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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

アイデアも運も実力も。マンチェスター・シティをトレブルに導いた3つの幸運と3人のキーマン!

「BBC」のフットボールカテゴリーが、水色に染まっています。TOPニュースの14枠のうち、マンチェスター・シティのトレブルに関する記事が11枠。1998-99シーズンのマンチェスター・ユナイテッド以来、24年ぶり2チームめの快挙は、多くのプレミアリーグファンのテンションを上げているようです。

2008-09シーズンにバルセロナでタイトルを独占したペップ・グアルディオラは、異なる国で3冠を達成した史上初の監督となりました。さらにもうひとり、歴史に名を刻んだ男がいます。フリアン・アルバレスにとって、2022年にワールドカップが開催されたのは幸運でした。

同一シーズンに国内リーグ、国内カップ、チャンピオンズリーグ、ワールドカップを制した選手は、これまでひとりもいませんでした。プレミアリーグの先発は13試合に留まったものの、公式戦49試合17ゴール5アシスト。ワールドカップカタール大会では7試合すべてでピッチに立ち、4ゴール1アシストで優勝に貢献しています。

さて、ここからは、今季の彼らの足跡を振り返ってみたいと思います。公式戦44勝10分6敗。敗れた相手はリヴァプール、ブレントフォード、サウサンプトン、マンチェスター・ユナイテッド、トッテナムです。トレブルのチームにダブルを喰らわせたブレントフォードが、世界最強となるわけですが、それはさておき。リーグ制覇への道のりは、順風満帆とはいえませんでした。

プレミアリーグ28勝5分5敗は勝率73.7%で、ペップの優勝5回のうち、下から2番めです。4月までに首位に立ったのはわずか8日。296日のシーズンのうち42日は、2013-14のマン・シティ(15日)、2002-03のマン・ユナイテッド(31日)に次ぐ少ない日数です。ラスト9試合を3勝3分3敗と崩れたアーセナルを、怒涛の12連勝で何とか差し切った苦しいシーズンでした。

優勝のキーポイントとなったのは、1月のフォーメーション変更です。守備が不安定だった4-3-3を諦め、SBをロドリの脇に引き上げる3-2-4-1にスイッチ。前半戦を20失点で終えたチームは、後半戦に入ってからは1試合2失点がひとつもなく、プレミアリーグ19戦13失点、公式戦トータルで36試合17失点という堅守のチームに生まれ変わりました。

戦術を自在に操るペップの底力に敬意を表しつつも、トレブル達成において3つの幸運があったことも見逃せません。最大のポイントは、負傷者が少なかったこと。マネジメントやメディカルチームのクオリティがいくら高くても、試合中のトラブルは避けられません。リヴァプールやチェルシーが野戦病院と化したなかで、マン・シティは長期離脱がひとりも出ませんでした。

負傷が長引いたのは、膝を痛めて初出場が10月になったラポルテ、肩をやって2ヵ月離脱したカルヴァン・フィリップス、ハムストリングを2回痛めて公式戦12試合を飛ばしたジョン・ストーンズぐらいです。ハーランド、デブライネ、ロドリ、エデルソンをはじめ主力を欠く試合が少なく、不振に陥る季節がなかったため、サリバを失って崩れたチームをかわせたという面があります。

2つめの幸運は、国内カップのクジ運です。FAカップとカラバオカップの9試合のうち、7試合がホームゲーム。FAカップの唯一の敵地はチャンピオンシップで中位のブリストルで、カラバオカップのアウェイはセインツにあっさり敗れています。忙しい3月と4月にカップ戦で当たったのが、バーンリーとシェフィールド・ユナイテッドだったのも幸運でした。

3つめは、プレミアリーグで最多のPK9発。これをいうと「あれだけ攻めたからではないか」と返されそうですが、実はペップがリーグ最多となったのは、3位に終わった初年度以来です。ライバルのアーセナルは3つしかなく、いくつかの誤審にも泣かされました。きわどい争いのなかで、勝負を左右するようなレフェリーのミスをさほど喰らわなかったのも、幸運といえるでしょう。

これらのラッキーは、トレブルという偉業の価値を落とすものではありません。フットボールの世界は、無数の運・不運が折り重なって勝負が決まっていくものです。無敗で終えたCLでは、ポルト、ベンフィカ、ミランを引いたインテルのほうがクジ運がありました。圧倒的な力で相手をねじ伏せつつ、時には運が味方して辿り着くのが優勝という栄誉なのだと思います。

シティズンのみなさんは、トレブルのキーマンといわれたら、誰を思い浮かべるでしょうか。52試合52ゴールのハーランドは別世界の住人ということでスルーし、3人を選んでみました。ひとりめは、3-2-4-1に欠かせない存在となったジョン・ストーンズ。偽SBというより、「サイドから攻められたら、当たり前のように対応するセントラルMF」といったほうがしっくりきます。

チームの6敗のうち彼がいたのは、追加タイムの決勝ゴールで1-2で競り負けた最強ブレントフォードとのホームゲームだけです。ちなみにナタン・アケは、この試合以外のすべての敗戦で出場しています(彼のせいといいたいわけではありません)。

2人めは、年明けから4ゴール9アシストのジャック・グリーリッシュ。2年めのドリブラーがフィット感を高めたのは、ジョアン・カンセロが去ってナタン・アケが後方をカバーしてくれるようになってからでした(とフォロー)。1試合あたりの被ファール数2.8は、ザハに次ぐリーグ2位。CLでは今ひとつでしたが、プレミアリーグとFAカップ制覇のキーマンといえるでしょう。

最後のひとりは、ケヴィン・デブライネ。公式戦49試合10ゴール31アシストなら当然といわれそうですが、ここで推したい理由は「ダブル達成のアーセナル戦で3ゴール2アシスト」です。2月のエミレーツで敗れていたら、独走を許していたかもしれません。冨安健洋のバックパスミスを突いた先制ゴールは値千金でした。

というわけで、マン・シティの3冠と3つの幸運、3人のキーマンを振り返ってみました。マンチェスター・ユナイテッドのサポーターとしては、唯一のトレブルという誇りを抱きしめていたかったのですが、自力で阻止できるFAカップで敗れた瞬間、すっきりしました。

「BBC」の記者たちは、115件の財務規則違反を巡る次なるハードな戦いに触れつつ、「フットボールという観点で、素晴らしいチームであることは間違いない」「マン・シティのファンにとって重要な数字は、チーム史上最も成功したシーズンを物語るものだけである」と、ピッチの上での輝きを称えています。

訴訟の結果がどうなろうと、最高の軌跡を描いたペップと選手たちに対する敬意は、忘れないでいようと思います。あらためて、トレブル達成おめでとうございます。


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“アイデアも運も実力も。マンチェスター・シティをトレブルに導いた3つの幸運と3人のキーマン!” への2件のフィードバック

  1. アイク より:

    更新ありがとうございます。
    スマホ越しによく唸らされてますが、今回は特に意義深い、珠玉のような記事に感じました。フットボールの魅力も歴史も詰まっていて、本当に面白いです。

    偉大なチームに相応わしいトロフィー。シティもペップも報われて本当に良かったです。
    そして自動的に伝説化していくブレントフォード笑

  2. ペップの街 より:

    KDBの負傷交代で悪夢の再来かと恐怖に陥りましたが2年前とは別の、レヴェルアップした落ち着いたプレーで遂にCL戴冠!私にとって最高の1年でした。ペップ信者の私としては全てを手中にしたペップの新たな船出を願うものです。まあ、あと1〜2年はペップが育てて熟成したマンシティの芳醇なフットボールを楽しむのもありですが。

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