偏愛的プレミアリーグ見聞録

アーセナルにとって、デクラン・ライスとモイセス・カイセドをダブルで獲り逃すという着地は、悪夢以外の何物でもありません。ましてやカイ・ハヴェルツのためにビッグマネーを用意している間にさらわれたとなれば、悲劇を通り越してコメディです。

スミス・ロウやファビオ・ヴィエイラがいるポジションの競争が激化し、ジャカの後釜がいないなどという事態に陥ったら、グーナーから一斉にブーイングを喰らうでしょう。しかし今、その考えたくない未来が現実のものとなりつつあります。「テレグラフ」はトップニュース。マンチェスター・シティがウェストハムにオファーすると報じられています。

アーセナルの2度めのオファーは、移籍金7500万ポンド（約137億円）とアドオン1500万ポンド。これに対して、ハマーズは3つの不満があるといわれています。ひとつは総額。デヴィッド・サリバン会長は1億ポンドを譲る気はなく、ライバルの登場はウェルカムです。2つめはアドオンの中身で、プレミアリーグ制覇という高いハードルが含まれていることに難色を示したようです。

3つめは、5年分割という支払い方法。デクラン・ライスを1億ポンドと評価しているマン・シティは、アーセナルが断られたポイントをすべてクリアしてくるはずです。ベースの移籍金を引き上げられ、2回の分割と魅力あるアドオンという好条件を付けられたら、プレミアリーグで2位に終わったクラブは、その上をいくオファーを強いられます。

アルテタ監督とエドゥSDにとってショックだったのは、デクラン・ライスがマン・シティ移籍を容認したことでしょう。彼らは依然として相思相愛といわれていますが、バイエルンを拒否したイングランド代表は、プレミアリーグのクラブならハマーズのジャッジを尊重する意向を示したのではないでしょうか。

本人に拒否されれば、トレブルを達成したクラブといえども交渉のテーブルを設定できません。勝算があるからこそ、横槍を入れてきたはずです。「ESPN」は、アーセナルの最大の脅威を指摘しています。「デヴィッド・モイーズはカルヴァン・フィリップスのファンである」。ノースロンドンには、イングランド代表同士のスワップに対抗できるカードはなさそうです。

マグワイアかマクトミネイを付けようとしていると報じられたマンチェスター・ユナイテッドを封じることはできても、タイトルに最も近いチームを振り切るのは容易ではありません。アーセナルにとって、次のオファーはラストチャンスになる可能性があります。プレミアリーグでダブルを喰らい、FAカップでも敗れた相手に、最も痛い敗戦を喫するわけにはいかないでしょう。

きわどいポール・トゥ・ウィンか、冬のムドリクに続く逆転負けか。マン・シティは、自らの評価額を上回ったアレクシス・サンチェスやキリアン・ムバッペからはあっさり撤退しています。「カイ・ハヴェルツは週末にメディカルチェック」…いやいや、そっちよりもこっちでしょう。アーセナルのネクストアクションに注目しましょう。