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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

圧巻のチャンピオンズリーグ。数字だけでは語れない「ウーデゴーアがチームにもたらしたもの」

スポルティングCPの本拠地であるエスタディオ・ジョゼ・アルヴァラーデで勝つのがいかに難しいかは、「418日ぶりのホーム敗戦」という数字ひとつで説明できるでしょう。レアル・マドリード、バルセロナ、バイエルンに勝つようなわかりやすい快挙ではありませんが、マンチェスター・シティが4-1完敗という物差しを使えば、アーセナルの5発圧勝の凄さはより際立ちます。

ゴールを決めたサカ、カイ・ハヴェルツ、マルティネッリ、ガブリエウ、トロサールは素晴らしかったのですが、この試合は「ウーデゴーアのゲーム」と表現したい一戦です。右サイドを完全に制圧し、前半で勝負を決められたのは、彼がチームを動かしたからです。あらためてキャプテンの存在感を称賛したいのですが、その価値を具体的に伝えるのは難易度が高い作業です。

「偏愛的プレミアリーグ見聞録」でチームや選手の魅力を伝えるときに意識しているのは、主観に終始せず、データや事象を活用することです。居酒屋で知り合いとフットボール談議に興じているときは、「アイツ、スゲー」でいいでしょう。しかし、オープンな場でパフォーマンスの良し悪しを語るとなれば、フラットな素材があったほうが納得感が高まると考えたのです。

チームや選手のスタッツは、ゲームの興奮やプレイの凄さを伝える材料であるとともに、試合の全体像をつかむための入り口であり、個々の意外な一面に気づくきっかけでもあります。そんなことを思いつつ、12年続けてきたのですが、今日は自ら課した緩やかなルールを打破してみようと思います。「ウーデゴーア効果」は、数字に表れない要素が多いからです。

とはいえ最初に、リスボンにおける彼の記録を整理しておきましょう。78分で、ゴールもアシストもなし。チャンスクリエイト2回とドリブル成功2回は、よく見かける数字です。デュエルと空中戦を合わせて5勝4敗も、わざわざ取り上げる記者はいないでしょう。しかし67本のパス、30回のキャリー、4本のプログレッシブパスはチームNo.1。PKにつながったドリブルは、ボディバランスのよさが目を引きました。

いや、やはりこれらの数字だけでは、圧巻のパフォーマンスを語りつくすことはできません。立ち上がりから、繊細なスルーパスでラインの裏を取ろうとしていた8番は、奪われた直後のプレスをさぼることなく、ホームチームの逆襲を完封するキーマンでした。シンプルにさばくか、リスクを取るかのジャッジは的確で、集中力を欠くシーンはありませんでした。

ここからは、数字に出てこない「ウーデゴーア効果」を挙げてみましょう。最大のプラスポイントは、サカやテインバーがラインの裏への走り込みを躊躇しなくなること。「絶対に通してくれる」と信じてスプリントするので、決まった瞬間、前を向いた状態でフリーです。2つめはパスコースを遮断するプレスで、後方の選手の出足がよくなるという効果があります。

ペースアップとタメを作る動きのメリハリは、周囲の選手に余裕をもたらし、可能性を広げているともいえるでしょう。先制のシーンはフリーのデクラン・ライスにパスを通し、そこからティンバーにつながり、絶妙なグラウンダーをマルティネッリ。2点めのトーマスの絶妙な浮き球は、サカの飛び出しを活かそうとしていたキャプテンの影響というと、贔屓しすぎでしょうか。

復帰初戦のチェルシーとのロンドンダービーは、ボールに絡む機会が少なかったのですが、3-0快勝のノッティンガム・フォレスト戦とチャンピオンズリーグは、紛うことなきキングの振る舞いでした。彼が通常運転なら、ビッグイヤー制覇も充分めざせるのではないでしょうか。次戦はウェストハム。サカ、ティンバーとのコンビネーションに注目です。


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