勝負しなかった2試合。ヴェンゲル監督のアーセナル、最後の欧州決戦を振り返る。
アーセナルが一方的に攻め立てる展開。30分過ぎからいくつか危ないシーンはありましたが、オスピナのビッグセーブで事なきをえて、前半は0-0。ウェルベックやウィルシャーが決めてくれていればとは思いましたが、61分にはラカゼットが美しいヘディングシュートで待望の先制点をゲットします。残り30分で1-0なら上々です。ガメイロをガビ、コレアをサヴィッチと、ラ・リーガでノーゴールの選手を2人継ぎ込んだアトレティコ・マドリードの狙いは、「まずは2点めを阻止、あわよくばカウンターで同点」といったところでしょう。
残り15分、最優先はアウェイゴールを許さないこと。ヴェンゲル監督のベンチには、コラシナツ、イオビ、メートランド=ナイルズがいました。引いてカウンターを狙う相手に対して、プレイが遅い選手、ドリブルで仕掛ける選手は不要です。ピッチに足したいのは、運動量と速いさばき。前者ならウィルシャーをイオビ、後者はウェルベックをコラシナツといった交代策が考えられます。
しかし、指揮官は動きませんでした。82分のウェルベックは、なぜドリブルで仕掛けたのか。前方には3人おり、ひとり抜いたとしてもチャンスにはならず、奪われればフリーの選手にボールが渡る状況です。アーセナルには、「リードしたらマイボール重視」「ガビとサヴィッチを足された後は、ペースダウンしてセーフティなアタック中心」などといった意志の疎通がなかったのでしょう。ヴェンゲル監督は、交代選手にメッセージを託して戦い方を徹底させるという意味でも、新しい選手を投入するべきでした。
ファールをもらいにいくように転倒したウェルベックに笛は吹いてもらえず、怖れていた正確なロングフィードが前線へ。先着したコシールニーは、中へ蹴っておけば安全でしたが、背後にクリアしようとしてグリーズマンにさらわれ、1対1となったオスピナに当たったボールもグリーズマンの前にこぼれます。カバーしようとしたムスタフィはスリップ。3つのターニングポイントは、すべてフランス代表FWに利する結果となりました。この瞬間、アトレティコ・マドリードの勝利が決まったといっても過言ではないでしょう。セカンドレグで指揮官不在の強者を焦らせるためには、1-0というハンディキャップが必要でした。なぜ、相手が2枚カードを使っても動かなかったのか。なぜ、最後までカードを切らなかったのか。ホームでの痛恨のドローは、指揮官の采配ミスによるものだと思います。
0-0なら強者が決勝進出と、最初から不利だったセカンドレグは、それでも先にゴールを奪えれば一気に可能性が高まる一戦でした。ヴェンゲル監督は、なぜ初戦と同じスタメンを選んだのでしょうか。リスキーなウェルベックは、最終盤にラカゼットと並べて高いボールを狙わせるオプションとして、ヘンリク・ムヒタリアンで勝負すべきだったと思います。前年のELで6ゴールをゲットしたアルメニア代表のアタッカーがいれば、エジルがゴールに近い位置でプレイする機会を増やせたのではないでしょうか。
ようやくミキが登場したのは、68分。鋭いシュートや効果的なサイドチェンジを披露したものの、彼がいいポジションに入ったらボールを集めるという意識がチームに浸透しておらず、攻撃を活性化したとはいえませんでした。無謀なドリブルを減らせなかったウェルベックは空回り。攻めのカードを1枚しか切らなかったヴェンゲル監督からは、ゴールを奪うための戦術も勝ちたいという気持ちも伝わってきませんでした。実力で劣るチームが、采配で勝負できなければ、結果は自明です。
昨日のレポートにコメントをくださったみなさん、ありがとうございます。これが、私からのお返事です。「諦めがついた」…そうですね。クラブに失恋したショックを引きずり、ふさぎ込んでいるかのような覇気のない采配でした。「将来のために我慢して使う」などといったことを考えなくてもいい最後の大勝負の場で、エミレーツのマンチェスター・シティ戦のようなエモーショナルな交代ゼロや、アタッカーを足さない最終盤を見せられれば、ため息をついて首を振るしかありません。なりふり構わず勝ちにいくアーセン・ヴェンゲルが見たかった…。試合を終えてから24時間以上が経った今も、悲しい気分が残っています。
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更新ご苦労さまです。
カードは確かコシェルニーの時に使っているはずです。
確かに攻撃の時はただの横パス、サイドでも仕掛けるのは左サイドばかりで、右からのクロスはあまり面白くなかったです。
でも、多分、シティなら横パスばかりの戦いにはならずに、サネなどの仕掛け屋がいる。 アーセナルはパスでアートを彩ることに気持ちを入れすぎたのか、サンチェスがよくやっていたロビングのチョコットパスなどを入れたらちがったのかもなー、と今年一番の興奮をクールダウンさせてくれた試合でした。
魅力的なサッカー、それは本当に素晴らしい、けれど、相手が引いてくるときはいつものつまらないアーセナルに変わってしまう。 僕は、グーナーですが、Liverpoolの強さに憧れを持ってしまいました。 来年はアーセナルが変革のとき。素晴らしいメンバーなので、楽しみたいですね!
ジルオモンレさん>
1枚は負傷対応のチャンバース、もう1枚がミキなので「攻めのカードを1枚」と書きました。パスセンスがあるミキが頭からいれば、エジルやラムジーにいいボールを配給して、相手を慌てさせることができたのではないか?と思いました。意外性のあるパスワークが少なく、終盤はもどかしかったです。オーバメヤンやミキが頭からいる来季は楽しみですが、中盤から後ろは大改革が必要ですね。
更新お疲れ様です。
ヴェンゲル最初で最後のヨーロッパタイトルと、来季のCL出場の望みは散りました。
試合途中でこれは逆転無理だな、いつものパターンだなって思ってしまい、抵抗もさほど無く終了のホイッスルを吹かれてしまいましたよ。現地のサポーターも1点差なのに余り応援に熱がなく、寂しい限りでした。
アトレチコ相手ではできなかったけど、残りのプレミアリーグではアーセナルらしい華麗なゲーム運びで有終の美を飾らせて欲しいです。