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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

決めるのはヴィニシウス!稀代のドリブラー獲得で巨額の投資を決断したアーセナルの野望。

ヴィニシウス・ジュニオールの移籍を巡るニュースを追いかけていると、アーセナルに対する疑問が積み上がってきます。契約が残り1年の選手に1億ポンドを超えるビッグマネーを投じるのか。レアル・マドリードが上限とした年俸2000万ユーロ(約1700万ポンド)に首を振る選手を引き入れるのか。いずれも、これまでのアーセナルの常識にはない金額です。

「プレミアリーグには、クリスティアーノ・ロナウドやリオネル・メッシのような世界一と称えられるビッグネームは来ない」。いつの間にか、これが当たり前になっていました。スペインやパリの騒動は対岸の火事。突出したタレントよりスカッドの厚みを重視するイングランドは、ブレイク寸前のヤングスターか、ビッグクラブではみ出した選手を獲るのが通例です。

2025-26シーズンのプレミアリーグ王者は、この夏のトランスファーマーケットで左サイドを強化すると伝えられていました。当初の最重要ターゲットは、アストン・ヴィラのモーガン・ロジャース。プレミアリーグで実績があり、イングランド代表でサカ、エゼ、デクラン・ライスらとともにプレイしている23歳のアタッカーは、堅実な人選に見えました。

ヴィラの逸材をチェルシーにさらわれた後、バルコラの名前が挙がったときも違和感はありませんでした。そんななかで、突如現れたのがヴィニシウス・ジュニオール。本気で獲得をめざしているという記事を目にしたときは、よくあるゴシップだと思いました。レアル・マドリードとの契約延長交渉が難航しているという話から、記者が仕立てた作文としか思えなかったのです。

フラメンゴにいたドリブラーがエル・ブランコの一員となったのは2018年で、移籍金は4000万ポンドでした。 リヴァプールとのCLのファイナルで、決勝ゴールを叩き込んだのは2022年5月。2027年までの契約の延長交渉は、スムーズに決着しました。その後の活躍でサラリーは順調に増え、2024年のビッグイヤー獲得とFIFA最優秀選手でボーナスが支払われています。

マドリードの騒動を取材した「アスレティック」のマリオ・コルテガナ記者、ジェームズ・マクニコラス記者、デヴィッド・オーンスタイン記者によると、ヴィニシウスの現在の年望は1800万ユーロ(約1540万ポンド)。これは税引き後の数字で、アーセナルの最高額と報じられたブカヨ・サカをぶっちぎっています

レアル・マドリードが提示した2000万ユーロに対して、ウインガーの要求額は3000万ユーロ。これだけ聞くと、妥結するのは不可能に思えますが、契約更新のインセンティブやスタッツに応じたボーナスが含まれているそうです。2025年1月から始まった延長交渉は、「これ以上は払わない」というクラブの通告によって、ヴィニシウスのファイナルアンサー待ちとなっています。

レアル・マドリードの言い分は、「選手のサラリー体系を壊すリスクは取らない」。ヴィニシウスと代理人は、「キリアン・ムバッペと同等の待遇を求めている」と伝えられています。これらの経緯のなかで生じた最大の疑問は、「アーセナルは支払うつもりなのか?」。チャンピオンズリーグを15回制覇している名門でも腰を引く水準は、ノースロンドンにとっては別世界です。

「アスレティック」の記者たちは、「アーセナルは数ヵ月前から準備を進めてきた」といっています。これが事実なら、モーガン・ロジャースのハイジャックをあっさり許したのも納得できます。アンドレア・ベルタSDの口説き文句は、「アルテタが推進する着実なプロジェクトのスターになれる」。ノースロンドンには、ムバッペがいないといいたかったのでしょう。

「アスレテイック」に加えて「テレグラフ」のサム・ディーン記者も、「アーセナルは、ヴィニシウスの希望を満たすサラリーを用意できると考えている」といっています。契約金を用意し、肖像権料を全額提供にするのでしょうか。一連の報道を見て、やっとわかりました。アーセナルの目論見は左サイドの補強ではなく、メッシやCR7を手に入れようとしているのだ、と

「アーセナルのオーナーは、今回のディールを承認した。莫大な支出だが、コマーシャル収入の大幅な増加で相殺されることを期待している。ヴィニシウス・ジュニオールはマーケティングにおける強力な武器で、アーセナルのブランド力が新たな高みへと引き上げられると見做されている。彼はクラブの顔となり、ひいてはプレミアリーグの顔にもなりえると考えられているのだ」(アスレティック)

ヴィニシウスが残りたいといえば、プレミアリーグらしからぬ真夏のファンタジーは、そこで終わりです。自由奔放なイメージがあるブラジル代表は、ポジティブなエネルギーに満ち溢れたロッカールームや守備を要求するアルテタ戦術にフィットするのでしょうか。神にも猛毒にもなりえる稀代のドリブラーに対する期待と不安は、白黒が決してから語ることとしましょう。


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