2025.10.25 アーセナルの話題
今や世界一の守備陣?アーセナルの堅守構築のプロセスを物語る6つのキーワード!
「セリエAのクラブのほうが上」という主張に対しては、数字を使って反論しましょう。2023-24シーズンの開幕から、今に至るまでの欧州5大リーグの失点を見ると、アーセナルの1試合あたり0.79はユーヴェ、インテル、ナポリをしのぐ1位です。対戦相手のxG(ゴール期待値)は0.81で、こちらもイタリア勢とマドリード勢に勝っています。
アルテタ監督とスタッフたちは、どうやって最強の守備陣を構築したのか。キーワードを挙げるなら、「最強CBコンビ」「SBもCB」「フィジカル」「意識高い系」「連動性」「投資」といったところでしょう。最初に挙げるべきはサリバとガブリエウ。「テレグラフ」のサム・ディーン記者によると、彼らは今のプレミアリーグで最も長く一緒にプレイしているコンビだそうです。
公式戦トータルで124試合、プレミアリーグは93試合。2021-22シーズン以降で彼らの次に多いのは、クリスタル・パレスのヨアキム・アンデルセンとマーク・グエイですが、78試合でコンビを解消しています。ファン・ダイクとコナテは75試合。ハードマーク、クロスへの対応、プレーエリアの広さ、パスワークがすべてハイレベルのコンビは、常にお互いの動きを把握しています。
フルバックにCBをこなせる選手を揃えたのも、アルテタ流の最終ライン構築術のひとつです。就任当初は予算がなく、パブロ・マリやセドリク・ソアレスで我慢していました。スイッチが入ったのは2021年で、現在につながる最初の補強は冨安健洋とベン・ホワイト。それでもしばらくは、ジンチェンコをOKとしていたのですが、クレイジーな2人の加入で世界が変わりました。
ティンバーとカラフィオーリは、カイル・ウォーカーとジョアン・カンセロを上回る変態コンビです。ベン・ホワイトが時間をかけて攻撃力を高め、的確なオーバーラップでチャンスを創れるようになったのに、ティンバーは短期間でギアをトップに入れてしまいました。サカやウーデゴーアがいないかのようにボックスに突入する姿は、前十字靭帯をやった選手とは思えません。
こういう選手は守備が弱点だったりしますが、今季のティンバーはタックル27回がリーグ4位。ピンチになるとCBに変身できるSBは、ウーデゴーアより代えが効かない存在といっても大げさではないでしょう。カラフィオーリは、変態度ではティンバーの上をいっています。フツーの偽SBかと思いきや、ウーデゴーアの持ち場にも出没し、いつの間にかシュートレンジでパスを待っていたりします。
シュート10本はギョケレスに次ぐチーム2位で、プレミアリーグのDFではTOP。カウンターから最前線でハーフボレーを決めて、オフサイドを取られるSBを見る貴重な機会に遭遇したとき、ひたすらテンションが上がりました。アーセナルが堅守とセットピースを看板にし始めてから、「見ててもつまらない」などという声が増えているようですが、「1度でいい。90分間、カラフィオーリだけを見てくれ。おもしろいから」といいたくなります。
すみません。興奮しすぎました。最強のCBコンビとクレイジーなSBコンビを生み出したのは、クレイジーな監督です。ストライカー獲得にあれほど時間がかかったのに、最終ラインはベン・ホワイト、ティンバー、サリバ、ガブリエウ、カラフィオーリ、ルイス=スケリー、インカピエ、モスケラという錚々たるメンバーを揃えており、投資総額は2億3500万ポンドを超えています。
生え抜きのルイス=スケリーは、いずれは左のインサイドMFとしてプレイさせてあげたいタイプです。対してトランスファーマーケットで調達した7人は「SBもCBもこなす」「フィジカルが強い」「パスワークに長けている」「ハイクロスで負けない」「戦術理解力が高い」「文句をいわない」といった共通項があります。指揮官とSDの連携も、堅守を築けた理由のひとつです。
アルテタ戦術における守備の強さを語り尽くすなら、前線と中盤にも言及する必要があります。「ストライカーとウインガーに、守備が嫌い・苦手な選手がいない」のも、重要なポイントでしょう。マルティネッリは鬼のように上下動を繰り返し、チェイシングをさぼらないギョケレスは、敵陣ボックス内でのボールタッチ53回がリーグ3位と本業でも汗をかきまくっています。
先週のフラム戦でのブカヨ・サカは、チャンスクリエイト6回とドリブル成功6回を記録する一方で、デュエル14勝7敗という数字を残しており、ボール奪取が9回もありました。デクラン・ライスとサカを筆頭に「学級委員長タイプの意識高い系を集め、攻守ともに連携を追求する」アプローチが成果につながっているといえるでしょう。
「できる限り、自陣のゴールからボールを遠ざける」「カウンターを喰らわないように、トランジションの際のプレスとリトリートの役割を明確にする」「ディフェンシブサードではファールをしない」といったことを徹底した結果が、自陣ボックス内でのボールタッチが最少という現状に反映されています。最後にもうひとり、守備への貢献度が高い選手を挙げましょう。
マルティン・ズビメンディが加わってから、不安定なビルドアップによるロストや、バイタルエリアでスペースを空けてしまうシーンが減りました。昨シーズンの被シュート数は1試合あたり9.5本で、今シーズンは8.1本。巧みにポジションを変えてパスコースを創る動きが、エゼやデクラン・ライスに余裕をもたらし、パスの精度とクオリティを高めています。
明日のクリスタル・パレス戦は、ガブリエウが欠場する可能性があるようですが、代役は誰になるのでしょうか。イーグルスは、今季プレミアリーグで最多のビッグチャンス33回を記録しながら、決定力不足で12ゴールに留まっているチームです。カウンターとセットピースをケアすれば、10度目のクリーンシートで終われそうですが…。カラフィオーリの動きと、堅守を崩そうとするアウェイチームの戦術に注目したいと思います。
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