偏愛的プレミアリーグ見聞録

ツィミカスのCKをダルウィン・ヌニェスがヘッドで叩き、ゴールラインの外にこぼれたボールをサラーが押し込んだのは85分。均衡を崩したエースを後ろからハグしたファン・ダイクも、駆け寄ったファビーニョやフィルミーノも、もう2点獲ってグループ首位をめざそうとは思っていないようでした。

スタディオ・ディエゴ・アルマンド・マラドーナでの初戦は、前半に3発をゲットしたナポリが4-1で圧勝。5連勝で最終節を迎えたセリエAのチームとの直接対決は、勝てば5勝1敗で並び、3-0か4点差以上なら首位が入れ替わる一戦でした。残り5分でリードしたホームチームは、7分の追加タイムの終わりにもCKを獲得。ドリブルをカットされたサラーは、勝利を確信した晴れやかな笑みを浮かべていました。

キッカーはツィミカス。先制ゴールと似たコースのボールに競り勝ったのは、ファン・ダイクです。GKメレトがヘディングシュートを弾くと、ゴール前に詰めたダルウィン・ヌニェスがプッシュしました。オフサイドのジャッジは、VARに覆され2-0。レッズは1点足りず、グループAの2位通過が決まりました。

追い詰められていた彼らの目標は、ただひたすら勝利だったのかもしれません。5分にサラーの絶妙なスルーパスをもらったカーティス・ジョーンズは、飛び出したメレトの上を抜く浮き球を枠に収められず。29分には、チアゴ・アルカンタラの素晴らしいロングフィードでサラーが右サイドを突破します。ボックス手前に走り込んでリターンをもらったチアゴは、右足のコントロールショットをGKのビッグセーブに阻まれました。

その1分後、アーノルドのクロスがクワラツヘリアに当たり、ゴールライン際で追いついたフィルミーノがヒールで中央へ。先着したカーティス・ジョーンズは、プレッシャーがなかったヘディングを浮かしてしまいました。9番と2トップだったサラーは、前半のシュートはゼロ。ツィミカスのクロスのクリアのこぼれ球を叩いた51分のハーフボレーは、枠を越えていきました。

クロップ監督がフィルミーノをダルウィン・ヌニェスに代えたのは、70分を過ぎてからです。なかなかシュートチャンスを得られなかったストライカーは、最終盤の2回のセットピースで求められていた仕事を成し遂げました。

プレミアリーグのリーズ戦を落としていた彼らは、アンフィールドで連敗という悪夢を払いのけたかったのでしょう。85分のサラーのシュートをキャッチしたメレトが、ゴールラインを越えているのを確認したとき、エースに駆け寄った面々のなかにあったのは喜びよりも安堵だったのかもしれません。

直近のプレミアリーグ5試合は2勝3敗、しかしチャンピオンズリーグは5連勝。クロップ監督と選手たちにとって、敵地で戦うトッテナム戦は、今日のゲーム以上に3ポイントがほしいゲームなのではないでしょうか。

「繰り返しになるけど、一貫性と安定が必要だ。今夜のゲームから、正しい結論を導き出す。次のゲームが、別な理由でまったく違うゲームになるとしてもね。この試合からいいものを取り出して、次のトッテナム戦に臨みたいと思う」

スパーズ戦につながるゲームだったと振り返ったクロップ監督は、「後悔はないか」と問われ、こう返しています。

「3点め、4点めを獲りにいかなかった今夜のゲームに、何も後悔はない。そうじゃないんだ。ナポリとひどいゲームをしたので、このグループリーグは最悪のスタートだった。われわれのパフォーマンスがナポリを助けてしまったのかもしれない。彼らは自信を手に入れ、イタリアのリーグで今、力を発揮している」

「私が正しければ、ナポリとのグループリーグ最終戦は3回めだ。いつも状況が違っており、勝ち点が必要だったり、勝たなければならなかったり、とにかくいろいろあった。2回ともよくやった。今夜もうまくいった。ナポリはグループの1位にふさわしい。後悔はしていない」