です。トゥヘル監督の就任以降、プレミアリーグ6戦4勝2分と復活したチェルシーの負傷者は、チアゴ・シウヴァのみ。満身創痍のチームが、ブルーズの上でシーズンを終えるという着地は想像できません。

悪魔に魅入られたかのように負傷者が続出し、別のチームとなってしまったリヴァプールの苦闘を振り返ってみましょう。ファン・ダイクの後を追うようにジョー・ゴメスが負傷リタイアとなったのは、2020年11月11日。最終ラインに下がったファビーニョと、今季になって頭角を現したマット・フィリップスやリース・ウィリアムズが何とか穴を埋めていたのですが、年末のマティプの負傷がとどめだったかのように、リヴァプールは極度の不振に陥ってしまいました。

ジョッタが最後に出場したのは、4-0で快勝した11節のウルヴス戦でした。公式戦17試合9ゴール、プレミアリーグ9試合5ゴールと入団初年度から見事にフィットしたドリブラーの不在は、0-7圧勝のクリスタル・パレス戦で先制ゴールを決めたタクミ・ミナミノがカバーしてくれるはずでした。期待されていた日本代表FWが結果を出してくれれば、違う世界があったのかもしれませんが、その後のトレーニングで指揮官の信頼を得られず、バーンリー戦で6分プレイしただけでサウサンプトンにローン移籍となってしまいました。

5節のマージーサイドダービーで前十字靭帯損傷という重傷を負ってしまったオランダ代表のキャプテンがいなくなったことで失ったのは、守備の強度だけではありませんでした。裏に出たボールをすべて拾ってくれるCBがいるからこそ、安心してキープできていたハイライン。相棒のCBや両サイドのフルバックを落ち着かせるコーチング。逆サイドのサラーやアーノルドに1発で届き、攻撃のスピードUPを促すロングフィード。昨季プレミアリーグでは5ゴールをゲットしており、接戦のセットピースでも頼りになる存在でした。

CBの相次ぐ負傷によって、ヘンダーソンとファビーニョを最終ラインに下げざるをえなくなり、奪われた直後のプレスが機能しなくなりました。マネとフィルミーノが決められなくなった理由のひとつは、敵陣で奪い返してショートカウンターという得意の形を創れなくなったことでしょう。ボールを奪う位置が低くなったため、相手の守備陣が準備する時間ができ、フィルミーノが前を向いてキープするシーンが減ってしまいました。

ボールを奪取するポイントの後退、ショートカウンターの減少、最終ラインの裏を突かれるピンチの増加…これらは連鎖しており、短期間で立て直すのは難しいのではないかと思います。過去2シーズンを、62勝8分4敗という圧倒的な強さで駆け抜けたクロップのフットボールが大好きです。何とかCLの出場権だけは確保してくれと祈りながら戦況を見守っているのですが、今までどおりにプレイしているように見えるのは、モー・サラーとロバートソンだけです。残り13試合、強いレッズは戻ってくるのでしょうか。週末のプレミアリーグ26節で最下位シェフィールド・ユナイテッドに勝って、浮上の糸口をつかんでもらえればと願うのみです。