偏愛的プレミアリーグ見聞録

マウリシオ・ポチェッティーノはチェルシーと基本合意と報じられ、ユリアン・ナーゲルスマンがロンドンに赴く可能性はゼロといわれています。プレミアリーグのTOP4争いから脱落し、ヨーロッパリーグの出場権獲得も危うくなっているトッテナムは、どんな体制で来季を迎えるのでしょうか。

新たな指揮官との交渉は進んでいないと伝えられていたスパーズは、ファビオ・パラディチの後釜となるフットボールディレクターも押さえなければなりません。「ガーディアン」に寄稿したファブリツィオ・ロマーノさんは、「ナーゲルスマンが難色を示した理由のひとつは、FDの不在だった」と明言しています。

こちらの候補は、3月にレヴァークーゼンを退団したティム・シュタイテンと、ローマのチアゴ・ピント。移籍市場の動向を知るジャーナリストが「獲得するにはコストがかかる」といっていたブレントフォードのリー・ダイクスTDには、既に候補から除外されたという報道があります。いずれにしても、まずはFDで、新たな責任者とともに指揮官を選ぶというプロセスになるようです。

とはいえ、新しいマネージャーのリストアップが完全にストップしているわけではありません。「スカイスポーツ」「フットボールロンドン」「イブニング・スタンダード」など複数メディアが、「次期監督の最有力候補はフェイエノールトのアルネ・スロット」と伝えています。

ズヴォレ、NACブレダ、スパルタで活躍したオランダ人のMFは、引退してすぐにズヴォレのユースチームのコーチとして指導者のキャリアをスタート。1年後にカンブールのアシスタントコーチに就任し、トップチームのマネジメントを担当しました。

2017年からは、AZアルクマールのアシスタントコーチ。監督に昇格した2019年は、コロナ禍によってエールディヴィジが中止となったシーズンでしたが、アヤックスに次ぐ2位というポジションは彼の評価を高めています。2020年12月の解任理由は、フェイエノールトと交渉をしていたのがバレたから。その後、ロッテルダムで指揮を執るのは2021-22シーズンからと発表されました。

最初のシーズンは、リーグでは3位ながらヨーロッパカンファレンスリーグで準優勝。2022-23シーズンは、3月にアヤックスとPSVを突き放し、6年ぶりのリーグ制覇を達成しました。トッテナムの次期監督候補と報じられるようになってから、フェイエノールトはサラリーを倍増させる新契約を用意しているようですが、未だ締結には至っていません。

「スカイスポーツ」「フットボールインサイダー」などが獲得の可能性は充分とレポートしているのは、ご本人が次のステップについて言及しているからでしょう。

「すべての監督が、チャレンジ精神と野心の両方を持っている。私はAZからフェイエノールトに移ることで、それを証明した。2年前、みんなにいわれた。『あんなにいい体制のクラブから、厳しい時期にあっちにいくなんて、どうするつもりだ？』とね。

「それこそがチャレンジだった。そんななかで、自分たちのことをオランダのチャンピオンといえるのは光栄だね。次のステップは、オランダの別のクラブではない。もしそうなら、今後数年で完全に失敗したということになる」

「世界最高のリーグはプレミアリーグだといい続けてきた。イタリアについていえば、今はヨーロッパのファイナルでプレイしているクラブがいくつかあるね。将来的な行き先として、おもしろそうな国はいろいろあるけど、プレミアリーグが世界最大であることは明らかだ」

イングランドには、ひと足先にチャレンジを選択したエリック・テン・ハフがいます。アヤックスを率いてエールディヴィジ優勝3回、チャンピオンズリーグ4強進出という実績はあちらが上ですが、スロット監督は9つ年下の44歳。マンチェスター・ユナイテッドに招かれた指揮官が最初のビッグタイトルに辿り着いたのは、49歳になってからです。

強いプレッシングとハイライン、SBとCBの間を突くスピーディーなアタックは、ペップやアルテタ、デ・ゼルビのグループ。プレミアリーグでも、目の肥えたファンを納得させられるのではないでしょうか。フェイエノールトが守り切るのか、スパーズが攻め落とすのか。イギリスのメディアは、プレミアリーグのクラブの勝利にベットしているようですが…！