偏愛的プレミアリーグ見聞録

「驚いてはいない。マンチェスター・シティのミッシングリンク（生物学的に失われた連続性）とまではいわないけど、彼らが改善できるポジションであり、われわれ全員にとっていいニュースではなかった。実際に改善するのは難しい。しかし彼らはやり遂げた」

「ハーランドは、ずっとヴィィルジル・ファン・ダイクとともにいるわけではなく、別なCBのほうにもいくだろう。むしろ彼はそれを狙うはずだ。ピッチにハーランドしかいなくても、ディフェンスをしなければならない。そのぐらい素晴らしい選手だ」

「しかも、彼の周りには優れた選手たちがいる。ハーランドだけをマークして、マンチェスター・シティの他の選手を好きにさせるわけにはいかない。そんなことをしたら、われわれはダメになる」

ユルゲン・クロップ監督は、プレミアリーグ9戦15ゴール3アシストと猛威を振るうモンスターについて、「ファン・ダイクが彼を抑えたとしても、それは仕事の始まりにすぎない」と語っています。プレミアリーグ11節、リヴァプールVSマンチェスター・シティの最大の興味は、「ホームチームがアーリング・ブラウト・ハーランドと仲間たちを止められるか」でしょう。

開幕前の大方の予想が妥当であれば、この試合は例年通りの2強対決となるはずだったのですが、半年前に4冠をめざしていたクロップのチームは、ボトム10という信じられないポジションに甘んじています。

1年前のマン・シティは、最初の9試合で20ゴール。しかしハーランドが加わった今季は、33ゴールという驚異的な数字を残しています。ガブリエウ・ジェズスとスターリングを手離したのに、主力の得点力は落ちておらず、ハーランドのゴールラッシュがそのまま乗っかった計算になります。

一方のリヴァプールは、8試合で6失点だった守備が12失点と倍増。20ゴールはリーグ3位ですが、ボーンマス戦の9ゴールという確変を外せば、7戦11発という微妙な数字です。2021-22シーズンは10戦10発という好調スタートだったモー・サラーは、8戦2発3アシストで自己ワースト。ハーランドと得点王を争うと期待されたダルウィン・ヌニェスは、5戦2発に留まっています。

聖地アンフィールドの一戦は、どんな展開になるのでしょうか。マンチェスターダービーで大爆発したハーランドの3ゴール2アシストを見ると、やられたマーカーはマクトミネイ、ヴァラン、ダロト、リサンドロ・マルティネス、カゼミーロとかぶりがありません。

「攻撃は最良の防御であるという信念は揺るがない」。プレスカンファレンスで、いつものスタイルを貫くと明言したクロップ監督には、特定のマーカーをモンスターに着けるという発想はないでしょう。彼らの最初の目標は、プレミアリーグの8試合中6試合で先制ゴール献上という悪癖を封印することです。

ポイントとなるのは、ファン・ダイクとハーランドのデュエルよりも、ファン・ダイクが仕切るラインの高さでしょう。勇敢なハイラインでプレスの強度を高めるのか、ずるずる引いて中盤に広大なスペースを空けるのか。指揮官は「引いて誘い込む」という戦い方を否定しており、最初の15分の興味は2人のCBのポジションです。

既に9アシストのデブライネには、若いファビオ・カルヴァーリョではなく、守備に長けたチアゴ・アルカンタラをぶつけるはずです。プレーメイカーへのパスコースを遮断し、ショートカウンターでゴール前に殺到するシーンを作れれば、手負いのチームに勝機が生まれます。

激戦エリアは、右か左か。ジョー・ゴメスとヘンダーソンのサイドより、デブライネがいるほうが攻防のキーポイントとなるような気がします。決定的なクロスを入れさせなければ、レッズ優勢。ファン・ダイクがサイドに釣り出されれば、マンチェスターダービーで見た戦慄のラッシュが再現される可能性が高まります。

過去4試合は、リヴァプールの2勝2分。アンフィールドのサポーターが歓喜する結果となれば、ペップを相手に5試合連続無敗を達成した最初のチームという栄誉が付いてきます。ハーランド、デブライネ、フォーデンの連合軍の圧勝か、オランダ代表のキャプテンが統率する4バックが意地を見せるか。スタッツに忠実に予想すれば、「リヴァプール1-4マンチェスター・シティ」ですが…。（ヴィルジル・ファン・ダイク　写真著作者/kyivcity.gov.ua）