セインツ退団&浦和レッズ移籍!不遇だった李忠成…彼がプレミアリーグに出られなかった理由。
2013年1月、私はセインツVSアーセナルのゲームを観るためにセント・メアリーズ・スタジアムを訪れておりますが、スタジアムを見れば、李忠成がセインツでどれほど期待されていたかがわかります。正面の門から見上げると、選手のパネルが掲げられている壁の、ほぼ中央に彼の姿がありました。2012年1月25日にこの地にやってきて、サウサンプトンがチャンピオンシップでプレミアリーグ昇格をかけて戦っていたなかで、李忠成はクラブの救世主的な存在として、サポーターの注目を一身に集めていたのです。
当時のメンバーを見ると、FWにはさほど得点力のないデイヴィッド・コノリーと、現在エースストライカーであるリッキー・リー・ランバートがおり、攻撃的なMFとしてララーナ、パンチュンの名前がありますが、めぼしいライバルはそのくらいです。アレックス・オックスレイド=チェンバレンは、李忠成が加入する半年前にアーセナルへ去っており、現在の主軸であるジェイ・ロドリゲスやガストン・ラミレスはまだいません。この顔ぶれなら、「絶対ストライカーじゃないと嫌だ」というよくばり方さえしなければ、充分レギュラーを獲得できたでしょう。事実、李忠成は、加入後3ヵ月で7試合に出場し、1ゴールと数回のアシストを記録し、サポーターの心をつかみ始めていました。2月18日に挙げた移籍後初ゴールは、2011-12シーズンにおけるセインツの最優秀ゴール賞に選出されたぐらいです。
ところが、順風満帆だった李忠成を、悲劇が襲います。2012年3月13日の練習中に見舞われた、中足骨骨折ならびに靭帯損傷という重傷。ルーニー、オーウェン、スコット・パーカー、アシュリー・コールという面々が、3ヵ月以上復帰できずに悶々とした日々を過ごしたやっかいなケガは、希望に満ちあふれていたはずの日本人FWから、残りのシーズンと翌年のための準備期間を奪いました。運が悪いことに、このシーズンでサウサンプトンはプレミアリーグ昇格を果たしたために、オフシーズンに大幅にメンバーを強化。そのスタートラインにベストな状態で並べなかった李忠成は完全に出遅れ、入団後すぐにレギュラーとなった吉田麻也を見ながら、ベンチにも入れずスタンド観戦する日々が続くことになってしまったのです。
残ったのは、サポーターの期待の名残であるスタジアムやメガストアの大パネルと、時折カップ戦で途中出場する、心なしか元気がない李忠成の姿のみ。今季はさらに補強が進み、もはやケガ人が出ない限りは、ベンチに入るチャンスすらほぼありません。
李忠成には、浦和でがんばっていただいて、いま一度日本代表にも復帰してほしいです。…しかし、プレミアリーグで日本人FWが活躍するのは、ほとんど無理でしょうね。当地のCFは、フィジカルが強く、ヘッドが得意かスピードがハンパなくある選手が好まれ、敏捷性やテクニック、コンビネーションで戦う選手は、ルーニーやスアレスクラスじゃないとポジションを獲れません。強豪クラブよりも中堅から下位のほうがこの傾向が強く、ましてやワントップ主流のなかで、椅子がチームにひとつしかないので、日本人が常時ゲームに出るのは至難の業でしょう。もし、プレミアリーグで活躍したいというFWがいて、意見を求められれば「サイドMFができれば、プレミアリーグやブンデスリーガでもゲームに出るチャンスがありますが、どうします?」というお返事になるでしょう。
もちろん、とてつもないフィジカルとスピードを持ったFWが出れば、別です。まあ、出ないでしょうね。先日の高校サッカー選手権を観ても「うまいけど細い子」ばかりでしたから。残念ですが…うーん、残念です。
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