2026.10.24 マンチェスター・ユナイテッドの話題
「われわれに勝つ権利などない」マイケル・キャリックの5分半の情熱的なスピーチに思うこと。
ボーンマス戦を控えたプレスカンファレンスで、記者たちの前に姿を見せたマイケル・キャリック監督は、「I’ll start today(今日は、私から話そう)」というと、5分半を超える情熱的なスピーチでクラブと自身について語り尽くしました。4-1の惨敗だったコモ戦を「最悪の一夜。心に深く傷を残す夜」と振り返った後は、サポーターの気持ちを慮る言葉が続きました。
「労力と時間を費やし、お金を払って応援に来てくれたのに、試合後にわれわれと同じような思いを抱いているのを見るのは、とてもつらかった」。自らが果たす役割と責任について、「クラブ、サポーター、アイデンティティを体現し、誇りに思えるチームをピッチに送り出すこと」と胸を張っていえるのは、マンチェスター・ユナイテッドを本気で愛しているからでしょう。
オールド・トラフォードで12年に渡ってプレイし続けたから、アシスタントコーチや監督を何度も引き受けたから、クラブこそが重要といっているのではありません。ルーベン・アモリムの後を継ぐまでは、メインスタンドのシーズンチケットホルダーだったのです。自らが熱狂的なサポーターであり、その思いを最も理解している監督といっても、過言ではないでしょう。
「サポーターのみなさんは、クラブにとって何よりも大切な存在だ。今年の初めに感じていた気持ちを再び抱いてもらうこと。あの頃のチームに漂っていた雰囲気、絆、真の活気と熱意、楽しさ、情熱を取り戻すこと。何としても、あそこに戻るつもりだ。実現できると心から信じているけど、今までそれを実践できていなかったという事実を認識するのも重要だと思っている」
プレミアリーグ7節を終えて、1勝4分2敗で13位。一時は最下位だったスパーズが背後に迫っています。チェンピオンズリーグはアトレティコ・マドリードとコモに連敗し、ノックアウトラウンド進出が危ぶまれる20位。公式戦で7試合連続勝利なしは、ルイス・ファン・ハールが指揮を執っていた2015年以来、11年ぶりとなる苦境です。
厳しい状況に追い込まれたチームに必要なスピリッツについて、「謙虚な姿勢、勤勉さ。懸命に働くこと、自分たちの価値観に恥じない生き方を誇りに思うこと」と表現した指揮官は、「逆境からの巻き返し、逆転劇、終盤のゴール、持続的な成功…このフットボールクラブには、とても、とても根深い不屈の精神が息づいている」と続けています。
「幸運にも、私は何人かの選手を知っている。なかには一緒にプレイした選手もいる。たとえば、ライアン・ギグス。彼はおそらく、このフットボールクラブでプレイした史上最高の選手のひとりだろう。しかしそれは、ライアン・ギグスのためではない。マンチェスター・ユナイテッドのためだったのだ。そしてウェイン・ルーニーは、クラブの歴代最多ゴールだった」
「彼の最大の特徴は、チームのために自らを捧げながら、マンチェスター・ユナイテッドにとって何が最善かを考えることだ。史上最高の監督であり、最も偉大な存在であるサー・アレックス・ファーガソンも、常にマンチェスター・ユナイテッドが最優先だった。サー・マットやサー・ボビーの時代を振り返ると、不屈の精神とクラブを再建した手腕は信じがたいほどだった」
原点に立ち返り、謙虚な姿勢をもってハードワークすべきと説いた指揮官は、「私がここにいるのは当然ではない。このクラブに『当然』などというものは存在しない。われわれに勝つ権利などない」といっています。チームの戦術に疑義を示したキャプテンと、迷いながらプレイしている選手たちは、ビッグ6との直接対決で5戦全勝だった頃のマインドを思い出せるのでしょうか。
プレミアリーグにおける走行距離は19位、ポゼッションを取ったときのスプリントの本数は最下位。最初に実践すべきは、「常に最適なポジションを取り、集中力をキープすること」でしょう。コモが速攻を仕掛けたとき、CBのハコボ・ラモンのスプリントに対応できず、ヘッダーを決められたマグワイアとバレバは、コンサとデクラン・ライスのタックルの映像を観るべきです。
5分半のスピーチを息を呑んで聞き入っていた記者たちの多くは、「彼は雄弁ではないが、今回の発言は意義深かった」「感動的なモノローグ」とポジティブに評していました。私も、そう思います。クラブを深く愛する監督は、ずっとここにいてほしい。しかし勝てなければ、いずれ決断のときが来るのがこの世界の掟です。ボーンマス戦も、苦しい展開になるでしょう。
「このクラブに特権意識はあってはならない」「クラブにとって最善の策を講じる」といっていた指揮官は、ブルーノ・フェルナンデスに冷静さを取り戻してもらうべく、スタメンから外すことができるでしょうか。「ロッカールームに内紛などない」と明言し、団結の必要性を説いたレジェンドを信じて、成り行きを見守るしかありません。何としても勝ってほしい。しかし…。
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