偏愛的プレミアリーグ見聞録

公式戦トータル10ゴール、10アシスト、イエローカードも10枚。今季プレミアリーグにおけるアストン・ヴィラの躍進を語るとき、ドゥグラス・ルイスはオリー・ワトキンスとともに最初に出てくる名前でしょう。プレミアリーグのパス本数1637本、キーパス44本、スルーパス10本、ビッグチャンスクリエイト9回は、いずれもチームTOPです。

ブバカリ・カマラとのコンビで中盤を仕切ったセントラルMFが、ゴールかアシストを決めた試合は14勝1分1敗。ベスト8に進出したヨーロッパカンファレンスリーグでも、4アシストを決めています。プレミアリーグで17勝5分7敗のアストン・ヴィラは、トッテナムと僅差ながら4位に着けており、チャンピオンズリーグの出場権を視界に捉えています。

彼らがCLへのチケットをゲットしたら、2022年の夏からドゥグラス・ルイスを引き入れようとしていたアーセナルは諦めるのでしょうか。現地メディアのレポートを読むと、むしろ次の夏はチャンスと捉えられているようです。記者たちが着目しているのは、3月に発表されたアストン・ヴィラの決算です。2022-23シーズンは、1億1960万ポンドの赤字を計上しています。

クラブの説明は、「戦略的な事業計画に沿ったもので、PSRの範囲内」。昨夏のマーケットでムサ・ディアビ、パウ・トーレスらに6370万ポンドを投じ、余剰戦力の売却益との差額は4000万ポンドを超えるマイナスとなっています。選手とスタッフの人件費も1億3700万ポンドから1億9420万ポンドに増えており、現地記者の多くが「アクセルを踏みすぎた」と見ているようです。

売上は1億7840万ポンドから2億1770万ポンドに伸びたものの、固定費の増加は経営のリスクを高めています。「フットボールロンドン」のジャック・フリンサム記者と「バーミンガムメール」のマーク・ウェイクフィールド記者は、「ドゥグラス・ルイスとジェイコブ・ラムジーは退団するかもしれない」という元スパーズGKのポール・ロビンソン氏のコメントを紹介しています。

アーセナルの中盤センターを見ると、トーマス・パーティーとの契約は2025年までとなっており、ジョルジーニョとエルネニーは今シーズン終了後に契約満了。片思いが続いていたブラジル代表を引き入れる絶好のタイミングです。2019年にマン・シティに支払った移籍金は1500万ポンド。ひと頃は1億ポンドといっていたヴィラは、売却やむなしとなれば下げてくるはずです。

エドゥSDとアルテタ監督が意中のタレントを獲得したら、アンカーにデクラン・ライス、左のインサイドにドゥグラス・ルイス、カイ・ハヴァルツは最前線という布陣になるのでしょうか。バックアッパーにジョルジーニョ、ファヴィオ・ヴィエイラ、スミス・ロウがいれば、さらなる補強は不要でしょう。

アストン・ヴィラの決算のレポートを読んでいると、2019-20シーズンから2年連続で最終節にTOP4から転落し、サラリーの負担が厳しくなってキーマンを手離したレスターを思い出します。1981-82シーズンに欧州チャンピオンとなった古豪は、最高峰のステージに復帰しても主力を手離すのでしょうか。CL出場権を取り逃したら、何らかの手を打つのは間違いなさそうですが…。