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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

プロジェクト開始から7年。アーセナルを優勝に導いた裏方のスペシャリストたちに拍手を!

「アスレティック」で10年以上、アーセナルを取材し続けているジェームズ・マクニコラス記者によると、ミケル・アルテタと精鋭たちが勝ち取った栄冠は、7年に及ぶ長期的なプロジェクトによって実現したそうです。その源流から現在までの足跡と、関わったスペシャリストたちの仕事に触れると、確固たる信念と忍耐がなければなしえなかったプランだったことがわかります。

最初の登場人物はエドゥ・ガスパール。テクニカルディレクターに就任したのは、2019年の夏でした。彼とスタッフが抜本的な改革に踏み切った理由を知るためには、当時のプレミアリーグの状況を押さえておく必要があります。2018-19シーズンは、マンチェスター・シティがリヴァプールを1ポイント差で抑えて優勝しており、ペップとクロップが突出していた2強の時代でした。

アーセナルは、リヴァプールと27ポイント差の5位。フットボールディレクターの存在を拒否したアーセン・ヴェンゲルのチームマネジメントが限界を露呈し、後任のウナイ・エメリは現場のグリップに苦しんでいました。カオスのなかで、経営ボードとエドゥが最初に着手したのは、スカウティング部門の解体とフットボール・インテリジェンス部門の創設だったそうです。

新たな組織は、ユルゲン・クロップ監督が退任するタイミングや、モー・サラー、ファン・ダイク、デブライネが衰える時期をシミュレーションし、「2強が過渡期を迎える頃に、アーセナルがピークに達するプラン」を打ち出しました。2019年12月に加わったミケル・アルテタは、当初からプロジェクトに欠かせない人材と見做されていたようです。

リヴァプールがついに頂点に立った2019-20シーズンは、FAカップを制したものの、プレミアリーグは2位のマン・シティに25ポイント差の8位という惨状でした。2020年の夏、クラブの改革を主導したティム・ルイスは、自らのコネクションによって選手を獲得していたラウル・サンレヒを解任。フットボール・インテリジェンス部門による長期的な強化がスタートしました。

ジェイソン・アイト、ベン・ナッパー、マーク・カーティスは、組織のスリム化を推進するとともに、エドゥやリチャード・ガーリック、アルテタと連携してスカッドの刷新を行いました。2019年の夏に入団したマルティネッリ、サリバと、レギュラーに定着したサカは、「23歳以下で移籍金は3500万ポンド未満」というその後の方針に影響を与えたのではないかと思われます。

ガブリエウ・マガリャンイスが加わった2020-21シーズンには、ムヒタリアン、エミ・マルティネス、ソクラティス、エジル、ムスタフィが続々と退団。1月にローンで引き入れたマルティン・ウーデゴーアは、7ヵ月後に3000万ポンドで完全移籍にスイッチしています。2021年の夏に獲得したベン・ホワイト、冨安健洋、ラムズデールは、新たなコンセプトの下で選ばれた成長株です。

この夏の最大の補強は、ピッチの上ではなかったのかもしれません。セットピースコーチとして招聘したニコラス・ジョバーは、ブレントフォードやアストン・ヴィラのCKを研究し、4年がかりで独自の戦術に昇華させました。2025-26シーズンのアーセナルは、プレミアリーグのセットピースで22ゴール。「影の得点王」は、タッチラインの外で戦況を見守っています。

「アスレティック」の記者によると、近年のアーセナルはCKで優位に立つために、ハワード・ウェブやPGMOLにヒアリングを重ね、ゴール前で許される行為を定義していたそうです。2022-23シーズンにリーグ優勝の1歩手前まで辿り着いたことで、自分たちの方向性は間違っていないと確信したクラブは、外部からさまざまな情報とノウハウを取り入れるようになっていました。

スポーツ心理学を学んだアルテタ監督が呼び寄せたスタッフは、人間だけではありません。2023年5月の新戦力は、チョコレートカラーのラブラドール・レトリバーで、選手たちをリラックスさせるのが最重要タスクでした。「Win」という名前(ツッコミをどうぞ)は、勝つために何でもやろうとする指揮官の発案で、「われわれにふさわしい犬を慎重に選んだ」といっています。

2023-24シーズンは、トロフィーを得るために補強のコンセプトをステップアップさせたシーズンです。カイ・ハヴェルツ、ユリエン・ティンバー、デクラン・ライス、ダヴィド・ラヤ。特定のポジションにビッグマネーを投じたのは、ユルゲン・クロップのファン・ダイク&アリソンと同様に「チームは完成に近づいている」というサインでしょう。

2024年11月のエドゥの退任は衝撃的なニュースでしたが、アンドレア・ベルタという素晴らしいパートナーがさらなる強化を実現してくれました。彼の最初の仕事は、最強のストライカーが必要と熱くなっていた指揮官を説得して、高額の移籍金が必要なアレクサンデル・イサクとベンヤミン・シェシュコを諦めさせることだったといいます。

ヴィクトル・ギョケレスは5480万ポンド。新たなスポーツディレクターの提言がなければ、モスケラとインカピエは加わっておらず、年明け早々に失速していたかもしれません。4冠をめざしたチームのなかで、アシスタントコーチに就任したガブリエル・エインツェは、プレッシャーに苛まれた指揮官の相談相手という重要な役割を果たしました。

厳しいトレーニングを続けたい現場と、選手のケアを担うメディカルスタッフの軋轢を回避するために動いたのは、スペイン人理学療法士のホアキン・アセド。さらにもうひとり、カラバオカップ決勝、サウサンプトンとのFAカップ、ボーンマス戦を立て続けに落としたことで、心身ともに疲労のピークに達していたチームを変えようと動いた男も、称えるべきでしょう。

「まだまだ成し遂げられることはある。でも、そのために身体的な余裕とリカバリーのための時間が必要だと思う」。エベレチ・エゼの提案を受けたアルテタ監督は、優勝が決まる前の週に3日間の休日を与え、コルニーでのバーベキューで選手たちをリラックスさせたそうです。アーセナルを愛し続けた10番も、勝負どころで達成した4戦連続クリーンシートの立役者のひとりです。

裏方として働いたスペシャリストたちがいなければ、ペップの上に立つという偉業は成し得なかったでしょう。最後に、ここに名前を残しておきたい重要な人物に触れて、この稿を締めることとしましょう。入団から15年。アカデミーからタレントを輩出し続けたペア・メルテザッカーも、クラブの歴史に名を残すべき功労者です。彼がいるうちに勝ててよかったと、心から思います。


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