2024.05.20 プレミアリーグ観戦記2023-24プレミアリーグ観戦記
【Liverpool×Wolves】「You did it」…笑顔のスピーチ、ガッツポーズ。ユルゲン・クロップの最後の言葉。
ありがとう、ユルゲン・クロップ。2015年10月17日、ホワイト・ハート・レーンに乗り込んでトッテナムと戦った最初のプレミアリーグは、スコアレスドローでした。ミニョレ、ナサニエル・クライン、サコ、シュクルテル、アルベルト・モレノ、ルーカス・レイヴァ、エムレ・ジャン、ララナ、コウチーニョ、ミルナー、オリギ。ゲーゲンプレスにふさわしいとはいえない顔ぶれです。
あれから7年5ヵ月、公式戦490試合298勝109分83敗。2018-19シーズンにチャンピオンズリーグを制し、翌シーズンにプレミアリーグ初優勝を遂げたリヴァプールは、「黄金時代」「2強時代」と称される素晴らしい時を過ごしました。容赦ないプレッシングと鮮やかな速攻に魅了され、そのすべての試合を見届けてきた者として、彼のラストゲームも言葉にしておきたいと思います。
晴れやかなアンフィールドに、いつもの「You’ll Never Walk Alone」。最後に力尽きて3位となった2023-24シーズンは、主力の多くを負傷で失いながらも、リヴァプールの強さを印象付けた1年といえるでしょう。黒いキャップ、黒いシャツの指揮官は神妙な表情で、一体感を醸成するスタンドを見つめていました。
ウルヴスとのラストマッチは、シュート数36対4、オンターゲット14対3という一方的なスタッツで2-0完勝。歴史に名を刻む指揮官を最高の形で送り出そうとするアンフィールドの雰囲気は、アウェイチームのモチベーションを削いだのではないでしょうか。「BBC」のフィル・マクナルティ記者は、「試合自体は、ほとんど余興だった」とレポートしています。
5分過ぎから左サイドからエリオット、ルイス・ディアス、ロバートソンが交互に仕掛け、9分のグラウンダーからガクポとアーノルドが強引にシュート。ウルヴスは全員自陣にこもっており、カットしたボールを前に蹴り出すのが精一杯です。28分の事件が勝負を決めたといっても過言ではないでしょう。マック・アリスターの脛を踏んだセメドは1発レッドです。
クロップ監督は、バースデーパーティーの主役のようにゲームを楽しんでいるように見えます。先制は34分。ルイス・ディアス、ガクポ、クアンサー、エリオットと右につながり、レフティが中央に完璧なクロスを入れると、ガクポの裏にいたマック・アリスターの美しいヘッダーが左隅に決まりました。
40分には、ロバートソンのパスをボックス手前で受けた遠藤航が右隅にコントロールショット。GKジョゼ・サが素晴らしいセービングで外に弾き出すと、CKから追加点が生まれます。右からのキックにガクポがヘディングで競り勝ち、ファーにいたサラーがダイレクトでシュートを放つと、ブエノに当たったボールに詰めたクアンサーがプッシュしました。
ハーフタイムで既に2-0。サポーターたちは、勝利を確信していたでしょう。今季プレミアリーグで20回めの先発出場となった遠藤航は、余裕をもって中盤をコントロールしています。シュツットガルトでプレイしていた日本代表のキャプテンにとっても、クロップ監督との出会いは、キャリアを変える素晴らしい機会となったのではないでしょうか。
トティのバックパスをガクポがさらったのは50分。ジョゼ・サを抜き去ったストライカーがファーにクロスを送ると、無人のゴールにプッシュするだけだったルイス・ディアスのボレーは、クロスバーに阻まれました。キャップを深々とかぶって頭を抱えるクロップ監督。ピッチでは赤いシャツが攻め続け、スタンドに赤いスカーフが舞うアンフィールドは、カーニバルのようです。
アーノルドのアーリークロスで、ガクポがGKと向き合ったのは59分。左足のボレーはビッグセーブに阻まれました。直後の波状攻撃で、ルイス・ディアスのグラウンダーをスルーしたエリオットは、必勝のビッグマッチなら打っていたはずです。69分のサラーのコントロールショットも決定的でしたが、2021-22シーズンにセーブ率No.1だったGKが右に弾き出しました。
71分にアーノルド、ルイス・ディアス、マック・アリスターが下がり、フラーフェンベルフ、ブラッドリー、ダルウィン・ヌニェス。思い出をかみしめるようにゆっくりベンチに向かい、クロップ監督とハグをかわしたアーノルドは、感傷的になっているようです。最後のカードは81分、ガクポとエリオットに代えてカーティス・ジョーンズとショボスライです。
エリオットとのハグを見て、目頭が熱くなってしまいました。指揮官としての大事な仕事は終わり、あとは選手たちがゲームを畳むだけです。前半よりもパスはスローになり、歓声が止まないアンフィールドは最後の勝利の時を待ち構えています。前線に上がってCKをゲットしたファン・ダイクに、指揮官は笑顔で拍手を送っています。
追加タイムに入った瞬間、彼がいないプレミアリーグを想像するだけで、こんなに寂しくなるのかと愕然としました。93分の3対2のカウンターは、ショボスライのパスを受けてGKの前に出たサラーが、らしくないトラップミス。スタンドにいるウラさんも、ケニー・ダルグリッシュも、チームに拍手を送り続けています。
笛が鳴る前に、スタッフとハグをかわしたクロップ監督は、センターサークルに歩を進めて選手たちをねぎらっています。サラー、アリソン、ファン・ダイクと長いハグ。2017年からの7シーズンで、公式戦348試合211ゴールという数字を残したエースに笑顔はありません。セレモニーが始まり、今季限りで去るチアゴが晴れやかな笑顔で登場。マティプは仲間にいじられています。
スタッフが拍手で送られ、最後に現れたクロップ監督は、花道の出口にいたファン・ダイクにやり直しを命じられています。スピーチには、用意された新たな言葉も飾り立てたメッセージもありませんでした。
「数週間前から注目されすぎて、とても居心地が悪かった。でも、その間にいろいろなことに気づいた。人々は、私が彼らを懐疑者から信者に変えたというけど、それは真実ではない。信じるということは、能動的な行為だ。私はただ、そうしなければならないといっただけだ。信じたのは、みなさんだ(You did it)。それは大きな違いだ」
「そして今、信じることを止めろとは誰もいわない。なぜなら、このクラブはかつてないほどいい状況にあるからだ。これはケニー(・ダルグリッシュ)に聞いてみないとわからないけどね!ずっと、そういい続けてきた。素晴らしいスタジアム、素晴らしいトレーニングセンター。そしてあなたたちは、世界のフットボールでも類を見ないスーパーパワーだ」
「不安かエキサイティングかは、われわれ自身が決める。信じるか信じないか、期待するかしないかも、われわれが決めるんだ。今日からも私は仲間だし、みんなを信じ続ける。100%のビリーバーでいよう」
いつものガッツポーズ連発、そしてアンコール。肩を組んで歩いたファン・ダイクと、ロバートソンの笑顔を忘れることはないでしょう。赤いシャツがまばらになったアンフィールドを見て、思いのほか心を揺さぶられた自分に気づきました。最後にもう一度、別な言葉で伝えましょう。ダンケ・シェーン、ユルゲン・クロップ。
あれから7年5ヵ月、公式戦490試合298勝109分83敗。2018-19シーズンにチャンピオンズリーグを制し、翌シーズンにプレミアリーグ初優勝を遂げたリヴァプールは、「黄金時代」「2強時代」と称される素晴らしい時を過ごしました。容赦ないプレッシングと鮮やかな速攻に魅了され、そのすべての試合を見届けてきた者として、彼のラストゲームも言葉にしておきたいと思います。
晴れやかなアンフィールドに、いつもの「You’ll Never Walk Alone」。最後に力尽きて3位となった2023-24シーズンは、主力の多くを負傷で失いながらも、リヴァプールの強さを印象付けた1年といえるでしょう。黒いキャップ、黒いシャツの指揮官は神妙な表情で、一体感を醸成するスタンドを見つめていました。
ウルヴスとのラストマッチは、シュート数36対4、オンターゲット14対3という一方的なスタッツで2-0完勝。歴史に名を刻む指揮官を最高の形で送り出そうとするアンフィールドの雰囲気は、アウェイチームのモチベーションを削いだのではないでしょうか。「BBC」のフィル・マクナルティ記者は、「試合自体は、ほとんど余興だった」とレポートしています。
5分過ぎから左サイドからエリオット、ルイス・ディアス、ロバートソンが交互に仕掛け、9分のグラウンダーからガクポとアーノルドが強引にシュート。ウルヴスは全員自陣にこもっており、カットしたボールを前に蹴り出すのが精一杯です。28分の事件が勝負を決めたといっても過言ではないでしょう。マック・アリスターの脛を踏んだセメドは1発レッドです。
クロップ監督は、バースデーパーティーの主役のようにゲームを楽しんでいるように見えます。先制は34分。ルイス・ディアス、ガクポ、クアンサー、エリオットと右につながり、レフティが中央に完璧なクロスを入れると、ガクポの裏にいたマック・アリスターの美しいヘッダーが左隅に決まりました。
40分には、ロバートソンのパスをボックス手前で受けた遠藤航が右隅にコントロールショット。GKジョゼ・サが素晴らしいセービングで外に弾き出すと、CKから追加点が生まれます。右からのキックにガクポがヘディングで競り勝ち、ファーにいたサラーがダイレクトでシュートを放つと、ブエノに当たったボールに詰めたクアンサーがプッシュしました。
ハーフタイムで既に2-0。サポーターたちは、勝利を確信していたでしょう。今季プレミアリーグで20回めの先発出場となった遠藤航は、余裕をもって中盤をコントロールしています。シュツットガルトでプレイしていた日本代表のキャプテンにとっても、クロップ監督との出会いは、キャリアを変える素晴らしい機会となったのではないでしょうか。
トティのバックパスをガクポがさらったのは50分。ジョゼ・サを抜き去ったストライカーがファーにクロスを送ると、無人のゴールにプッシュするだけだったルイス・ディアスのボレーは、クロスバーに阻まれました。キャップを深々とかぶって頭を抱えるクロップ監督。ピッチでは赤いシャツが攻め続け、スタンドに赤いスカーフが舞うアンフィールドは、カーニバルのようです。
アーノルドのアーリークロスで、ガクポがGKと向き合ったのは59分。左足のボレーはビッグセーブに阻まれました。直後の波状攻撃で、ルイス・ディアスのグラウンダーをスルーしたエリオットは、必勝のビッグマッチなら打っていたはずです。69分のサラーのコントロールショットも決定的でしたが、2021-22シーズンにセーブ率No.1だったGKが右に弾き出しました。
71分にアーノルド、ルイス・ディアス、マック・アリスターが下がり、フラーフェンベルフ、ブラッドリー、ダルウィン・ヌニェス。思い出をかみしめるようにゆっくりベンチに向かい、クロップ監督とハグをかわしたアーノルドは、感傷的になっているようです。最後のカードは81分、ガクポとエリオットに代えてカーティス・ジョーンズとショボスライです。
エリオットとのハグを見て、目頭が熱くなってしまいました。指揮官としての大事な仕事は終わり、あとは選手たちがゲームを畳むだけです。前半よりもパスはスローになり、歓声が止まないアンフィールドは最後の勝利の時を待ち構えています。前線に上がってCKをゲットしたファン・ダイクに、指揮官は笑顔で拍手を送っています。
追加タイムに入った瞬間、彼がいないプレミアリーグを想像するだけで、こんなに寂しくなるのかと愕然としました。93分の3対2のカウンターは、ショボスライのパスを受けてGKの前に出たサラーが、らしくないトラップミス。スタンドにいるウラさんも、ケニー・ダルグリッシュも、チームに拍手を送り続けています。
笛が鳴る前に、スタッフとハグをかわしたクロップ監督は、センターサークルに歩を進めて選手たちをねぎらっています。サラー、アリソン、ファン・ダイクと長いハグ。2017年からの7シーズンで、公式戦348試合211ゴールという数字を残したエースに笑顔はありません。セレモニーが始まり、今季限りで去るチアゴが晴れやかな笑顔で登場。マティプは仲間にいじられています。
スタッフが拍手で送られ、最後に現れたクロップ監督は、花道の出口にいたファン・ダイクにやり直しを命じられています。スピーチには、用意された新たな言葉も飾り立てたメッセージもありませんでした。
「数週間前から注目されすぎて、とても居心地が悪かった。でも、その間にいろいろなことに気づいた。人々は、私が彼らを懐疑者から信者に変えたというけど、それは真実ではない。信じるということは、能動的な行為だ。私はただ、そうしなければならないといっただけだ。信じたのは、みなさんだ(You did it)。それは大きな違いだ」
「そして今、信じることを止めろとは誰もいわない。なぜなら、このクラブはかつてないほどいい状況にあるからだ。これはケニー(・ダルグリッシュ)に聞いてみないとわからないけどね!ずっと、そういい続けてきた。素晴らしいスタジアム、素晴らしいトレーニングセンター。そしてあなたたちは、世界のフットボールでも類を見ないスーパーパワーだ」
「不安かエキサイティングかは、われわれ自身が決める。信じるか信じないか、期待するかしないかも、われわれが決めるんだ。今日からも私は仲間だし、みんなを信じ続ける。100%のビリーバーでいよう」
いつものガッツポーズ連発、そしてアンコール。肩を組んで歩いたファン・ダイクと、ロバートソンの笑顔を忘れることはないでしょう。赤いシャツがまばらになったアンフィールドを見て、思いのほか心を揺さぶられた自分に気づきました。最後にもう一度、別な言葉で伝えましょう。ダンケ・シェーン、ユルゲン・クロップ。
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あるサポーターが言ってました。
「苦しいときにユルゲンが来てくれたのにはワクワクしたし、タイトルを取れたのは嬉しかった。
でも、俺達は何よりユルゲンと闘えて楽しかったんだ。」
まさにサポーターの総意だと思います。本当に寂しいです。