あなたを失うのは、僕らもつらい…さよなら、ロシツキ!
ガナーズに加わって1年半が過ぎた頃、ロシツキは不幸なアクシデントに見舞われます。2008年1月のFAカップ、ニューカッスル戦。3月には復帰するといわれていたハムストリングの負傷は、結局2度の手術と長いリハビリが必要となってしまい、27~28歳というサッカー選手にとってピークを迎える時期に、満足にボールを蹴ることすらできませんでした。当時の私は、1年半もクラブを離れたロシツキを「早晩チームを去る選手だ」とばかり思っていました。今となっては、アーセナルで10シーズンを過ごしたレジェンドと、応援し続けたサポーターに頭を下げなければなりません。公式戦246試合出場、28ゴール。エミレーツ・スタジアムの建設費が財布を圧迫して満足に補強ができず、主力が次々とクラブを離れてしまう苦しい時期にガナーズを支えたロシツキは、「毎年チャンピオンズリーグ出場権をサポーターにプレゼントし続けてくれた選手」といういい方をしても大げさではないでしょう。2010-11シーズンは後半戦を満足に戦えず、2012-13シーズンは半年以上の時間を負傷と戦って過ごしましたが、ここぞというときに素晴らしいチャンスメイクでチームを勝利に導いてくれる選手でした。
グーナーのみなさんは、ロシツキといえば何を思い出すでしょうか。相手を背にしていても簡単に前を向ける素晴らしいターン、走った選手の足元にぴったり吸い付く見事な縦へのスルーパス、ゴールに向かって鋭く曲がって落ちてくる左からの絶品クロス、ボールを奪われた瞬間に全力で戻って仕掛けるスライディングタックル…。私が最初に連想するのは、とにかく前へ、前へ進もうとする選手だったこと。ベストゴールを選べといわれれば、もちろん、あの一発です。2014年3月16日、プレミアリーグ2013-14シーズン第30節、ホワイト・ハート・レーンで行われたノースロンドンダービーの前半2分。チェンバレンの落としを受けた背番号7が、右足のアウトにかけて放った強烈なミドルシュートは、この試合で唯一のゴールでした。
しかし、これが合図だったかのように、ロシツキは緩やかに峠を下っていきます。負傷がちだった昨季は、プレミアリーグ出場15試合。そしてついに今季は出場ゼロ。1月のFAカップ4回戦のバーンリー戦が、最初で最後のロシツキでした。「彼は素晴らしい選手だが、多くの負傷にキャリアを壊されてきた。それはとても困難なことだっただろう。怖れていたほど悪くなかったというニュースが聞けると期待しよう」と語ったヴェンゲル監督の願いむなしく、ロシツキはピッチに立つことなく、最終節のアストン・ヴィラ戦をスタンドで迎えました。78分、エジルのグラウンダーをジルーが決めて2-0。肩を組んでベンチに走ってきたエースとアシスト王は、まっすぐロシツキに駆け寄り髪をくしゃくしゃにしながらゴールを祝福します。試合後は、サブの選手たちが背番号7のユニフォームに袖を通し、青いジャージの35歳とひとりひとり抱擁をかわしました。「トマシュ・ロシツキは特別なフットボーラーであり、ロッカールームでみんなに尊敬されている。われわれは、彼を失う」。シーズン最後の会見で、ヴェンゲル監督が明言しました。
「最後のセレモニーでは、サポーターのみんなが本当に最高だった。10年過ごしたクラブに、さよならをいわなければならないのはすごくつらい。クラブの全員を知っているわけだからね。ここへ来てから、多くのイングランド人選手が僕とともに成長した。ジャックやセオ…そのほとんどは、彼らが16歳の頃から知っている選手だ。彼らの成長に影響を与えられたことを誇りに思う」(トマシュ・ロシツキ)
あなたを失うのは、僕らもつらいです。10年間、おつかれさまでした。ユーロが終わったら、山も谷も人一倍あったサッカー人生にピリオドを打つのでしょうか。それとも、故郷チェコのファンを喜ばせてからスパイクを脱ぐのでしょうか。いずれにしても、プレミアリーグであの素晴らしいプレイを見ることはもうないでしょう。近い将来、コーチとして古巣ガナーズに戻ってきてくれればと願ってやみません。彼のプレイを思い出すたびに、すべてのゲームをともに戦ったヴェンゲル監督のあの言葉が蘇ってきます。
If you love football, you love Rosicky.
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更新ご苦労様です。
プレミアファンの一人としてはリーグから天才が去るのは寂しい事です。ロシツキーは怪我との戦いでしたが、復帰すると存在だけでも脅威があったように思えます。ユーロメンバーには入っているようですが、どのようにエンディングを迎えていくのか興味があります。いつの日かエミレーツに指導者として戻ってくる事を期待してます。最後にヴェンゲルの言葉最高ですね。
毎日の更新ありがとうございます。
ロシツキーの退団は本当に哀しいです、退団の状況は違えどベルカンプ、Aコール、アンリ、アデバヨール、ナスリ、セスク、ファンペルシー、数々の選手が去って行き色々な想いをしてきました。
でも僕は「アーセナル」というクラブが好きなので、来る者は拒まず去る者は追わずの精神で選手への感謝の思いは均等だと自分で思っていましたが、
同い年なので思い入れが強いせいか、ゴール後にハグしていた時の笑顔を見たら泣いてしまいました。
前への推進力とゴール後の片腕くるくる〜大好きだったなぁ
グーナーです。僕が対談のニュースを目にしたときに思ったのは「ごめんよ、プレミアのトロフィーを掲げさせてあげれなくて」でした。いったい誰目線で偉そうに思ってるのか分かりませんが、とにかくそれが悔しくて。誰しもが思ってるように、ロシツキは、この10年のアーセナルの象徴だったんだと思います。美しく、インテリジェンスで、余計なことは口にはせず、プレーで観る者を興奮させる。ただし、ケガが多く、勝ちきれない(本当は言いたくないのですが)。次にプレミアをる時には、どうかエミレーツに彼が来てくれたら(いてくれたら)と心から思います。ああ、それにしても悲しい。。。
記事を読みながら少しだけ泣きました。
さよならロシツキー。。
スパサポですが、記事にありますノースロンドンダービーでのスーパーゴールは今でも鮮明に覚えてます。
ライバルチームの選手ながら、彼のセンス溢れるプレーは大好きでした。
最後のヴェンゲルさんの言葉、凄く心に響きますね。。
更新ご苦労様です。
怪我さえなければ・・・という言葉をロシツキほど強く意識する選手は私の中でいません。
最終戦のあのシーンがロシツキの素晴らしさを何よりも雄弁に語ったと私は思っています。
本当に最高の選手でした。
私はロシツキがユーロで躍動すると思ってますよ。そして全世界にロシツキの凄さを改めて
見せつける・・・そうあって欲しいと心から願っています。
ロシツキーはピッチでは相手チームと戦い、ピッチ外では怪我と闘った歴史に残るタフな戦士でした。
この記事を飾るのが、自分が撮ったロシツキの写真であることを誇りに思います。2015年3月のホームエバートン戦、ケガからの復帰間もないこの日の彼は、途中出場で得点を決め、まだまだ私たちの前で輝いてくれるのだ、とファンに希望を与えてくれました。天才というのは、また「アーセナル的」というのは、まさしく彼のことでした。
自分もMakotoさんと同じくノースロンドンダービーでのロシツキーの強烈なミドルシュートが一番、思い出に残っています。シュート後の彼の姿、本当にかっこ良かったです!
願わくばチェフとのチェココンビでのプレーを観たかったです。出来ればいつか指導者としてプレミアに戻ってきて欲しいです。本当にありがとう、ロシツキー!
Mackiさん>
ヴェンゲルさんの言葉、感動的ですよね。サッカー界のさまざまな名言の中で、いちばん好きな言葉です。
くまさん>
片腕くるくる!思い出しますねぇ。
ひろとさん>
今季、彼がシーズンを通じて元気だったら、プレミアリーグの優勝争いはもっときわどかったかもしれませんね。ドロー3つぐらいは何とかしてくれたのではないか、と思ったりします。いればエジルも楽になりますし。
タカシキーさん>
私もせつないです。人柄も大好きです。
noriさん>
そうなんです。粋な言葉ですよね。
tomoさん>
いい状態で、ユーロに出てきてくれるといいですね。
アイラブユーさん>
プレミアリーグで年間30試合出場がいちどもなく、負傷がちだったのに、出た試合の多くで印象を残しているところが凄いですね。
とくはいんさん>
ありがとうございます。被写体がいいのかカメラマンの腕がいいのか、イカす写真です。
プレミアリーグ大好き!さん>
確かに、チェフと一緒に出ているところは観たかったです。ユーロの勇姿をしっかり観ないといけませんね。