イングランドのプレミアリーグ(ときどきチャンピオンズリーグ)専門ブログ。マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リヴァプールetc.

偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

前で守り、中は上がれ!欧州で点が獲れないプレミアリーグ勢【後編】

ずいぶん長くなりまして、大変恐縮ですが、今回が最終回です。「敵を知って戦えているか?欧州で点が獲れないプレミアリーグ勢【中編】」から続きます。チャンピオンズリーグとヨーロッパリーグの直近4試合から、プレミアリーグ勢の苦戦理由は「時期の問題」「戦術の問題」「ボールの獲り方」「センターMFのクオリティ」ではないかという話をさせていただきました。時期と戦術の話に続き、今回は「ボールの獲り方」「センターMFのクオリティ」です。

ボールを奪うポイントが前であればあるほどよしとするバルセロナ、ハーフライン付近で奪うという意志が明確なバイエルン・ミュンヘン、ドルトムントに比べて、プレミアリーグ勢はボールを獲りにいくポイントが不明確なチームが多いと思います。前線でチェイシングはするのですが、複数で囲い込んで絶対カットするという狙いを持った連携がありません。前で奪うというのは、意志がないとできないことで、戦略が不明確だと多くのボールを最終ラインでカットする形となります。手数の少ない直線的な攻撃を志向するチームならともかく、そうじゃないチームは、中盤センターによっぽど展開力のある選手がいない限りはゴール前にたどり着くのが遅くなります。

アーセナルでいえば、アルテタはボールを散らすことはできるものの、一発でサイドや裏に通すパスは出しません。ウィルシャーは調子の波があり、悪いときは無謀なドリブルや独りよがりなパスでピンチを招いてしまいます。前線に上がるタイミングがよく、プレイもシンプルで周囲の選手を使えるのは、成長著しいラムジーでしょう。彼がいなくなると「後ろで獲ったボールを時間をかけて前に持っていく」という攻撃になり、ラインを整えた相手を崩すのは容易ではなくなります。プレミアリーグの中小クラブ相手であれば、それでも押し切れるのですが、欧州で勝つとなると、ボールを獲るポイントを前に置くか、さもなくばセンターMFに今以上に展開力・攻撃力が高い選手を入れて、ラムジーと並べるぐらいでないと難しいでしょう。

マンチェスター・シティのヤヤ・トゥレとフェルナンジーニョは、欧州でも屈指のセンターMFコンビ。ここは問題ないのですが、それでも中盤でのディフェンスは彼らの個人力担保です。このチームの問題は、後ろで獲るとなったときに、最終ラインの守備力が脆弱なこと。コンパニはいいDFですが、ひと頃より細かいミスが目立ち、ナスタシッチがパッとしない今季はコンパニがいない左半分が弱点です。もう一段、中盤の組織力でボールが奪えれば、バイエルン・ミュンヘンが昨季実現したように、メッシやイニエスタを擁するバルサ相手でも中盤を機能停止に追い込める可能性が上がると思われます。

マンチェスター・ユナイテッドとリヴァプールは、やはり中盤センターが薄くて深いですね。とはいえリヴァプールは、アーセナル戦で見せたようなプレスが常時できるようになれば、相当強くなるでしょう。FWが強力で、一発裏に出せば個人で決められるワールドクラスが揃っているだけに、ロジャース監督の守備戦術の完成と、真ん中の層の薄さ解消が待たれます。スアレスが残り、中盤センターとトップ下を中心に3~4人補強できれば、来期のチャンピオンズリーグでリヴァプールはダークホースになれるかもしれません。もちろん、プレミアリーグ4位確保が前提ですが。

そしてマンチェスター・ユナイテッドは、まさしく狙っていたチアゴ・アルカンタラやセスクタイプのセンターMF獲得が必須。フェライニやクレヴァリーに大きな期待をしないほうがいいでしょう。そのうえで、深い割にはボール奪取力が低い中盤の戦術を見直す必要があります。「プレミアリーグで指揮を執りたい」とアピールしているルイス・ファン・ハールさんなど、いいと思うんですけどね。ファーガソン監督が引退した今、過去のスタイルの継承を考えるのではなく、ひとつの時代の終わりと捉えて、ルーニーを中心に「欧州で勝てる新しいマンチェスター・ユナイテッドの構築」に取り組んでいただければと願っています。

ここに書いたのは、あくまでも「バルセロナやバイエルン・ミュンヘンに勝つために、必要だと思われること」ですので、プレミアリーグで4位以内に入って、チャンピオンズリーグはほどほどでよい、というなら、マンチェスター・ユナイテッド以外は今の延長でチーム作りしても悪くはないと思います。決して「アーセナルの中盤はダメだ」といっているわけではないことだけ、ご認識ください。しかし、アルテタは、以前はもっと上がってミドルも打ってたんですけどね。パスカット力はそれなりに高くて、全体の舵取りもできる期待の選手だっただけに、最近の彼にはちょっとモヤモヤします

マンチェスター・ユナイテッドはもちろんですが、アーセナルやリヴァプールがチャンピオンズリーグを勝ってくれたりすると、古くからのイングランドサッカーファンとしては盛り上がるんですけどね。アーセナルは次戦、リヴァプールは来季、素晴らしいサッカーを欧州の舞台で見せてほしいです。え?なぜチェルシーに触れないのか?…決まってるじゃないですか。モウリーニョ軍団は、どうのこうのいわなくても、近いうちに欧州を勝ちますよ。めざすサッカーの方向も、やろうとしていることのクオリティも問題ないでしょう。あとは成長と熟成のみ。注目すべきは、「1年めでどこまでいけるのか」だけだと思います。(シャビ・エルナンデス:写真著作者/Дмитрий Неймырок チアゴ・アルカンタラ:写真著作者/henrikalexandersen)

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“前で守り、中は上がれ!欧州で点が獲れないプレミアリーグ勢【後編】” への8件のフィードバック

  1. ウィルシェア より:

    更新お疲れさまです

    今更ながらふと思ったのですがmakotoさんのサッカー愛はすごいですね笑
    中身の濃い、話題性に富む記事を毎日書いてコメントにまで全て対応するというのはよっぽど好きじゃないと出来ないと思います。少なくとも自分は笑
    いままで見たなかでダントツのクオリティのブログですよほんとに。
    もう毎日の習慣と楽しみになってしまっているのでこれからも大変だとは思いますが更新お願いします!

    みなさん!これだけ頑張ってもらっているのですから僕たちはバナーを押すだけです!感謝の印としてランキング1位にしましょう!

  2. チェルシー より:

    更新お疲れさまです

    僕も主さんの意見に同感です
    特に戦術はプレミア勢はCLで上位に入るチームには明らかに劣ってますよね

    CMに関してはチェルシーの記事のコメントでたまに文句を言ってましたがシティ以外全体的に弱いですよね
    チェルシーの話だとマティッチが来てマシになりましたが、ミケルらを差し置いてルイスを使ってる辺りがまだモウリーニョも現状の三列目に満足してないということでしょう

    毎度毎度おもしろい記事を提供してくださってありがとうございますm(__)m

    ウィルシェアさんと同じように感謝の気持ちとしてバナーを押してますのでこれからも良い記事を期待してます(^^)

  3. あああ より:

    更新お疲れ様です。
    プレミアリーグは競争力があるとは言いますが、心配なのはその競争が低いレベルなのではないか、ということです。
    杞憂であればいいのですが、ここ数年の成績と優勝候補達のホームでの完敗を見ると・・・

  4. makoto より:

    ウィルシェアさん チェルシーさん>
    ありがとうございます!書くのはいいのですが、調べるのはかなーり孤独な作業でして…。これからも、天狗にならずにおもしろがっていただける記事を作っていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

    モウリーニョさんは、シャビ・アロンソのようなMFがほしいんじゃないでしょうか。ランパードよりパスセンスがあり、ラミレスよりダイナミズムがあり、ミケル同様に守れて、ダヴィド・ルイスのようなバランスの崩し方はしないオールラウンダー。

  5. makoto より:

    あああさん>
    今現在は、レベルが落ちているかもしれません。イタリア勢がおもしろくなってきているので、差を詰められないようにしないといけませんね。

  6. リバサポ より:

    ビエルサのビルバオですか
    僕の好きなチームでした(笑)

    あの時のビルバオは、全盛期バルサ相手に互角の勝負をしましたしね

    マンチェスターユナイテッドは、あの時のビルバオやCLバルセロナなど
    異質なフットボールをするチーム相手に脆さを露呈する節がありますよね

    逆に言えば、ファーガソンの作り上げたものは現代サッカーの最も洗練されたチーム、という言い方もできます
    現代サッカーのスタンダードを極めたチームだからこそ、アブノーマルなチームに弱い

    —–
    モウリーニョはもちろん欧州でも強いチームを作るでしょうが、もともとそのポジションを狙うためにユナイテッドが監督交代したのでは、ないでしょうか?プレミアでのリーダーであるユナイテッドが今の順位にいることで、さらにリーグ内の混戦を招いたのでは、ないかと思います。しかし、このリーグは、変革期であり、ユナイテッドが持ち直してくれば、未来が明るいリーグになると思いますよ。
    なんたって、ロジャース、マルティーノ、ポチェッティーノという若い戦術家達もいますし、彼らの中堅チームが、リーグのレベルを引き上げてくれると信じています。

  7. makoto より:

    リバサポさん>
    いやー。おっしゃっていることがごもっともすぎて、あらためて語る言葉がありません。大賛成です。

  8. makoto より:

    スパーズ推しさん>
    ファーガソンスタイルは、FWを2人並べるスタイルのひとつの行きつくところではありましたね。あの「FW2人+逆サイド+センターMF」の4人なだれ込み戦略があったからこそ、ファーガソン率いるマンチェスター・ユナイテッドのサイドからの崩しは「ただの放り込み」とはいわれなかったのだと思います。

    モイーズが「クロス偏重」「放り込み」と揶揄されるのは、外からのクロス自体が悪いのではなくて、「単調で読まれる」「読まれていてもオプションがないので、ただ放り込む」「中が薄くても、態勢的に不利でも入れるのでチャンスにならない」からだと思います。

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