イングランドのプレミアリーグ(ときどきチャンピオンズリーグ)専門ブログ。マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リヴァプールetc.

偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

決定機を活かせれば、PKをもらえれば…!FAカップ準決勝、チェルシーの勝利を願い続けた夜。

勝負を決する唯一のゴールは84分。左サイドでキープしたジェレミー・ドクが、斜めのパスをボックス左に転がすと、走り込んだデブライネのグラウンダーはGKペトロヴィッチが足に当てました。ボールはファーに流れ、フリーで待っていたベルナルド・シウヴァのダイレクトショットは、ククレジャにヒットしってネットを揺らしました。

ウェンブリーで開催されたFAカップ準決勝、マンチェスター・シティVSチェルシー。いくつかの決定機を活かせず、微妙なジャッジにも泣かされたチームは、リードされた後はシュートゼロで大会を終えています。イングランドでは優勝経験がないポチェッティーノ監督は、初戴冠のチャンスを逃し、欧州へのチケットを手に入れるルートはプレミアリーグのみとなりました。

チェルシー、無念の敗退!あらためて、決勝ゴールまでの軌跡を辿ってみましょう。両者ともに、直近のプレミアリーグ5戦を3勝2分と好調キープ。勝てばEL出場権まであと一歩となるチェルシーは、モチベーションが上がっているようです。一方、レアル・マドリードにCLの連覇を阻止されたマン・シティは、こちらの2年連続制覇を止められるわけにはいきません。

今季プレミアリーグの対戦は、スタンフォード・ブリッジが4-4、エティハドは1-1といずれもドロー。敵地で2発のハーランドは、レアル・マドリード戦で筋肉に違和感を覚えて欠場となりましたが、ホーム&アウェイで連発のロドリは健在です。対するチェルシーは、ニコラス・ジャクソンの後ろに好調のコール・パルマー、ノニ・マドゥエケ、コナー・ギャラガーが並んでいます。

期待を抱かせる立ち上がりだったチェルシー。コナー・ギャラガーがロドリから奪った7分のショートカウンターは、中央から上がったコール・パルマーが左に流したボールがニコラス・ジャクソンに届きました。カイル・ウォーカーに体を寄せられながら放った左足シュートは、軸足が滑ってしまい、GKオルテガが正面でキャッチしました。

さらに11分、敵陣でフリアン・アルバレスのミスタッチをニコラス・ジャクソンがカット。こぼれたボールに反応したコール・パルマーは、GKオルテガが出ているのを見てループシュートを狙いますが、思うように浮きませんでした。マン・シティの決定機は14分、デブライネが右から斜めに入れた超絶スルーパスで、ラインの裏に出たフォーデンがペトロヴィッチと1対1です。

飛び出したGKをかわした47番は、次のタッチで枠に流せなかったため、ゴールライン上からクロスの一択になりました。ゴール前に浮いたボールはククレジャがクリア。ピンチをしのいだチェルシーは、18分にニコラス・ジャクソンが左サイドを突破しますが、GKが触れないコースに出したクロスに走り込む選手がいませんでした。

20分、ボックス左手前に出たグリーリッシュが縦パスを転がすと、トレヴォ・チャロバーをかわしたフリアン・アルバレスは左足のシュートをデブライネにぶつけました。29分、エンソ・フェルナンデスの絶品ロングフィードでラインを突破したニコラス・ジャクソンは、1対1からGKを抜き去ったのですが…!

打てるコースを失ったストライカーは、後ろから上がってきたコール・パルマーへのパスをナタン・アケにクリアされてしまいました。コール・パルマーの絶妙な浮き球で、マロ・グストが右サイドを突破したのは35分。アーリークロスのタイミングが一瞬遅れ、カイル・ウォーカーがクリアして終わりかと思いきや、ノニ・マドゥエケがカットして右に持ち込みます。

至近距離からの右足のフィニッシュは、ジョン・ストーンズがスライディングでブロック。37分、右サイドのノニ・マドゥエケが縦パスでトレヴォ・チャロバーを走らせると、ニアでグラウンダーを受けたコール・パルマーが右に切り返してロドリを抜き去り、左足インサイドでGKの脇を狙いました。右手を伸ばしたオルテガのビッグセーブを見て、20番は頭を抱えています。

前半は0-0。シュートは5対4と互角ですが、オンターゲット0対3という数字は、プレミアリーグ9位のクラブのアドバンテージを示しています。チェルシーがこの試合で最大のチャンスをつかんだのは49分。エンソ・フェルナンデスのパスを足元に収めたコナー・ギャラガーが、ロドリをかわして縦のスルーパスを通しました。

左からスプリントしたニコラス・ジャクソンがカイル・ウォーカーの内側に入り、オルテガと向き合って右隅にシュート。ビッグセーブ連発のGKが左に反応して外に弾くと、ボックスの右脇で拾ったコール・パルマーが完璧なクロスをゴール前に浮かしました。ニコラス・ジャクソンはまたもフリー。叩きつけたヘッダーがもう少し右にずれていたら、決まっていたはずです。

さらに55分、ボックス右手前からのFKのキッカーはコール・パルマー。壁に入っていたグリーリッシュが開いた手に当たり、ボールはポストの外に流れていきますが、マイケル・オリヴァー氏のジャッジはゴールキックでした。今季プレミアリーグの基準なら、間違いなくPK。その瞬間、ピッチサイドのポチェッティーノ監督が指摘するぐらい、明確にヒットしていたのですが…。

ハーフタイムにジョン・ストーンズをルベン・ディアスに代えていたペップは、66分にグリーリッシュをジェレミー・ドク。コール・パルマーのスルーパスが右のカイセドに入った68分のカウンターは、すぐに左のニコラス・ジャクソンにグラウンダーを通していれば決定機だったはずです。しかしカイセドは前に進み、遅れて出てきたクロスはストライカーに合いませんでした。

69分、マロ・グストをかわして左から打ったドクのシュートは、ペトロヴィッチが足でセーブ。直後、ドクのグラウンダーをニアのフリアン・アルバレスが落とすと、デブライネのシュートは右に切れていきました。79分にマロ・グストとノニ・マドゥエケが下がり、ディサシとムドリク。その5分後、パスをまわしながら左右の隙を窺っていたマン・シティがゴールを陥れました。

ここぞというシーンで、ラストパスのタイミングを逸していたチェルシー。1-0になった89分、入ったばかりのスターリング&チルウェルが仕掛けたカウンターは、SBがアーリークロスを7番に送ればビッグチャンスでしたが、ここという瞬間に出せず、その後はルベン・ディアスにコースを切られてしまいました。ムドリクはクロスもFKも精度を欠き、何もできずに終わっています。

座り込むニコラス・ジャクソン、落胆のモイセス・カイセド。チェルシーにおける最後のタイトルチャレンジになるであろうチアゴ・シウヴァは、人目を憚らず泣いています。2019年からの3年は、ウェンブリーの決勝で4戦全敗。今季のカラバオカップでもリヴァプールに敗れたチームは、またしてもフットボールの聖地で屈しました

15番が活かせなかった3つの決定機、笛が鳴らなかったFK、3度のカウンターでタイミングを逸したアーリークロス。そのどれかがゴールを生んでいれば、結果は逆になっていたかもしれません。「やっぱりペップは強かった」のひとことで終わらせたくないナイスゲーム。底力も弱点も出し切った敗者に拍手です。

I’m the champ,He is nobody」。後に「キンシャサの奇跡」と呼ばれる決戦の前に、モハメド・アリがジョージ・フォアマンを挑発すべく、放った言葉です。スポーツの興奮が凝縮されたひとこと。 残酷な観衆は、敗者が失うものが大きい試合にエキサイトするのです。私がチェルシーVSマン・ユナイテッドの決勝を期待していたのは、ペップが怖いという理由だけではありません。

勝者が王者の称号と欧州の出場権を得て、敗者はリーグの中位に沈む凡庸なチーム。プレミアリーグ31節で、100分と101分のゴールで大逆転という熱戦を繰り広げた2つのクラブは、負けたヤツを痛罵してやろうと待ち構えるオーディエンスの極上の獲物になれたでしょう。ペップが勝った今、丸腰のチャレンジャーは、絶対王者を引き立たせる脇役となってしまいそうです。

1989-90シーズンのアレックス・ファーガソンは、FAカップを制していなければ解任だったはずです。2020年のアルテタがウェンブリーでトロフィーを獲得していなければ、翌シーズンのプレミアリーグ8位に厳しいジャッジが下っていた可能性があります。ポチェッティーノ監督は、来季も指揮を執ることができるでしょうか。そしてもうひとり、テン・ハフ監督も…。


おもしろいと思っていただけた方は、お時間あれば、下のブログランキングバナーをクリックしていただけると大変うれしいです。所要時間は5秒です。何とぞよろしくお願いいたします!


コメントを残す