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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

ラシュフォード依存、カゼミーロの守備…マンチェスター・ユナイテッドがすぐに解決すべき攻守の課題。

トッテナムとアーセナルにアウェイで負けただけなら、ときどきある話と笑ってやり過ごせたのですが、オールド・トラフォードでブライトンに完敗となると心拍数が上がります。今季プレミアリーグNo.1の得点力を誇る強敵であるとわかっていたのに、中央に入り込む選手を捕まえきれず、失点を重ねてしまいました。

5節を終えて2勝3敗。テン・ハフ監督を擁護する材料はふんだんに用意されています。開幕前からの負傷者続出。期待の若手マイヌーの長期離脱をきっかけに、ヴァラン、リサンドロ・マルティネスら主軸が続々とリタイアしてしまいました。ルーク・ショーとマラシアがダブルで負傷し、左SBが全滅となったため、デッドラインデーに急遽レギロンを獲得しています。

ホイルンド、メイソン・マウント、アムラバト…GKとジョニー・エヴァンスを除く新戦力は、既に全員1回ずつリタイアを経験しています。追い打ちをかけるように、アントニーの暴行疑惑とサンチョの離反がメディアを賑わし、右ウイングもスペシャリストがいなくなってしまいました。不振の理由をまとめて提出せよといわれれば、迫力があるレポートを書けそうです。

いや、だからといって、「テン・ハフはかわいそう」で済ませていい話ではありません。プレミアリーグ5試合で6ゴールしか挙げていない攻撃も、10失点の守備も、それぞれ問題を抱えています。これらは指揮官の責任。勝てない日々が続けば、経営ボードは新たな監督の招聘を検討し始めるはずです。不振の理由を、ピッチの上で起こっていることに絞って整理してみましょう。

今のアタックは、ひとことでいえば「セットピースとラシュフォード」。これまでのゴールや決定機を振り返ってみると、10番がいなければ成立しなかったシーンばかりです。1-0辛勝のウルヴス戦のゴールは、ブルーノの浮き球でワン=ビサカが右から抜け出し、最後はヴァランのヘッド。CBがゴール前にいたのは、CKからの二次攻撃だったからです。

いきなり2発を喰らったノッティンガムフォレスト戦は、3発とも「ありがとうラシュフォード」。17分にボックス左を突破し、高速グラウンダーをエリクセンに決めさせた10番は、51分のFKのサインプレーでも右から上がったブルーノに絶妙なロングフィードを通して、カゼミーロの同点ゴールのキーマンとなりました。

さらに75分、ショートコーナーからボックス左に入ったラシュフォードは、ダニーロのファールを誘ってPKをゲット。3-2の逆転勝利は、彼なしでは実現しませんでした。アーセナル戦でも、エリクセンのスルーパスを左で受け、カットインからベン・ホワイトをかわして強引にねじ込んでいます。

アーセナル戦といえば、72分にゴールライン際でベン・ホワイトを抜き去り、ニアのホイルンドにパスを通したのも10番です。1-3完敗のブライトン戦も、40分にラインぎりぎりからの折り返しをホイルンドに決めさせる「ラシュフォードの1ミリ」がVARでアウトとなりました。前半終了間際には、カットインからフェルトマンとヘッケをかわし、きわどいシュートを打っています。

というわけで、6ゴールの内訳はセットピースから2発、10番絡みで3発(PK含む)、ハンニバル・メイブリのミドル1本です。ライバルクラブのみなさんに、彼の傾向と対策をお伝えしておきましょう。左サイドからカットインしてズドン!と、ボックス左を突破してゴールラインから速いグラウンダー。決め手は2種類なので、SBは縦、CBの方々は中央をケアしてください。

ここからは、守備の課題について解説しましょう。最大の問題は、カゼミーロでしょう。昨季は中盤の軸として頼りにされていたベテランMFは、ドリブルで抜き去られるシーンが13回もあり、リーグワーストとなっています。ウルヴス戦は、ブルーノ・フェルナンデスが5回、彼が4回も置き去りにされたのが苦戦の原因でした。

スパーズ戦では、クルゼフスキがクロスを上げた先制のシーンでパペ・マタル・サールに裏に入られてしまい、イヴ・ビスマに振り回される姿も目立っていました。CBが外に引っ張り出されたとき、カゼミーロのカバーが曖昧になり、ボックスの入り口付近でフリーになった選手に打たれるのも改善すべきポイントです。

ブライトン戦の最初の失点も、リサンドロ・マルティネスが外に出た際に、カゼミーロがウェルベックに着いていかなかったため、ノーマークで決められました。この試合は、マクトミネイをアンカーに据え、18番を右に配したほうがよかったのではないでしょうか。指揮官は、スコットランド代表で5戦6発のMFに攻撃における貢献を期待したのかもしれませんが…。

ラシュフォードが左、ホイルンドが中にいることが多かった4-3-1-2は、ランプティと三笘に押し込まれる原因となり、マクトミネイはサイドで翻弄されました。中盤インサイドでパス成功がたったの15本は、空回りを証明する数字です。中盤の配置の見直しと、バイタルエリアのカバーリングとマークの受け渡しの確認は、アムラバト待ちにしてはいけない喫緊のタスクでしょう。

もうひとつ、守備で気になるのは、リサンドロ・マルティネスが初年度のレベルをキープできていないことです。サイドに出ていきながら、簡単にクロスを許すことが多く、中央でもチェックを外されるシーンが増えています。中盤の守備力が高まれば、彼の負担が減り、昨季のパフォ―マンスを取り戻せるのでしょうか。

攻守ともに課題山積のテン・ハフ監督は、バーンリー、クリスタル・パレス、ブレントフォード、シェフィールド・ユナイテッドに全勝してマンチェスターダービーを迎えられなければ、秋が終わる前にTOP4の背中が見えなくなってしまいそうです。1年前は、開幕2連敗の後、12勝3分2敗と復活。今季も、苦境からの快進撃を期待したいと思います。


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