偏愛的プレミアリーグ見聞録

プレミアリーグの開幕戦は、クリスタル・パレスとのアウェイゲームで0-2完勝。1年前の悪夢を振り払ったアーセナルは、退団したカスパー・シュマイケルのポジションしか補強できていないレスターをエミレーツに迎えています。

アルテタ監督の11人は、初戦と同じ顔ぶれです。GKラムズデール、DFベン・ホワイト、ウィリアム・サリバ、ガブリエウ・マガリャンイス、ジンチェンコ。中盤センターはトーマス・パーティーとジャカ、2列めにサカ、ウーデゴーア、マルティネッリ、最前線はガブリエウ・ジェズスです。キックオフから攻めるアーセナル。2分にウーデゴーアが左に出したラストパスはおもしろいボールでしたが、3人のアタッカ―とタイミングが合いません。

最初の決定機は、4分のレスター。フォファナが敵陣でジャカから奪い、ヴァーディーとワンツーをかわすと、サリバをかわして一気にゴール前に飛び出しました。左足のフィニッシュは、動かなかったラムズデールがセーブ。7分にトーマスが前線に送ったスルーパスは秀逸でしたが、ボールを追ったジャカの前でGKウォードが懐に収めました。

10分の左からのFKは、マルティネッリがニアに入れた速いボールをジェズスがヘッド。ボールは惜しくもニアに外れ、エミレーツはどよめきに包まれます。19分、ウーデゴーアのパスを右でもらったサカが、ファーに絶妙なクロス。走り込んだジャカのヘディングはポストを叩き、こぼれ球に反応したジンチェンコはダイレクトショットを浮かしてしまいました。

アーセナルの先制ゴールは23分。左サイドにいたジェズスがボックスに入ったマルティネッリに預け、11番が中央に転がしたボールをジャカがダイレクトで9番に戻します。新エースの今季プレミアリーグ初ゴールは、誰も予想できなかったノーステップのループシュート！素晴らしいフィニッシュだけでなく、ジャカの攻め上がりにも拍手を送りたいゴールシーンでした。

ガナーズの前線は、昨シーズンよりプレスの質が格段に上がっています。ジェズスがサイドに追い込んでくれるので、2列めは迷いなくプッシュ。速いアタックがないレスターは、ジャスティンのオーバーラップ頼みになっています。35分、左のCKのキッカーはマルティネッリ。ニアでヴァーディーが逸らしたボールがファーのジェズスに届き、ゴール前1メートルからのイージーなヘッドがネットを揺らしました。

さらに37分、ラムズデールのパントをジェズスが足元に収め、巧みな反転でジョニー・エヴァンスを抜き去ると、前にはGKだけ。ハットトリックかと思いきや、必死に戻ったエンディディがクリアし、レスターは希望をつなぎます。40分には、ジンチェンコが敵陣で奪ってウーデゴーア、ジェズスとつながり、マルティネッリとのワンツーで9番がウォードと1対1。決定的なシーンでしたが、素早いダッシュでコースを切ったGKをほめるべきでしょう。

この直後、ロングフィードを追ったヴァーディーが、飛び出したラムズデールの前で転倒。PKのジャッジは、接触を回避するべくブレーキをかけたGKの映像によって取り消されました。前半は2-0。後半もアーセナルのプレスはスムーズで、レスターの最終ラインは長いボールを蹴らされています。

53分、ジョニー・エヴァンスのロングフィードをジャスティンが頭で中央に送ると、GKに戻そうとしたウィリアム・サリバのヘッドがゴールに飛び込んでしまいました。しかし2分後、ベン・ホワイトのクロスをウォードが捕れず、右手に当てたボールがジェズスの足元にこぼれてしまいます。9番は冷静に脇に転がし、当たり前のようにボックスに入っていたジャカが無人のゴールに押し込みました。

3-1となった56分、アマーティーと対峙したジェズスがかわした瞬間に転倒したシーンは、18番の足がしっかりかかっていました。エミレーツのグーナーたちは、もちろんブーイング。ホームチームは、悠々とゲームをコントロールしています。

70分、ジェームズ・マディソンのアーリークロスがヴァーディーと代わったばかりのイヘアナチョへ。レフティがタッチしたボールが外に流れると、パトソン・ダカのシュートはベン・ホワイトがブロックし、こぼれ球はサリバが大きくクリアしました。レスターの2点めは74分。イヘアナチョに縦パスを入れたジェームズ・マディソンが追い抜いてリターンをもらい、ボックス右から強引に打ってラムズデールの股間を抜きました。

アルテタ監督は、ここでベン・ホワイトを冨安健洋。75分の4点めは、敵陣で奪ったマルティネッリのお手柄です。右にいたウーデゴーアがジェズスに縦パス。カットインしたストライカーが左から上がったマルティネッリにラストパスを通すと、左足の強烈な一撃が右のサイドネットに突き刺さりました。

アルテタ監督の2枚めは、77分にジンチェンコをティアニー。80分に冨安のスローインをマルティネッリが胸で落とし、サカが左足を振り抜くと、ウォードが右に弾き出しました。カスターニュにヒットしたボールが外に流れ、ジェズスの前にこぼれますが、左足のボレーはニアポストの外。ハットトリックのチャンスを逃した9番は、サカとともに84分でお役御免となり、エンケティアとスミス・ロウに後を譲っています。

85分のCKは、競り合いからトーマスの足元へ。巧みにコントロールしたセントラルMFのボレーは、左のポストにヒットしました。90分に左から突破を図ったエンケティアのシュートは、ウォードがセーブ。レスターのオンターゲットを2本に抑えたガナーズは、望み通りの連勝スタートです。

ガブリエウ・ジェズス、圧巻の2ゴール2アシスト！10年前からいたような冷静なストライカーは、自ら狙うだけでなく、的確なパスでマルティネッリのよさを引き出しています。チャンスとなると、常にゴール前に入ってくるジャカも1ゴール1アシスト。ファインゴールを決めた11番と、パス成功率91%のキャプテンも素晴らしい出来だったと思います。

ジャカの攻め上がりを支えているのは、パス成功率96%＆デュエル全勝のジンチェンコと、高いポジショニングでスペースを埋めるガブリエウです。タメを創れるウインガーとSBがいる左サイドは、ライバルたちの脅威となるのではないでしょうか。冨安健洋とスミス・ロウの復帰も、ホーム初戦の収穫です。さらにファビオ・ヴィエイラが合流すれば、プレミアリーグとヨーロッパリーグを戦い抜く体制が整います。

ボーンマス、フラム、ヴィラ、マンチェスター・ユナイテッド、エヴァートン、ブレントフォードなら、9節のノースロンドンダービーまで無敗で駆け抜けてしまうかもしれません。ウィリアム・サリバ、ジンチェンコ、ガブリエウ・ジェズス…この夏のニューフェイスには、昨年以上の大成功となる予感が漂っています。