偏愛的プレミアリーグ見聞録

ナサニエル・クライン、デヤン・ロブレン、カラム・チャンバース、ルーク・ショー、モルガン・シュナイデルラン、アダム・ララナ、ジャック・コーク、ジェイソン・パンチュン、リッキー・リー・ランバート。2013-14シーズンにサウサンプトンに所属し、その後プレミアリーグの他クラブに去っていった顔ぶれです。こうして並べてみると、壮観のひとこと。最終ラインは吉田麻也とフォンテを除いた主力全員が離脱。フレイザー・フォースターに押し出されてボーンマスに移籍したGKアルトゥール・ボルツと、フォンテを殴るなどトラブル続きでクラブを追われたパブロ・オズヴァルドまで入れれば、バランスのとれたチームがまるまるひとつ出来上がります。

おっと、大事なひとを忘れていました。マウリシオ・ポチェッティーノ監督もまた、「プレミアリーグのトップクラブに抜かれた重要人物」でした。トッテナムに去った若い指揮官の後を継いで、2014-15シーズンから指揮を執っていたロナルド・クーマン監督は、毎年マイナススタートを強いられるなかで、よくぞ2年連続でヨーロッパリーグ出場権を獲得したと思います。しかし…。昨季はプレミアリーグ創設以降の最高順位となる6位に食い込み、的確なマネジメントがサポーターから支持されていたクーマン監督は、エヴァートンから声がかかり、2016-17シーズンの「抜かれ第1号」に名前を刻むことになってしまいました。オランダやスペインの強豪クラブを率いた経験がある名将は、「2歩下がってから3歩進もうとする」チームづくりを長く続ける気はなかったのかもしれません。この夏もまた、退団の噂がある選手リストにグラツィアーノ・ペッレ、フレイザー・フォースターといった顔ぶれが並んでいます。イタリア人ストライカーは、双方合意の円満退社で故郷に帰るといった体ですが、年末年始に苦しかったチームを支えた守護神のほうは、毎年恒例のトップクラブへの貢ぎ物となる可能性があります。

そんななかで、セインツの「抜かれ第2号」のニュースが出てまいりました。中盤を仕切るビクター・ワニャマの退団は、クラブにとってはサディオ・マネと並んで最も激痛でしょう。とはいえ、トッテナム移籍のお話は、昨秋も話題になった1年越しの相思相愛ストーリー。イングランド南端の中堅クラブには、契約延長を断った選手を止める術はないのだと思われます。イギリスメディア「デイリー・ミラー」は、1100万ポンド（約16億5000万円）でクラブ間合意済み、ワニャマは近々メディカルチェックを受けることになると伝えています。記事を執筆したデイブ・キッドさんは、「ナビル・ベンタレブとライアン・メイソンのいずれかがセインツに移籍するかもしれない」と書いており、将棋でいえば角と銀の交換ぐらいでおさまるのかもしれませんが、ワニャマの守備力を失うマイナスは相当大きいのではないでしょうか。

さあ、どうしましょう。いや、補強云々の前に、まずは監督を決めなければ話は前に進みません。後任候補として、ペジェグリーニ、モイーズに加えてAVBことアンドレ・ヴィラス・ボアスさんの名前も挙がっていますが、火中の栗を拾うのは誰でしょうか。ああ、セインツ。ひとつ順位が下のウェストハムは景気よく補強を進めているというのに、なぜ、あなたたちばかりが…。リヴァプールやチェルシーより上位でシーズンを終えたクラブは、今年もまた、角度が厳しいジェットコースターのような夏を過ごすことになりそうです。