大論争!「マンチェスター・ユナイテッドはロングボール放り込みのチームなのか」【前篇】
「この件について、ファン・ハールは弁解する必要はない。選手にはインテリジェンスがあり、賢いチームは、自分たちのストロングポイントを活かして相手の隙につけ込もうとするものだ。ファン・ハールは選手に長いボールを蹴れとは指示していないだろう。それでも最終ラインの選手は“フェライニに蹴れば、ファン・ペルシかルーニーがゴールを決めてくれる”と考える。これは自然なことだ。(アーセナルでも)ジルーがいれば、他の選手はロングボールやクロスを増やそうと狙う。そして実際にジルーが競り勝てば、セカンドボールを手に入れることができる。残り5分でリードされている局面では、普段のようなショートパスでの崩しを選ばないことがある。マンチェスター・ユナイテッドはウェストハム戦でロングボールが多かったが、それは同点に追いつこうとしたまでで、納得がいく」(アーセン・ヴェンゲル監督)
この論争は、2つの話が混在していますね。「リードされているシーンにおいて、スクランブルで放り込みに走ることの是非」と、「マンチェスター・ユナイテッドのサッカーの質について」。元々のアラダイス監督のコメントは前者のお話で、それも多分にエモーショナル。崩されたわけではないのに、勝てなかった苛立ちを表現したにすぎません。サッカーにはビハインドを背負うシーンがしばしばあり、ときとして放り込みがはまってしまうことは、昨季までは自らが「ロングボール・(ウェストハム)ユナイテッド」だったアラダイス監督こそがよくわかっているでしょう。昨季プレミアリーグ王者で、優勝候補のマンチェスター・シティですら、アーセナル戦で2点リードを奪われると、ジェコを投入した終盤はロングボールを入れてきました。これに対して、ガナーズの選手やサポーターの多くは、「放り込んでくれて助かった」ではなく、「嫌なことをしてくるな」と思ったのではないでしょうか。ヴェンゲル監督は、「ロングクロスの多用が功を奏すシーンもあるのだから、ファン・ハールは過敏に反応しなきゃいいんだよ」といっています。話を混線させた真犯人は、「ああいう時間帯もあるさ」と流せばよかったところを、「うちはそんなチームじゃない」と大きくしてしまったファン・ハール監督自身でしょう。
一度話が膨らむと、食いつきたくなるのがわれわれプレミアリーグファンやマスコミです。後者の話は、夏に大型補強をかけたマンチェスター・ユナイテッドが未だにフラフラしているのをみて、あれこれいいたい議論好きな人々にとっては、なかなかのごちそうです。このテーマについて、「ファン・ハールが放り込み戦術に頼っているという非難は的外れ」という論陣を張る、イギリス紙「インデペンデント」の解説に耳を傾けてみましょう。
彼らが並べているのは、以下の数字です。「マンチェスター・ユナイテッドはそもそもパスの数が多く、1万2719本はマンチェスター・シティに次ぐ2位」「パスの長さを平均すると、チェルシーやリヴァプールと並ぶ19メートル台。最もショートパスを多用するアーセナル、マンチェスター・シティの17メートル台、これに次ぐスウォンジー、トッテナムの18メートル台に次ぐ水準」「マンチェスター・ユナイテッドのボールポゼッションは、今シーズンのプレミアリーグでトップの56%。パス成功率はマンチェスター・シティに続く85%である」。これらをベースに、イギリスの高級紙は、マンチェスター・ユナイテッドはパスを多くつなぐチームであり、遠くから放り込んでいるばかりではない、といっています。分母であるパス本数が多いので、それにつれてロングボールの本数も増えているだけ。比率としては高くない、という理屈ですね。なるほど。
長くなりそうですので、次稿に続きます。「大論争!『マンチェスター・ユナイテッドはロングボール放り込みのチームなのか』【後篇】」にて、私の見解を述べさせていただければと思います。
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