2026.09.27 マンチェスター・シティの話題
マン・シティの未来は、タイトルは…厳罰とすればダメージが広がるプレミアリーグのジレンマ。
今回の判決を知って、「So……Let’s talk.How many Premier League titles have I won then? 」とつぶやいたダヴィド・デ・ヘアは、リーグ制覇の記念メダルが2つ届いても苦笑するはずです。「マン・シティの処分次第で優勝が転がり込んでくる。そうなったら、ボーナスとメダルをもらわないとね」と語っていたジョゼ・モウリーニョも、気が利いたひとことを残すのみでしょう。
2024年にコメディアンのジョン・ビショップと対談し、繰り上げ優勝について聞かれたユルゲン・クロップは、「バスパレードを企画してくれるなら、乗っかるよ! どれだけ時間がかかっても構わない」とジョークで返していました。マン・シティと激闘を繰り広げた当事者たちは、昔話として振り返っており、「歴史が書き換えられる」といった感覚しかないようです。
1988年のソウルオリンピックの100メートル走で、9秒79という前人未到の記録を叩き出したベン・ジョンソンは、2日後にドーピングが発覚してゴールドメダルとワールドレコードを剥奪されました。マン・シティの疑惑が早期に発覚していれば、繰り上げでトロフィーを手にしたクラブとサポーターは喜びを分かち合えたのではないでしょうか。
2013-14シーズンの勝者がリヴァプールになっても、無念のスリップで逆転を許すきっかけとなったスティーヴン・ジェラードと、3‐0で勝っていたクリスタル・パレス戦でポイントを落としたブレンダン・ロジャースの悔恨は、既に彼らの胸に刻まれています。12年後に再逆転となっても、そこにある思いはスポーツの歓喜や悲嘆とは別なところに存在するのではないかと思われます。
2005年のツール・ド・フランスで7連覇を達成したランス・アームストロングは、7年後にドーピングを告発され、1998年以降のすべての記録を取り消されました。自転車ロードレースにおける最高峰の大会の優勝者リストは、彼の7年が空白となっています。プレミアリーグはどうするのか。「初めてのトロフィーはクロップだ」といい続けたいレッズサポーターもいるでしょう。
経営の観点でも、プレミアリーグのダメージは甚大です。マン・シティをリーグ2に沈め、ビッグ5となったら、膨張し続けたテレビ放映権料は破裂してしまうかもしれません。彼らのジレンマは、10年に渡って違反を繰り返したクラブの経営陣が、リーグの恩人といえるほど優秀だったことです。久々の優勝をきっかけに急成長を遂げたマン・シティは、ペップの招聘によってマーケットリーダーに上り詰めています。
現地メディアに、選手やサポーターに罪はないという論調があります。だとすれば、移行期間を設けて経営層を追放するのが妥当なペナルティでしょう。首謀者が裁かれ、対象期間中のタイトル剥奪と下部リーグへの降格といった3点セットが揃えば、収益と引き換えに信頼と納得を得られる可能性が高まります。ただし、この厳罰を適切とする尺度はどこにもありません。
マン・シティが厳罰となれば、チェルシーに対する執行猶予付きのペナルティが批判の対象となってしまうかもしれません。74件の違反が確定しているウェストロンドンの言い分は、「自発的に申告」「調査に協力」「当時のオーナーは事実上の追放」といったところでしょうか。マン・シティの処分を発表する際には、ブルーズとの違いについても明確にしたほうがよさそうです。
パンドラの箱を開けたプレミアリーグの現状は、まさに「進むも地獄、退くも地獄」。多くのファンの納得感を大事にすることが、経済的なダメージを最小限にする唯一の道でしょう。そう思う一方で、「アグエロの歓喜もイスタンブールの夜も忘れない」というシティズンに、深くうなずかされます。勝っても負けても、心を動かされてきたプレミアリーグファンのひとりとして。
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