偏愛的プレミアリーグ見聞録

プレミアリーグは、さながらストライカー争奪戦の様相を呈しています。欲しがっているクラブは、アーセナル、レスター、ウェストハム、チェルシー、エヴァートン、クリスタル・パレス。動きたい選手は居場所なきベンテケ、ロンドンに戻りたいファン・ペルシ…。そんななかで、ひと足先にストライカー獲得を発表したのは、秒読みといわれていたアーメド・ムサ獲得に漕ぎ付けたレスターでした。プレミアリーグ王者の新戦力は、GKツィーラー、DFルイス・エルナンデス、MFナンパリス・メンディに続く4人め。昨季はCSKAモスクワで30試合12ゴールという数字を残し、ロシア・プレミアリーグ制覇にクラブを導いた23歳は、岡崎慎司やウジョアとのポジション争いからスタート。サイドでも戦える選手なので、マフレズ不在の際にその穴を埋めるというオプションもあるかもしれません。

「プレミアリーグでベストのクラブのひとつであり、ファミリーみたいだから」。アーメド・ムサは、レスターに入団した理由として、家族的なクラブの雰囲気を挙げています。移籍金は非公表ですが、「BBC」は1600万ポンド（約20億8000万円）と推定しており、これが事実なら堂々のクラブレコードです。高いお買い物ではありますが、チャンピオンズリーグ直後のゲームでラニエリ監督がジェイミー・ヴァーディを休ませることができるようになれば、成功でしょう。レスターには、さらにファン・ペルシを獲得するという噂がありますが、守備を考えるとヴァーディと並べにくい32歳に手を出すでしょうか。レスターのアイヤワット・スリヴァッダナプラバ副会長は、昨季プレミアリーグが終わる頃に「夏は3～4人を獲る。選手層を厚くする」と語っており、人数的にはFIXです。

フェネルバフチェで22ゴールを積み上げたものの、当初スタメンが少なかったことにストレスを溜めていたファン・ペルシは、スーパーサブ的存在におさまりそうなレスターでは幸せになれないのではないでしょうか。ご家族がロンドンでの生活を希望しているという話もあり、クリスタル・パレスやウェストハムから声がかかれば、そちらのほうがよさそうなのですが…。

しかし、ウェストハムの意中のストライカーは、トルコではなくイタリアにいるようです。イギリスメディア「デイリー・エクスプレス」は、オリンピックスタジアム移転を控えて積極補強を仕掛けているハマーズが、カルロス・バッカ獲得でACミランと合意したと伝えています。2012-13シーズンにクラブ・ブルッヘでベルギーリーグ得点王に輝いたコロンビア人ストライカーは、セビージャで素晴らしい2年を過ごした後、昨夏ミランに入団。セリエA38試合18ゴールはリーグ3位で、自身4季連続となるシーズン10ゴール以上です。バッカの次にゴールが多いのが、6ゴールのMFボナヴェントゥーラというクラブがエースを放出するとはびっくりですが、移籍金2570万ポンド（約35億8000万円）は、抗いがたいオファーなのでしょうか。7月末にはヨーロッパリーグ予選が始まり、今季こそは本戦のグループステージに進出したいハマーズは、いいストライカーが獲れそうとなれば交渉スピードでは負けないはずです。ご本人のOKが取れ次第、早ければ週明けに発表があるかもしれません。

クリスタル・パレスはリヴァプールの要求を丸呑みしてでもベンテケを獲ると伝えられており、アーセナルはラカゼット本命との報道あり。いよいよ、ファン・ペルシの行き場がなくなってきました。仮にハマーズやクリスタル・パレスが「ファン・ペルシもほしい」といったとしても、レスター同様にジョーカーのような扱いになる可能性があり、ご本人の納得感はなさそうです。トルコよりロンドンというご希望はあれど、サッカーのことだけを考えれば、昨季の終盤戦に5試合フル出場6ゴールと大暴れした今のチームに残るのが賢明だと思われます。…いや、そうはいっても予断を許さないプレミアリーグの移籍市場。バッカやベンテケの去就決定の後、ガナーズの元エースの意志決定に注目することとしましょう。