偏愛的プレミアリーグ見聞録

先日のプレミアリーグ30節、マンチェスター・ユナイテッド戦の後半、入って1分も経たないうちにピッチを去った、あの驚きの退場劇がなければもっと無邪気に楽しめた話題なのですが…。「このタイミングで」といういささかの間の悪さを感じつつも、気持ちを切り替えて盛り上がることにしましょう。過去にさまざまな形で催されてきた「引退試合」「サヨナラ試合」のなかでも、この企画はエンターテインメントとして秀逸だと思います。

3月29日に行われる「リヴァプール・チャリティーオールスターマッチ」。リヴァプール一筋でプレミアリーグ出場703試合を記録したスティーブン・ジェラードを称えるスペシャルマッチなのですが、ジェラード自ら出場を依頼したオールスター軍団「チーム・ジェラード」が、錚々たるメンバーが揃った敵チームと戦うという趣向。相手役、いわば「悪役」に選ばれたのは、プレミアリーグ出場737試合とジェラードの上をいくジェイミー・キャラガー。ひと足先にレッズを離れたレジェンドは、辛口の評論家としてならしており、先日のジェラード退場についても、イギリスメディア「スカイスポーツ」でコメント。心情に理解を示しつつも、激情にまかせた愚かな行為と批判していました。

「ジェラードは愚かだったと思う。彼ほどの選手なら、こういう試合でどんな感情になるか、経験からわかっているはずだ。あれは狂気の瞬間だった。ベンチスタートとなり、彼は落胆していたのだろう。リヴァプールはいいサッカーをしていなかったし、負けていた。彼は仲間たちとゲームを見て、『なぜ自分はプレイしていないんだ？　なぜピッチにいない？』と思っていたはずだ。…一発レッドに議論の余地はない。サッカーのピッチでああいうことをしてはいけない。退場は正しかった」

いいたいことは遠慮なくいい合いながら、お互いの力をリスペクトし合ってきたジェラードとキャラガーが、それぞれメンバーを選んで出場依頼した「チーム・ジェラード」「チーム・キャラガー」のフォーメーションは以下の通り。リヴァプールファンにとっては、相当盛り上がる顔ぶれですね。「スアレスとフェルナンド・トーレスの元エース・夢の競演」「リーセVSベラミー、キャラガーVSアルベロアの”チームメート時代に大ゲンカ”コンビが再会」「アンフィールドにカイト、シャビ・アロンソが戻ってくる」「ついでに対決！テリー＆ドログバ」と見どころ満載です。

【チーム・ジェラード】
GK/ブラッドリー・ジョーンズ
DF/ジョン・テリー、ヨン・アルネ・リーセ、スティーヴン・ウォーノック、
MF/シャビ・アロンソ、スティーヴン・ジェラード、ケヴィン・ノーラン
FW/ライアン・バベル、ルイス・スアレス、フェルナンド・トーレス、ティエリ・アンリ
監督/ブレンダン・ロジャーズ

【チーム・キャラガー】
GK/ペペ・レイナ
DF/ジェイミー・キャラガー、アルバロ・アルベロア、マーティン・ケリー
MF/ラウル・メイレレス、ジョンジョ・シェルヴィ、ルイス・ガルシア、クレイグ・ヌーン
FW/ディディエ・ドログバ、ディルク・カイト、クレイグ・ベラミー
監督/ロイ・エヴァンス

ところどころ、不思議な名前を見かけますが、それぞれにリヴァプールやジェラードに縁がある方々のようです。ウェストハムMFのケヴィン・ノーランは、リヴァプールで生まれ育ったバリバリのレッズサポーター。カーディフMFのヌーンは、アマチュア時代に屋根の修理職人としてジェラード家の屋根を直したご縁があるとのこと。テリーは、イングランド代表つながりでジェラードが直接声をかけ、ドログバは「そっちがテリーなら」というキャラガーのいたずらでしょう。アンリさんは、スカイスポーツつながりでキャラガーさんがポロッとしゃべったのではないでしょうか。スアレスは、この試合のためにウルグアイ代表の召集を辞退したとのこと。マジすか⁉

これは、おもしろいですね。引退試合、チャリティーマッチなどと銘打たれた試合にありがちなのは、主催者が有名な順に声をかけたであろう、華はあるけど何でこのメンツなのかよくわからない試合。そんななかで、ここまでコンセプチュアルな試合はなかなかないでしょう。「リヴァプール・チャリティーオールスターマッチ」は、3月29日22時30分より、JSports2で生放送されます。レッズサポーター、ジェラードファンはもちろん、チェルシーサポーターもアンリを久しぶりに観たい方も、ぜひご観戦ください！