2025.09.16 マンチェスター・ユナイテッドの話題
マンチェスター・ユナイテッドとアモリムの問題が浮き彫りになった失点シーンを振り返る。

これらの見出しはすべて、月曜日の「テレグラフ」です。マンチェスターダービーを終えた直後のTOPページは、アモリムキャンペーン。複数の記者が一斉にレポートを書いたのは、ジェレミー・ドクとハーランドを抑えられず、カウンターから何度もラインの裏を取られた一戦に、アモリムの戦術とマネジメントの限界を見たからでしょう。
バユンドゥルをかわしたハーランドがポストに当てたシーンと、レインダースが独走したビッグチャンスが決まっていれば、5-0になっていました。いずれもウガルテの判断ミスが絶望的なピンチにつながっています。ビルドアップでパスコースを失うと、相手が狙っているエリアに自信なさげな緩いパスを出してしまうMFは、後方からの飛び出しへの対応も後手にまわっていました。
3失点のすべてで無力だった彼を戦犯とする見方もあるようです。あの試合を切り取れば妥当なのかもしれませんが、本質的にはチームの機能の問題でしょう。個人の責任のみを追及しても、その向こう側に進化はありません。ブライトンのカルロス・バレバを1億ポンドで獲得すればよかったなどと嘆いているうちに、下位でシーズンを終えるという結末になりそうです。
マンチェスターダービーをあらためてチェックしてみると、フォーデンの先制ゴールのシーンにマンチェスター・ユナイテッドの根本的な問題が凝縮されていたように思います。ドルグのクロスを受けたアマド・ディアロがバイシクルを打ち上げた16分に、時間を巻き戻しましょう。自陣に引いてキープしたドクをマズラウィが倒してホイッスル。注目すべきは、この後です。
ボールはルベン・ディアスに渡り、左に開いたグヴァルディオルがキープ。このとき、マンチェスター・ユナイテッドは5人が密集してプレスをかけていました。CBと対峙したエンベウモの脇にシェシュコがいて、ブルーノ・フェルナンデスとウガルテはアマド・ディアロより前にポジションを取っています。
ズビメンディやフラーフェンベルフが周囲と連携せずにプレスを敢行してかわされたら、その後どうなるかは容易に想像できるでしょう。センターの2人が詰めてレニー・ヨロもハーフラインを越えたら、何が何でもコースを切らなければなりません。しかし縦パスをもらったフォーデンに誰も付いていかず、右にいたベルナルド・シウヴァにきれいなサイドチェンジが通りました。
ここではドルグがクロスのコースを切りながら、プレイを遅らせています。突破は無理と判断した20番はフサノフに戻し、SBは脇にいたロドリに預けました。ここがポイントです。右サイドの攻防の間に5-4-1を築いたアウェイチームに対して、いつもは左に張っているドクが逆サイドにまわり込み、MFと5バックの間に入っています。
その後、この動きはさほどなかったので、2列めに流動性を求めたペップの意向を汲んだセルフジャッジだったのでしょう。直前に入れ替わったウガルテと、ロドリがキープした瞬間に後方を確認していたアマド・ディアロは、ドクがいるとわかっていたはずです。最終ラインに付いているのはハーランドとレインダースだけで2対5。右のマズラウィは余っています。
近くにいた2人が対応しなかったため、ロドリが彼らの間にパスを通し、ドリブラーは簡単に前を向きました。ウガルテはここで必死に追うなら、その前に引いてチェックするべきでした。ルーク・ショーはあっさり抜かれ、ウガルテがクロスをカットしようとしています。デ・リフトはファーへのグラウンダーのコースを消し、ハーランドはレニー・ヨロが見ていました。
最初のクロスはウガルテがカット。こぼれ球をダイレクトで蹴った2本めが成功する条件は、唯一のターゲットに届くという1点です。ハーランドの裏でフォーデンがフリーだったのは、ブルーノ・フェルナンデスが見失ったからです。フラム戦でスミス・ロウの走り込みをただ見ていたキャプテンは、この大事なシーンで同じ過ちを犯してしまいました。
狙いも連動性もないプレス、判断が遅いウガルテ、簡単に抜かれて思考停止したルーク・ショー、2列めからの飛び出しを見なかったキャプテン。ヘッダーがネットを揺らした瞬間、ゴール前の人数は3対7で、47番さえケアしておけば決まらない状況でした。かつてジョゼ・モウリーニョが長身のマティッチを重用していたのは、こういう場面で最終ラインに入ってCBをサポートしてほしかったからです。
守備の受け渡しやポジショニングは、日頃のトレーニングセッションと現場のコーチングで改善できるはずです。レヴァークーゼンで3-4-3を採用していたシャビ・アロンソは、レアル・マドリードでは4バックをチョイスしています。システムを変えろとはいいませんが、ここで指揮を執り続けるなら、チームの課題解決や選手の強みの活用を本気で考えてもらえればと思います。
「テレグラフ」のダニエル・ゼキリ記者は、「プレミアリーグの歴史において、3バックとWBを基本システムとして優勝を果たしたチームは2チームしかない」と指摘しています。1994-95シーズンのブラックバーンと、アントニオ・コンテを招聘した2016-17シーズンのチェルシー。4バックになじんだリーグでは、導入にコストとパワーがかかる布陣であるのは間違いありません。
それでも、上位に進出できるチームは創れるでしょう。「テレグラフ」のアモリムキャンペーンのなかで、複数の記事が「アモリム就任以降、プレミアリーグの通算31ポイントは17位で、降格したクラブ以外では最下位」「8勝のうち3勝は、昨季の降格クラブと今季の昇格クラブ」という悲しい事実を伝えています。
的確なラストパスを出せない攻撃と、少人数のアタックに対応できていない守備を見ていると、ミッションやシステムの理解、自信とモチベーション、コミュニケーションと連携など、個々の問題が大きいのではないかと思われます。指揮官は、「3-4-2-1は変えない。変えるのは自分がそうしたいと思ったとき」などと息巻いている余裕はないはずです。
ダービー惨敗の後、「ユナイテッドがシステム変更を望むなら、私を解任せざるを得ない」とコメントした指揮官は、「ベンフィカの会長選挙で勝ったらアモリムを招聘したい」と公言しているジョアン・ノローニャ・ロペス氏がエティハドのスタンドにいたことを知っているのでしょう。彼には行き先がありそうですが、クラブはウインガーを一括処理してしまっています。
今すぐとはいいません。チェルシー、ブレントフォード、サンダーランドと続くインターナショナルブレイクまでの3戦で、攻守ともに改善の兆しがなければ、「コロコロ変わる」という誹りを甘んじて受けても、英断が必要なのではないでしょうか。戦力は、既に揃っています。少なくとも、ボトム10のチームに悠々と勝てる程度には。
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