次元が違う…!自らのすべてのプレイをロジカルに説明するデクラン・ライスの驚愕のインタビュー。
「今までは、こんなことはしなかった。たぶん2~3週間前に覚えたんだね。サカがボールを持つと、あのスペース(ボックスの右手前)は誰もいなくなる。あそこに走り込んで、フリーになることがよくあるんだ。監督はそれを、『good height(ほどよい高さ)』でのプレイと呼んでいる」
「僕がここ(深いエリア)に戻ると、前に進められなくなる。結局、ベン(・ホワイト)からセンターハーフに戻すしかなくなってしまう。だから、6番は常に 『good height』にいてほしいといわれている。僕はその瞬間を明確に読んで入り込み、エディにボールを走らせた。とてもシンプルに見えるけど、そこに至るまでにかなりの思考プロセスがある」
アスリートのインタビューを読んで、これほど驚愕したのは2度めです。最初の体験は「Number」のノンフィクション。1996年9月17日、コロラド・ロッキーズの本拠地クアーズ・フィールドでノーヒッターを達成した野茂英雄投手の言葉に触れたときです。筆者は、二宮清純さんだったと記憶しています。
体力の消耗が激しいマイル・ハイ(標高1600m)、ボールが飛びやすいスタジアムは打者が圧倒的に有利。その日は雨で2時間も開始が遅れ、足元が緩い最悪のコンディションのなかで、3回からすべてセットポジションという考え抜いた投球で快挙を実現しました。私が驚愕したのは、当時の野茂さんが自らの110球をすべて言語化しようとしていたからです。
冒頭で紹介したのも、自らのパフォーマンスを適切に表現しようとしたプロフェッショナルの言葉です。インタビュアーは、「アスレティック」のスチュワート・ジェームズ記者。新たなクラブにフィットするために何をしたのか、どんな意図をもってプレイしていたのかを語ってもらうために、80枚以上のスライドを映し出し、それぞれに対して説明を求めたそうです。
インタビューが行われたのは、とある月曜日の午後。ロンドンのコロニーにあるソバー・リアルティ・トレーニングセンターに足を運んだデクラン・ライスは、自らのプレイについて率直に語り始めました。最初の驚きは、「かなりの思考プロセスがある」と説明したシーンが、プレミアリーグ2節のアウェイゲーム、クリスタル・パレス戦の36分だったことです。
アーセナルへの移籍が発表されたのは7月15日。チームに合流してからわずか1ヵ月、公式戦の出場はコミュニティシールドと開幕のノッティンガム・フォレスト戦のみという新人の言葉とは思えません。6番をまかされながら、前線でキープするサカの脇に上がるという発想は、指揮官とともに何年もプレイし、戦術を熟知しているベテランのようです。
アルテタ監督のヴィジョンを、できるだけ早くプレイに反映させたいと考えていたデクラン・ライスは、定期的に戦術に関するミーティングを行い、学んだといいます。「Declan Rice: My game in my words」と題された記事を読むと、彼がいかにロジカルに戦況を捉え、次の対応を選択しているかがよくわかります。
「サイドチェンジを多用せず、ショートリレーションを好む理由」「ウェストハム時代の戦術とアーセナル移籍後の変化」「好きなプレイ」「6番と8番の違い」「マン・シティ対策」「マン・ユナイテッド戦の劇的な初ゴール」…。すべての質問に対して言葉を濁さず、明確に答えたMFは、記者が聞こうとしたサイドチェンジの減少については、先回りして解説しています。
「監督はダイアゴナル(ウインガーに斜めに通すサイドチェンジ)が嫌いなんだ。アドバンテージを得ようとするなら、好まないだろう。ブライトン戦でサカに出したボールを見たら、みんな『いいボールだ』というと思う。でも…映像を巻き戻して、一時停止してみて。ほら、サカのインサイドでプレイする選手がいない。ブライトンの選手がもうひとり来ている」
「打てるところにボールがあって、アドバンテージがあればもちろん打つ。そうでなければ、ショートリレーションでプレイして、相手を自分の前に来させてウイングのためのスペースを作ることを望んでいる」
移籍初年度から、プレミアリーグ36試合7ゴール8アシスト。最初の5試合で戦術のインストールを終え、マン・シティ戦で初めて8番で先発してジョルジーニョと絡み、その後は2つのポジションを高いレベルでこなす…そんな離れ業ができるのは、監督と同じ目線でゲームを見て、考え抜くことができるプレーヤーだからでしょう。
そしてもうひとつ、彼には並の選手は持ちえない資質があります。インタビューを読んで最も驚かされたのは、記者と膝詰めで話した「とある月曜日の午後」がいつだったのかを知った瞬間です。「これこそが、彼らがカネをかけた理由だ。ビッグモーメント、ビッグマッチ!」というガリー・ネビルの賛辞について感想を求められた彼は、こう答えています。
「Yeah… not yesterday」
昨日は違ったよね…そう、彼がクラブハウスに足を運んだのは4月15日。アストン・ヴィラにホームで0-2で敗れた翌日だったのです。「今までの経験でいうと、翌日のインタビューをキャンセルする選手もいる。自分のパフォーマンスについて、率直に語らない選手もいる。しかし、ライスは隠れるようなタイプではない」。予定通りに会えた記者も、驚きを隠せずにいます。
批判を受け入れ、改善しようとするマインドも、デクラン・ライスの類まれなる力のひとつでしょう。ロングインタビューに触れて、アーセナルはこの先30年、彼を手離してはいけないと思いました。最後に、ボーンマス戦のハイパフォーマンスを激賞した「テレグラフ」のジェレミー・ウィルソン記者の言葉を紹介して、この稿を締めることとしましょう。
「Football’s first £105m bargain(フットボール界初となる1億500万ポンドのバーゲン)」
「僕がここ(深いエリア)に戻ると、前に進められなくなる。結局、ベン(・ホワイト)からセンターハーフに戻すしかなくなってしまう。だから、6番は常に 『good height』にいてほしいといわれている。僕はその瞬間を明確に読んで入り込み、エディにボールを走らせた。とてもシンプルに見えるけど、そこに至るまでにかなりの思考プロセスがある」
アスリートのインタビューを読んで、これほど驚愕したのは2度めです。最初の体験は「Number」のノンフィクション。1996年9月17日、コロラド・ロッキーズの本拠地クアーズ・フィールドでノーヒッターを達成した野茂英雄投手の言葉に触れたときです。筆者は、二宮清純さんだったと記憶しています。
体力の消耗が激しいマイル・ハイ(標高1600m)、ボールが飛びやすいスタジアムは打者が圧倒的に有利。その日は雨で2時間も開始が遅れ、足元が緩い最悪のコンディションのなかで、3回からすべてセットポジションという考え抜いた投球で快挙を実現しました。私が驚愕したのは、当時の野茂さんが自らの110球をすべて言語化しようとしていたからです。
冒頭で紹介したのも、自らのパフォーマンスを適切に表現しようとしたプロフェッショナルの言葉です。インタビュアーは、「アスレティック」のスチュワート・ジェームズ記者。新たなクラブにフィットするために何をしたのか、どんな意図をもってプレイしていたのかを語ってもらうために、80枚以上のスライドを映し出し、それぞれに対して説明を求めたそうです。
インタビューが行われたのは、とある月曜日の午後。ロンドンのコロニーにあるソバー・リアルティ・トレーニングセンターに足を運んだデクラン・ライスは、自らのプレイについて率直に語り始めました。最初の驚きは、「かなりの思考プロセスがある」と説明したシーンが、プレミアリーグ2節のアウェイゲーム、クリスタル・パレス戦の36分だったことです。
アーセナルへの移籍が発表されたのは7月15日。チームに合流してからわずか1ヵ月、公式戦の出場はコミュニティシールドと開幕のノッティンガム・フォレスト戦のみという新人の言葉とは思えません。6番をまかされながら、前線でキープするサカの脇に上がるという発想は、指揮官とともに何年もプレイし、戦術を熟知しているベテランのようです。
アルテタ監督のヴィジョンを、できるだけ早くプレイに反映させたいと考えていたデクラン・ライスは、定期的に戦術に関するミーティングを行い、学んだといいます。「Declan Rice: My game in my words」と題された記事を読むと、彼がいかにロジカルに戦況を捉え、次の対応を選択しているかがよくわかります。
「サイドチェンジを多用せず、ショートリレーションを好む理由」「ウェストハム時代の戦術とアーセナル移籍後の変化」「好きなプレイ」「6番と8番の違い」「マン・シティ対策」「マン・ユナイテッド戦の劇的な初ゴール」…。すべての質問に対して言葉を濁さず、明確に答えたMFは、記者が聞こうとしたサイドチェンジの減少については、先回りして解説しています。
「監督はダイアゴナル(ウインガーに斜めに通すサイドチェンジ)が嫌いなんだ。アドバンテージを得ようとするなら、好まないだろう。ブライトン戦でサカに出したボールを見たら、みんな『いいボールだ』というと思う。でも…映像を巻き戻して、一時停止してみて。ほら、サカのインサイドでプレイする選手がいない。ブライトンの選手がもうひとり来ている」
「打てるところにボールがあって、アドバンテージがあればもちろん打つ。そうでなければ、ショートリレーションでプレイして、相手を自分の前に来させてウイングのためのスペースを作ることを望んでいる」
移籍初年度から、プレミアリーグ36試合7ゴール8アシスト。最初の5試合で戦術のインストールを終え、マン・シティ戦で初めて8番で先発してジョルジーニョと絡み、その後は2つのポジションを高いレベルでこなす…そんな離れ業ができるのは、監督と同じ目線でゲームを見て、考え抜くことができるプレーヤーだからでしょう。
そしてもうひとつ、彼には並の選手は持ちえない資質があります。インタビューを読んで最も驚かされたのは、記者と膝詰めで話した「とある月曜日の午後」がいつだったのかを知った瞬間です。「これこそが、彼らがカネをかけた理由だ。ビッグモーメント、ビッグマッチ!」というガリー・ネビルの賛辞について感想を求められた彼は、こう答えています。
「Yeah… not yesterday」
昨日は違ったよね…そう、彼がクラブハウスに足を運んだのは4月15日。アストン・ヴィラにホームで0-2で敗れた翌日だったのです。「今までの経験でいうと、翌日のインタビューをキャンセルする選手もいる。自分のパフォーマンスについて、率直に語らない選手もいる。しかし、ライスは隠れるようなタイプではない」。予定通りに会えた記者も、驚きを隠せずにいます。
批判を受け入れ、改善しようとするマインドも、デクラン・ライスの類まれなる力のひとつでしょう。ロングインタビューに触れて、アーセナルはこの先30年、彼を手離してはいけないと思いました。最後に、ボーンマス戦のハイパフォーマンスを激賞した「テレグラフ」のジェレミー・ウィルソン記者の言葉を紹介して、この稿を締めることとしましょう。
「Football’s first £105m bargain(フットボール界初となる1億500万ポンドのバーゲン)」
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